77話 アイスバーン
「キュイイ!」
俺が両腕にマナを込める瞬間アクアが叫び俺に力が伝わる。軽減能力か、、、それならもっとだ!もっと出力をあげて!アクアから脳内にだめ、、、それ以上は、、、って言っているのが聞こえるが俺は構わずアクアの能力でマナ使用量が大幅に軽減されているにも関わらず全力のマナを込めた。この技が成功すればあのグリフォンと言えども耐えることは出来ないはずだ、、、だが、、、正直、成功する気が全くしねえよ!ギャンブルは好きじゃない、、、!だけどな、、、僅かな可能性に賭けるってのは俺は嫌いじゃないぜ!それに今はアクアのドームとアクアが直接かけた強力なオリヴィエが二重に重なっている状態!それは沼地階層のボス戦で添島達を超高温の炎から守る程の軽減能力の筈だそれなら反動で俺が吹き飛んで死ぬ事は無いだろう。俺はそう考えていたがこの後その考えが甘かった事に俺は気付く。
「内部圧縮属性付与! 氷火!」
(ドッガァァァァアン!)
「うわぁぁぁぁ!腕がぁぁあ!腕がぁぁあ!」
空中にいるグリフォンに向かって全力で冷気を圧縮させた氷塊と爆炎を同時に発動させた瞬間氷の内部から爆炎が顔を覗かせ高火力の爆炎がグリフォンを襲い氷とぶつかった事により氷内部の水分が急に膨張しとてつもない衝撃波がグリフォンを襲い水となった氷は水蒸気爆発を起こしグリフォンを滅多打ちにする。そして爆散してまだ原型を保っている氷の破片はグリフォンに向かって嵐の様に襲いかかる。まるでそれは燃える氷が意思を持ってグリフォンを襲っている様にも見える。だが、それを放った俺も甚大な被害を受ける。あの攻撃を放った反動で俺の両腕は肩から消し飛び血が吹き出している。アクアの軽減能力が無かったら俺は腕どころか全身を持って行かれていた可能性が高い。俺の仲間達には真上に向かって俺が撃っていた影響もあり被害はそこまで出ていなかった。アクアの能力の組織破壊軽減能力が働いて尚俺の腕からは血が止まらない。
「キュイイイイ!」
そしてアクアが自分の残りのマナを殆ど使い俺の腕にかける。血は止まったものの激痛と大体の傷が収まる筈もなく俺は錯乱したかのように叫び続ける。俺は今までに経験したことの無い激痛にまともに考える事は出来なくなっていた。
「安元君!?」
重光が慌てた様子で駆け寄って来るが俺は聞く耳を持たない。
「ちょっと待ってて、、、!まだ、、、詠唱もあまりうまく出来なくて時間もかかって実用性にはかけるのだけど、、、高位回復」
重光は焦った心を落ち着かせる様に深呼吸してからハイヒールの詠唱を始め俺にかける。すると腕の欠損は直らなかったのだが腕の痛みが少し引いた気がしたと同時に先ほどとは違う痛みが襲った。
「ぐっ、、、」
だが先ほどに比べて耐えられない程では無かった。俺の肩辺りは氷と炎によって一部の細胞が壊死してしまっていた。重光はハイヒールでそれを完全には治せなかったものの火傷や凍傷の状態まで戻したのだろう。ただのヒールではここまでの回復力は無い筈だ。ヒールは治せても皮膚の表面位だった。だがハイヒールはその内部組織、、、筋肉も治す事も可能になる。だが、あまり重度の傷の場合は一回魔法をかけてからもう一度時間をおいてかける必要がありそうだ。ヒールは術者の能力の影響も大きいがもう一つ肉体の自然治癒力を上昇させて一気に回復させる。重光の場合何回マナを使用して回復させても大丈夫だが俺の傷が酷く傷の回復量が微妙だ。そして自然治癒力は連続で回復魔法をかけると落ちていく。つまりは俺の元の自然治癒力が圧倒的に足りないのだ。まぁそれでも魔法をかけ続ければ治療は出来るのだが、、、今は拠点に戻ってジジイに治療してもらうのが適切な処置かと思われる。だが現在俺はマナを使い果たして動けない状態だ。そしてアクアもお疲れモードだ。だけどアクアは脳内で俺を含む倒れた仲間運ぶ事を手伝うと言っていたのでアクアに転移碑まで運んで貰って俺達は拠点に戻る。勿論グリフォンの素材は回収済みだ。
「おお、帰ってきたか、、、どれ治療か?分かったぞいううむ傷が酷いのう、、、ちょっと待っておれ、、、全快!」
思ったより動揺していないジジイを見て俺は察する。このジジイ俺達がグリフォンを相手にしたらこれくらいの怪我をしている事を予想していた、、、いや、今の実力だとこれくらいの怪我を追う事は必然的で俺の新技を見てあれを焦った時に暴発させる可能性も予測していたと思われる。ジジイはマナを俺達が視認出来るくらい放出し緑色のマナを津波の様に俺と添島にかける。
「はぁ、、、はぁ、、、ついでに添島にもかけてやったぞい、、、お主らが無茶をする事は承知の上じゃったが色々あって何だかんだ大丈夫だとは思っておった、そして渓谷エリア突破おめでとう」
ジジイは息を荒らげながら話す。何かジジイの俺達に対する態度が少し変わったと思うのは俺だけなのだろうか?俺はジジイのお陰で再び生えてきた腕を確認し、ジジイに素材を預けて眠りについたのであった。
〜〜〜どこかの階層〜〜〜
「はっはっは!そうか、、、奴らはグリフォンを突破したか!いやぁこれは楽しみだ、、、」
痩せ型の青年は金髪の女から情報を手に入れ愉快そうに笑った。
「俺の今回の任務は護衛だ、、、俺の任務は元の世界に戻るまで続く」
痩せ型の青年は静かに低い声でそうしゃべったのであった。