93話 ドラミング
気螺大猩々か、、、今の俺達なら余裕で勝てる、、、だが今回の気螺大猩々は様子が違った。前のボスモンスターの様に俺達を舐める事無く気螺大猩々はこちらをしっかりと捉えて睨んでいる。そして、添島は言った。
「こいつ、、、最初から螺旋衝撃波を使って来やがったな?」
俺はその言葉に驚いた。螺旋衝撃波はこの気螺大猩々の最後の一撃にも含まれる大技だ。その大技を木の上からの奇襲で放って来たのだ。当然それを添島に防がれた訳だから気螺大猩々も警戒しているのだろうが所詮はその程度の威力だったと言う事か、、、?気螺大猩々は地面で俺達の様子を伺っている事から木の上にいる時は奇襲時のみと考えられた。草原でも生活している気螺大猩々の暮らす場所は樹上では無い事は当然とも言える。だが、気螺大猩々は一吠えすると攻撃する事も無く俺達の様子を伺う。それなら結構だ。
「行くか?気貯蔵!」
添島が加速して気螺大猩々はそれに対して拳で抵抗する。いや、別に決してネタ的な意味で拳で抵抗って表現をした訳では無い。二十一歳じゃあるまいし。多分。だが良く良く考えてみると俺達が最初気螺大猩々と相対した時は気もまともに扱えなかった添島だ。その状態で戦えたのだから今の気螺大猩々が敵うはずもない。さっき気螺大猩々は普通の雑魚モンスターと比べたら少し強いかも知れないとは言ったがそれは単体で尚且つ気を纏う能力を含めての強さだ。そして前のエリアの捕食者階級、、、つまりヴァレオンやバクナムルには圧倒的に劣る。戦闘能力はテレインヒッポグリフと良い対かと思う。いや、機動力があるテレインヒッポグリフの方が厄介か?そう考えると今の俺達にとって気螺大猩々はそこまで強い相手では無いのかもしれない。だけど少なくとも捕食される側では無いと思う。
(ドンッ!)
「ヴッ、、、!」
気螺大猩々は添島の攻撃を受けて後ろに退きながら威力を逃す。そしてあの技、、、拳が爆発し添島も一歩下がりながら大剣を横に振り払い爆風を逃す。そう、こいつの真価は範囲攻撃なのだ。複数の小型を相手にした時に非常に相性が良いのだ。単体の強敵を対象としているヒッポグリフなどとはステータスの配分が違う。あの時はバリアで防ぐので精一杯だったのに俺達も成長したな、、、俺達は添島が割と楽しそうにしているので周りから邪魔が入らない様に周囲を確認しながら添島の安全を確保する。そして添島が舞い上がる煙の中口の端をにやりと吊り上げた時だった。
(ドンドンドン!)
大きな太鼓の様な音が遠くから聞こえてくる。
そして、、、
「ウホホッ!」
気螺大猩々の身体の周りにエネルギーが纏われ動きがいきなり速くなったのだ。
「ほう、、、?山西、、、俺に強化魔法を、、、」
流石に添島もいきなり強化された気螺大猩々に厳しくなったのか山西に強化魔法を要求する。だがまだ添島は余裕がある様だ。力はまだ添島が上回っているのだろう。多分今なら威力的に気螺大猩々を俺のインプレスエンチャントでワンパンできそうな気がする、、、いや、少し厳しいか?強化前ならワンパンだろうが強化された気螺大猩々だと微妙なラインだな。
「四重強化 撃速防」
山西は添島に強化魔法をかける。
「ヴォッ!」
その瞬間添島の動きが速くなり気螺大猩々は押し負け上空に吹き飛ばされる。
「ヴォッ!」
添島は追撃へと向かうが気螺大猩々は空中で拳を自分の横に放ち爆発させその反動で添島の攻撃を避けた。あいつあんなトリッキーな動き出来たんだ、、、草原エリアで戦った時はほぼはめ殺しみたいな感じはあったしな、、、だが添島の動きの方が速い。
「自分の実力を知る事が出来て良かったぜ感謝する」
添島は気螺大猩々の前に回り込みトドメの一撃を放とうとした時だった、、、
「グォォオォ!」
「っ!?」
先程太鼓の様な音が聞こえて来た方向から爆音を撒き散らせながら何かが突っ込み添島は吹き飛ばされた。
「大丈夫か!添島!」
「ぐっ、、、大丈夫だ、、、」
俺達は全員戦闘態勢に入り添島は腹を抑えながら身体の土を払いながら立ち上がる、、、そして、添島が睨む視線の先には気螺大猩々よりも一回りは大きく体にゴツゴツとした甲殻や角の様な物を生やした大きなゴリラと複数の気螺大猩々、、、そして大量の猿が俺達を囲んでいたのであった。