87話 タネマシンガン
くそっ、、、!俺の能力ってマジで敵にナイフを必中させる事しか出来ねえのかよ!ああ分かってるそんな都合の良いことは無いと、、、だがな、、、!やってみてぇじゃねえか!異世界だぞ!俺強ぇぇえ!ってしたいじゃねえかよ、、、まぁ俺の攻撃は一撃必殺ぽくて少しかっこいいと思わなくともないし腕の火薬挿入型バックラーも厨二っぽくて好きだ。だけどせめて気分だけでも無双したい、、、また、上の階層に戻ったら無双出来そうか?できるかどうかで言えばイエスだ。だけどそれは俺の理にかなってはいない。スマートじゃない、、、つまり!かっこよくない。俺は表の表情はクールに装いつつ心の中ではにやにやしていた。俺は飛び交う弾幕の中岩の後ろに隠れてはウッドゴーレムに狙撃され、また別の場所に隠れては狙撃される。だが俺はこんな状況でも心の中では笑っていた。そう!逆にこの様な状況であるからこそ楽しめるのだ。こんな状況を突破したらカッコいいだろ?因みにこの前のグリフォン戦のラストナイフを放って倒れたシーンは最高にカッコ良かったと思っている。何故か仲間からの評価はそこまで高くは無いのだ、、、未だにそれは納得がいかない。それはそうと俺はあのウッドゴーレムを撒くことはほぼ不可能だろう。感知範囲がどれ位かは分からないが先ず注意すべきは奴の移動速度だ。あの巨体にも関わらず木々の隙間を素早く駆け抜けながら俺をマシンガンの様に草の種を飛ばしてくる。その速度は俺が多少上回っているものの少し俺がつまづいたりして逃げるのをしくじると直ぐに距離を詰められてしまうだろう。俺はとうとう岩の陰に隠れながら逃げるのを止めて逃げに徹する。最初のジジイのトレーニングが役に立ったか?だが、このままでは俺の体力が先に尽きる。相手はゴーレムだ。スタミナは無尽蔵と言っても過言では無い。そして奴はゴーレムの癖に思った以上に賢くまるでエルキンド本人が操作している様だ。俺の進路を断ち切る様に俺の進路上に木の種を撃ち込み成長させ退路を断ち切ろうとする。そして何かに隠れよう物なら弾を撃つのを止めて回り込んでくるのだ。だが、生憎俺のトップステータス、、、つまり最高のスペックの能力は速度だ。俺もその利点を生かして木々の隙間を走り抜ける。先程ナイフに意識を集中しても意味が無かったのだが悔しいので俺は少しニュアンスを変えて試してみる事にする。先ずはいつも通り対象をウッドゴーレムに定める。先程は対象を定めずにナイフに意識を集中した、、、そして、ナイフにマナを込めながらナイフにも意識を集中させる、、、そして俺は投擲した。その瞬間だった。
「お?」
一瞬ウッドゴーレムがナイフを振り向き弾をナイフに向かって撃ち込み蔦で払いのけてナイフを破壊し、すぐさま俺の方にヘイトを向ける。ん?今一瞬ウッドゴーレムの意識がナイフに向いた気がするんだが、、、いや、ただ単にナイフを撃ち落とす為に反応しただけか?だが、あのウッドゴーレムにあの程度のマナしか込めていないナイフの威力では大したダメージは入らない筈だ。、、、俺のマナ量は平均値と比べたら多いのだろうがそこまで多くは無い。先ず俺達のパーティの全員の初期マナ量は多い方だ。所有マナ量は鍛錬で増えて行く。だけど、初期、、、マナの概念が無い地球から来たばかりの俺達の状態で、、、いや、ジジイのあの鍛錬があってもあの短期間でスキルが使える様になるというのは中々珍しいらしい。少し調べたい事があってジジイの書庫を探っていたらジジイがここに来た頃の日記が落ちていたので開いたら開いたページには魔法もスキルも一切使わず持っていた拳銃と木刀で戦っていた事が分かった。だがそこまで読んだ辺りでジジイに見つかり日記を閉じられてしまったので後は読めていない。ジジイがどうして今の拳?パイルバンカーという戦闘スタイルになったのかは不明だ。あのジジイでもいきなりオラオラだった訳では無かったらしい。話を戻すが、次は少し多めにマナを込めながら先程と同じ方法でナイフを投擲してみる。この方法なら五十発近く投擲出来そうだ。だけどこれでマナをあまり使ってしまうとあのグリフォン戦の時に決めた様な強烈な一撃を叩き込めなくなり、このウッドゴーレムに有効打を与えられなくなってしまうだろう。
「はあっ!」
俺はマナを多めに込めてナイフを投擲する。するとナイフの辺りに紫色のエネルギーが纏いウッドゴーレムがそれに反応して蔦を振るう。そしてナイフはふらふらと揺れながらウッドゴーレムの蔦を躱すが蔦に弾かれ破壊される。間違いない、、、これは相手のヘイトを確実に集めている。
「来た!名付けて影武者!」
なんか厨二病的なネーミングセンスだと思うだろ?これがまた良いんだよな、、、特に紫色のオーラが俺の伏兵の様で何よりカッコいい、、、そろそろ終わりにしようか、、、俺は両手の指の隙間にナイフを四本ずつ挟みシャドウウォーリアを発動させながら投擲し、大きめのククリを取り出し自分が行動できる限界のマナだけを残し全てのマナを注ぎ込んで投擲する。
「終わりだ」
ウッドゴーレムは複数のナイフに気を取られ俺が最大限のマナを込めた一撃を放つ。そしてウッドゴーレムはそれをまともに食らい吹き飛ぶ。
「やったか?」
だがウッドゴーレムは再び動き出し俺の近くに来た。
「嘘だろ、、、」
俺は絶望した表情でウッドゴーレムを見つめた。
「はい、そこまで!」
エルキンドが急いだ様子で転移して来た。
「面白い物を見せて貰ったよ。後で教えるけど俺の予想通りやっぱり君の固有スキルは『精密無慈悲』じゃなかったね、、、まぁ、あれレジストしようと思ったら出来たんだけど突然の事でびっくりしちゃったよ、、、まぁ、君も全て防がれたら成長しないと思ったし敢えてレジストはしないであげたよ。ちょっと今重光さんのウッドゴーレム戦を観戦中だから急いでね」
エルキンドはそう言ってそそくさと俺を転移させた。こいつ、、、あの状況でなんでも出来たのかよ、、、俺は自分の実力にがっかりしつつ自分の新しい能力に口元がニヤけるのであった。
亜蓮君はやっぱり厨二病でした。