96話 潜在覚醒
「添島!まだ気円蓋は使うなよ!せめて使うのは俺達がそのボスゴリラに手を掛けれるようになってからだ」
一応俺は添島に釘を刺しておく。今使われるとマジで添島を回収出来なくなるし先程思った通りキングオーラゴリラは倒れないだろう。
「分かってる。俺も今使おうとは思っちゃいない、、、だが、少し押されてる。割と早めに来て欲しい」
添島は割と余裕でキングオーラゴリラと戦っていると思っていた。だがキングオーラゴリラの遠隔衝撃波の関係で添島は大きめに回避行動を取らなければならない。しかも俺達の方にキングオーラゴリラの注意が行かない様にヘイトも稼ぐ必要がある。、、、は?亜蓮何やってんだ。ヘイトはお前が稼げよ。とは多少思ったもののよく考えるとそれは難しかった。亜蓮のシャドウウォーリアは相手の注意を常に引きつける程強力なものでは無い。いや、効果は強力なんだが、少なくとも長時間引きつけるような物では無いよな。効果時間で言えば俺のサインエンチャントの方が効果は高そうだ、、、いや、俺の方が駄目か。結局分身を破壊されて終わりだ。破壊されるまでの時間を考えると効果範囲やマナ使用量、、、使い勝手などを考えるとやっぱり亜蓮のシャドウウォーリアの方が断然強い。さて、どうした事か、、、俺が救援に向かって出来る事は火力援護と相手のヘイト分散、、、後は足止めか?正直キングオーラゴリラは動きがグリフォンみたいな訳では無いので火力援護が一番適切かと思われる。
「グォォオォ!」
さてと最後の一体さっさと片付けてしまいますか、、、
「内部圧縮属性付与 火」
俺は近づいて来た残りのオーラゴリラを爆炎で吹き飛ばして撃破する。掃討完了!添島の所に向かうか。だがそこで俺は少し不味い事に気が付いた。やべぇ、俺普通にアクアの軽減能力あるものとしてインプレスエンチャント使ってたわ、、、だが今回アクアは裏で処理に回っている。つまり、、、マナが足りない、、、!?ごめん添島、、、俺ちょっと援護きついわ。これ以上インプレスエンチャント撃つと俺が逆に足手まといになりそうだわ。
「すまん添島、、、マナ切らしちまって、、、ちょっと援護出来そうにないわ」
俺はそう言い猿の駆除に向かう。いや、しょうがないから。添島!デカイのは任せた。俺達全員はチビ猿の駆除に全力を尽くすからボスゴリラとの一騎打ちを楽しんでくれたまえ。半分逃げである。正直、猿の相手は亜蓮と重光で十分なんだけどな。
(僕の軽減能力使う?)
アクアが隠れていた猿部隊の処理を終え戻って来る。そして俺の考えを感じ取ったのか頭の中で声を掛けて来るが、俺はノーの返答をする。俺に軽減能力を使ったところで撃てるインプレスエンチャントは後一、二発が限界だ。それならばまだ他の使い方が、、、ん?待てよ添島に軽減能力を、、、いや駄目だ。この前のグリフォン戦を思い出すんだ。あの時俺達はアクアが形成したドームの中で戦っていた。単体にかけるよりは効果は多少下がるとしても軽減能力は働いていたんだ。その状況で添島はオーラドームを使って反動で動けなくなった、、、つまりオーラドームは軽減能力を使っても少しの間動け無くなる程の反動なのだ。だがあの時は既に怪我を負っていたのも影響したのだろうが軽減能力があっても添島に掛けても意味をなさないだろう、、、どうする?ん、そう言えば山西の新しい技をまだ見ていないな、、、特定環境下でしか使えないとか言っていたが、、、あいつの事だ。どうせ補助系の能力なんじゃないか?まぁ、固有スキルは多少違ったようだけど。限界超越、、、如何にも殻を破りそうな能力名だ。添島の殻を破らせてくれたりしないか?
「おい、山西お前の新しい能力って添島に掛けたりして強化出来るのか?」
俺は補助魔法として決めつけて淡々と猿のトドメを刺していく山西に声をかける。ちょっと前までは血を見たら吐いていたのに今じゃこれかよ、、、人って短期間で変わるもんだなぁ、、、
「無理ね。私の新しい技は自分を強化する能力なの。添島君を強化する事は、、、出来るけど倒れるかも」
山西が少しムッとした様子で言った。自分自身を強化か、、、どれくらい強化されるのか分からないけどキングオーラゴリラと戦えるレベルだったら是非使って貰いたいものだ。そして倒れるか、、、うーん。あいにく猿の方は人手は足りてるからここはアクアと俺にシフトを変えれば補えるか、、、
「ちょっと使って見てくれ、、、あのボスゴリラと戦えるのは添島しかいないんだ、、、ここの役割は俺とアクアが引き受ける。それとお前の能力であれと戦えるなら尚更だ」
俺は山西にキングオーラゴリラを指差しながら伝える。
「分かったわ、、、添島君に強化は掛けるわ。とっちにしろそろそろ強化魔法を上乗せしないと効果が切れる頃だったし、、、ただ私の新しい能力ではあれと戦えるかは分からないそして、これだけは約束して、、、私が新しい能力を発動している時は近くに近づかないで、、、謝って攻撃しちゃうかも知れないから。そして、指示は通らなくなると見てて、そして、倒れたら迅速回収して、、、頼むわね」
山西の言っている事はよく分からなかったが何となく危険な事なのは理解した。そして、山西は走り出して俺達から離れて尚且つキングオーラゴリラの攻撃もギリギリ届かない様な場所に立ち詠唱を開始した。
「五重強化 撃速防御!」
山西は強化魔法を添島に唱えて気分悪そうにふらふらとして倒れ、、、無かった。倒れそうになった瞬間何かを口元で呟いたのがわかった。添島の動きが格段に上がりキングオーラゴリラと互角に戦い始める。そして俺は山西の方へ向かおうとして山西の言葉を思い出し留まる。そして山西が顔を上げるがその目は虚でまるで別人の様だった、、、その何とも言えない表情を見た俺は今までと違う何かを感じ取って背筋に冷たい何かが走る。あれは山西であってもその山西が一人じゃない様な、、、そんな恐怖を俺は感じ取るのであった。
山西さん。怖い。