91話 固有スキルの勘違い
「ただいま。やっと帰ってこれたぜ、、、」
「お、帰って来たか、、、それで?どうだったんだ?」
添島が転移して来た俺を見て言う。
「見事に新しい技を習得してウッドゴーレム を倒して来たぞ」
俺がそういうと周りの仲間達は驚いた顔をしていた。
「お前、、、ウッドゴーレムを倒せたのか?」
え?なんで皆んな不思議そうな顔をしてるんだよ、、、今回の試練はあのウッドゴーレムを倒せないと失格じゃ無いのか?え?お前達ウッドゴーレムを倒したからここに居るんじゃ、、、
「はぁ、、、気づいていないならそれで良いんだけどね、、、まずは皆んなで新しく習得した技を披露してみない?お互いの技を把握してないと実際戦う時に困るでしょ?」
山西がため息を付きながら言った。多分俺の事だろうが何に気が付いていないのかは分からんが確かに皆んなの技を把握する事は大事だと思う。
「俺は貯めた気を使いたく無いから遠慮しておく。簡単に言うと今までよりも火力とエネルギー消費が大きい威力の大きな攻撃だ」
俺達は添島のその言葉だけで察した。うん、分かった。いつも通り力でねじ伏せたんだな、、、添島らしい。
「私もちょっとここでは使えないし協力した時に使えないからやめとくわ、、、もう少し熟練したら披露するわよ、、、だけど、魔法を並立詠唱、、、では無いのだけれどソレに近い形で運用出来るようにはしたとだけ、、、」
重光は謙遜しながら言うが魔法を並立詠唱に近い事が出来るだけで戦闘の楽さは違うだろう。重光曰く並立詠唱では無いみたいだが魔法知識に乏しい俺にとってはどんなものかは別想像が付かない。
「私も却下ね、、、まず自分の力で発動出来ないし制御も無理。今はマナが切れて限界を超えた時だけしか使えないから」
お、何だその能力、、、気になるわ。山西の能力は謎に包まれていた。
「俺は見せてやっても良いぜ!影武者」
亜蓮はノリノリで紫色のオーラを発して形を作り近くの的に向かってナイフを投擲した。その瞬間俺の注意が何故かそこに集中する。何だ?、、、ごめん、今までと違いがよく分からないわ。
「これはな、対処に選んだ相手の気を引くオーラをナイフに纏わせる事が出来るようになった。つまりノーリスクでデコイを作れる。今は複数の対象を同時に選択出来ないけどな」
亜蓮はドヤ顔をして言うが俺以外には効果がかかっていないので微妙な反応だ。無駄に派手なエフェクト出しやがって、、、ん?待てよ、、、これ俺の新技と、、、
「おい、、、亜蓮、、、この技マナ量的に何発撃てる?」
俺は恐る恐る聞く。
「ん?この技か?まぁ二十発近くは撃てるな」
何か衝撃の事実を聞いた気がする。これ完全に俺の新技の上位互換じゃねえか、、、溜めも殆どノータイム、、、燃費も良い、、、遠距離の場所でも使える、、、何てこった、、、
「で?お前の能力は?」
亜蓮に聞かれて俺は焦る。
「ぶ、分身だ、、、」
正しくは分身では無いのだが俺は少しでも違いを出すためにそう答えた。分身って聞こえは良いからな。
「嘘は良くないなぁ」
「っ!?」
気がつくとエルキンドが横からひょいと顔を出して言った。また気配を消しやがって、、、さっきまで何で居なかったのかは分からないが、、、
「まぁ、こいつの新しい能力は燃費が悪すぎて使い物にならないよ。鍛えればあんな無駄な事をしなくても良くなるけどね、、、」
おいいい!俺と一緒にいた時のあの褒めた言葉はどうしたぁぁあ!仲間達はまぁ安元だし。みたいな顔している。やめろぉぉお!技が伝わってないから!だが事実なので言葉を瞑る。二発撃てるぞ、、、うん使えない。
「さてと、個人の新しい能力も分かった所で君達が勘違いしていた能力の訂正をしていこうか」
いや、俺の新しい能力誰も理解してないから。俺の考えを他所にエルキンドは話を進める。
「先ずはそこの君、、、君の固有スキルは『相乗効果』ではなくて『限界超越』だよ、、、前者の場合はもっと自身にももう一回分バフがかかるし、さらに補助効果も大きく仲間が増えれば増えるほど能力の効果は増すんだ、、、ただ効果が増すとは言っても一定距離以上近付くか新たなマナを消費してバイパスを繋がないといけないんだけどね。そして、レイズ系つまり全てが味方全体バフになる、、、まぁ単価のマナ消費は多少増えるけど。だけど応用性で言ったら後者の方が圧倒的に大きいね」
エルキンドは山西の方を向いて言った。おいおい、前者の方が普通に強くね、、、?まぁ応用性は殆ど無いけどさ、、、前者の場合添島は鬼強化されるし、山西本人もそれなりに戦える様になりそうなんだが、、、
「そして、君、、、君の固有スキル、、、『精確無慈悲』じゃないよ、、、君のは『指向集中』だよ。前者は相手の急所や弱点が見た瞬間理解出来て弱点への攻撃の威力に極大補正がかかり、そこへ吸い込まれる様に攻撃がヒットすると言うものだ。まぁ暗殺者向けスキルだね。現にロークィンドの世界でこのスキルを持った人間と相対した時は本当に死ぬかと思ったよ、、、と言うか俺一人じゃ死んでたな。後者はその名前の通り指向を集中させる事が出来る。まぁ、応用性は高いよ。ナイフが必中するのもナイフの指向性を敵の部位に当ててる形だからね。熟練すれば敵の攻撃の指向性を逃す事も可能かも知れないね」
エルキンドは亜蓮に向かって言った。うん、前者もエゲツないけど今ので確定した。亜蓮は俺達の盾役や引き付け役になりそうだな、、、そしてエルキンドは一通り話を終えるとまぁ後は頑張ってくれと言わんばかりに話し、最後にもう一回ボードゲームをしようと言い出したのであった。余談だがエルキンドそのボードゲームの時だけはエルキンドは異常に強く口調も変化していた。エルキンドの元の口調は荒々しくあくまで俺達への態度は初対面の相手に対する礼儀だったらしく。本人はもう疲れたとか言っていた。そしてボードゲームはエルキンドの全勝で幕を閉じたのであった。
実は適当な性格だと思っていたエルキンドは魔法制御で忙しかっただけでした、、、それでも根は割とテキトーな人です。