74話 鷲獅子王
「んー、、、よっしゃ!準備万端っと!」
俺達は鞄に詰めた荷物を確認し、転移碑の方へと移動する。そして、三十階層へと移動を開始する。
「っ!?」
俺達は三十階層に足を踏み出し、あまりの異様な空気に足をすくませる。三十階層は真ん中に通路があり両側で一斉に大量のテレインヒッポグリフやヒッポグリフが頭を伏せて通路を見ていたのだ。俺達は警戒しながら進むがヒッポグリフ達は俺達を襲う様子は一切無く、ボスへの道を示しているようだった。そして、俺達は直線の道を進みボス部屋の扉の前へと到着する。
「行くぞ!」
俺が掛け声をかけ、ボス部屋の扉を開ける。
「グルルルルルルルルルル!!!」
ボス部屋を開けるや否や大きな咆哮が鳴り響き俺達はその対象を捉える。黄色の鋭い瞳に茶色の分厚い毛皮、、、そして強靭な四肢、、、肩高は易々と三メートルは超えており今までの奴とは格が違うのがわかる。
「グリフォン、、、!?」
そう、俺達の目の前にいるのは間違いなくグリフォンだった。ヒッポグリフの少し大きいくらいかと思っていたが実際に見てみると明らかに格が違うのが思うように取れる。グリフォンは王者の風格を漂わせておりこちらを高所から見下ろしておりまるで来いよ?とでも行っているようだ。だが、分かる。その挑発にのって先手を出したら間違いなくカウンターで返されるだろう。そしてこの三十階層は割と有り難く中心部は円状の平くそれなりに広い空間が広がっており足場には困らない。だが、その円状の空間から外に出ればそこは谷で谷を越えて円状の空間を囲むように崖が広がっている。落ちたら間違いなく死ぬだろう。今回俺達に有利な様に見えるがこれは違う。巨大な体格を持つグリフォンの動きを制限しないように、、、そう、このグリフォンがどれだけ動いても動きを阻害しないようになっているのだ。勿論俺たちも条件は同じだが、、、向こう側の方が機動力の面での自由は大きいだろう。そして、グリフォンとの戦いは唐突に始まった。
「グルルルルルル!」
暫く睨み合いが続いたその時だった。グリフォンは息を一息吐きでは行くぞ!とでも言うかの様に地を蹴り此方に向かってくる。速い!
「キュイイ!」
アクアか咄嗟にドームを形成する。
「気貯蔵!」
添島が今までより大きめのエネルギーを纏いグリフォンと相対する。渓谷エリアで出来るだけエネルギー消費を抑えていた添島は今までとは比べ物にならない速度で加速する。不味いな、、、あの速度で動かれたらグリフォンとぶつかるまでに俺達の補助が間に合わない!
「うおおおお!」
だが、添島も当然それを分かっていたのかグリフォンに攻撃を仕掛けるフリをして、しゃがみこみ横に攻撃を避けようとした。
「グルルルル!」
「ぐはぁっ!」
「添島!」
だが、グリフォンは今までのヒッポグリフとは格が明らかに違った。グリフォンはまるでそれを見切っていたかの様に身体を空中で反転させ、添島を自身の鉤爪で捉えて地面に叩きつける。
「軽減!」
俺は軽減能力を発動させ添島のダメージを抑える。
「四重強化 撃防速!」
山西が強化魔法を全員にかけて動きが格段に変わる。それを見たグリフォンはほう?と言う感じで尻尾を嬉しそうにふりふりしている。舐められてる訳では無さそうだがグリフォンの習性として敵の様子を探ってる時は尻尾がふりふりと動くらしい。つまり、あのグリフォンは様子見の状態、、、本気を出していないにも関わらず添島のフェイントを見切ったのだ。とんでも無い野郎だ、、、だがな、、、!
「うおおおお!」
再び添島がグリフォンに向かって攻撃を放つ。勿論先程とその速度は比べ物にならない。
「グルルルルルル!」
グリフォンはそれでも余裕の雰囲気を出しながら地面に身体を密着させた。添島は未だ大剣を上段に構えたままだ。俺は既にグリフォンの後ろにまわっておりインプレスエンチャントの準備は完了している。そう、俺達の本当の狙いは、、、!
「内部圧縮属性付与! 火、、、っ!?」
俺は爆炎を放つ瞬間に体の脇腹辺りに痛みと衝撃を感じ吹き飛び爆炎はあらぬ方向で黒煙と轟音をあげる。
「ぐはっ!」
「安元!、、、っぐ、、、!」
吹き飛ばされた俺を見る添島だったがグリフォンの追撃の脚攻撃を剣を盾にして添島が受ける。そして、俺を吹き飛ばしたグリフォンはまだ獰猛な目を輝かせ、添島を押し付けながらにやりと嘴の端を吊り上げたのであった。