79話 男爵様のご遊戯
「いいな、俺そう言うの嫌いじゃないぜ」
エルキンドは笑いながらそういい添島は渾身の一撃を放つ。だがエルキンドはその言葉の後に言葉を続けた。
「だけどね、、、常に上には上がいるものだ」
エルキンドは添島に向かって正面から迎え撃つ。
「ここは君の誠意に対してきちんと受けてあげるよ。ウッドゴーレム迎え撃て」
猛スピードでぶつかりに行く添島にウッドゴーレムが拳を合わせ互いに鍔迫り合う。そして、
「絡取吸収」
エルキンドがそっとつぶやく様にして放たれた魔法はゴーレムにぶつかりゴーレムの拳が開き添島を包み込む。添島のあの攻撃の威力を反動も無しに無力化させたのだ。これで俺達とエルキンドがどれだけ力が離れているかよくわかる。
「ぐっ、、、!?」
そして、添島は素直に降参を選んだ。エルキンドの圧倒的過ぎる力に俺達は黙り静かな空間が流れる。だが、その静寂を吹き飛ばしたのはエルキンドだった。
「どうした?そんなに落ち込むなよ!まぁ、短期間ではあるがお前達全員を、、、まぁ努力次第だが、俺がさっき生成していたウッドゴーレム、、、あいつを単騎で倒せるくらいにはしてやるよ。おっと短期間だから単騎って訳じゃねえぜ?」
あのウッドゴーレムを単騎だと、、、?短期間でそんな事が可能なのか?俺達は仲間の中でも力の差は大きく、一番力が強い添島でも倒せなかったウッドゴーレムを全員単騎で倒せると言うのか?最後の部分はスルーだ。
「なんか、疑ってる様だが先に言っとくがこのウッドゴーレムも俺の元の世界ではBランク相当のモンスターだ。お前達が先日倒したグリフォンも同じくBランクのモンスターだ。まぁランクってのは簡単に言うと強さを表す単位みたいなモンだ。ランクはFからSまであってその上に特級って言う天災レベルの奴までいる。まぁ、つまり、、、ウッドゴーレムなんて大した事は無いって事だ。どうだ?勝てる気がしてきただろ?」
エルキンドが指を目の前に出して語るが全然勝てる気がしない。
「まぁ、普通にやっても面白く無いだろ?一つゲームをしよう。じゃんけんをして勝った奴から俺が順番に稽古をつけてやるよ。稽古はウッドゴーレムを倒せるまではエンドレスに続かせる。死ななければ俺が治療出来るから安心してくれ」
いや全然安心出来ないんだが、、、そしてゲームって言うよりただのじゃんけんな気が、、、しかも勝った人先とか男気じゃんけんかよ。仕方ない、、、やるか、、、まぁ、五人もいるんだしそう簡単に決まる訳ないよな。
「最初はグー、、、じゃんけん、、、ぽん!」
「あ、、、」
俺はパーを出し他の全員はチョキを出していた。え、お前らまさか仕組んでないよな?
「そうか、まず最初はお前からか、、、俺は他の奴らとお喋り会開くから質問あったらこっちに来て欲しい、、、よし、じゃあ俺のマイホームに案内するぜ!」
おいおい、エルキンドが直接観て試合する予定じゃなかったのかよ、、、俺は未だにエルキンドのキャラが掴めなかった。
「まぁ、本当は複数体のゴーレムを同時に制御する事も出来るんだけど、やっぱり俺的には個人の力で頑張って欲しい訳よ、、、じゃあ頼んだ。」
エルキンドは俺とウッドゴーレムを放置してどこかに行ってしまった。正直エルキンドは面倒事は嫌いならしい。それでも俺達の為に稽古をつけてくれる気はある様だけど、要するに厳しい状態で実戦あるのみって感じか?
「あっ、、、もう一つ言い忘れてたけどウッドゴーレムは一定時間経つと停止するから一定時間毎に俺が食事を持ってくるわ。三十一階層の他のモンスターは俺が狩ってるから安心して戦うと良いよ。じゃあ俺はお喋りで忙しいんで健闘を祈る。」
どこかに行ったと思ってたエルキンドがワープして戻って来て一言伝え。また去って行った。他人事の様に言いやがって、、、全く安心出来ねえよ、、、というよりあのエルキンドとか言う男は謎が多過ぎる。何よりも元の世界とか本人がアンデットだとか、、、そして一番はやる事が適当過ぎる。本当に元男爵なのか疑いたくなるレベルだ。そして、俺とウッドゴーレムとの戦いは火蓋を切ったのであった。