70話 帯電鳥
今俺達の目の前にはビリビリと身体から稲妻を発している大きな鳥がいる、、、確かあれはチャージホークだ。空気中の静電気などの微かな電気を帯電させて自身の力としており放出させる事も出来る。実際にあの時ヴァレオンが捕らえていたのもチャージホークの仲間で一応電気を纏って発してはいたのだろう。ヴァレオンには効かなかったが。だが、ここにいるチャージホークは違う点がある。それは明らかに雷とかがゴロゴロとなっている中で帯電させるのと普通に何も無い静電気などの微かな電気を帯電させるのでは帯電量に差が出るのは当然の事だ。
「キュイイイイ!」
チャージホークがこちらに向かって翼を広げて突撃してくる。だが、俺達に一切の焦りは無い。元々チャージホーク自体はそこまで強い種では無い。強いて言うならばローグレードワイバーンと同じくらいの強さだ。それがほんの少し電気を纏った所で根本的な強さが変わる訳でも無いだろう。いや、金属武器での攻撃や金属鎧への伝導を考えると少しは強くなるのか、、、そして、何より、、、
「属性付与 土」
俺は全身に薄い岩の鎧を纏いチャージホークを刀で断ち切る。
「キュイイイイ!」
一匹が落ちても次から次へと援軍がこちらに向かって来る。チャージホークは集団で俺達を仕留めようとしている。添島は電気が内部に伝わる前にさっさと斬り伏せて行く。重光、亜蓮は遠距離攻撃が基本なのでチャージホークにとっては嫌な相手なのでは無いだろうか、、、まぁ、山西も槍のカウンターで着実にチャージホークを倒すが腕に痺れが出るようで苦痛の表情で処理をしている。と、考えたらこのチャージホークでも帯電している電気量はそこまで多くは無いのではないか?いや、俺のインプレスエンチャントみたいに一気に圧縮して放ったら威力はありそうだが、、、俺がそう思ったや否やチャージホークの一匹が添島の方を向き叫んだ。
「キュイイイイ!」
その瞬間チャージホークから一つの紫電が一直線に伸び添島の胸部に直撃し、チャージホークは煙を上げて下に落下して行く。そして、
「ぐはっ!」
紫電が直撃した添島は地面に倒れ込み息を荒らげ大量の汗をだらだらと流している。
「添島!大丈夫か!」
俺が添島に声をかけると手で制し言った。
「金属鎧を着ている奴は気を付けろ、、、あいつの捨て身の紫電の攻撃は、、、食らうと危ない、、、」
添島が途切れ途切れに話す。添島は電気を胸部に食らった事によるショックを受けかけたと言うことか?鎧の外側から心臓を直接止めてしまう程の威力は無かったようだが過信は出来ない、、、ん?待てよ?これ俺も使えるんじゃね?インプレスエンチャントで雷を圧縮すれば、、、うんいけるな。耐性がない敵にはめっちゃ刺さりそうだ。今度試してみよう、、、ってチャージホークどんだけいんだよ!?キリがねぇ、、、!
「おい、添島お前もう走れるか?」
「ああ、お前達に追いつくくらいの速度は出せる」
「じゃあ行くぞ!こんな奴らいくら構ってもキリがねぇからな!」
そして、俺達は走り出した。チャージホークが集団で追いかけてくるがそれは亜蓮がナイフを投げて次々と落として行く。このチャージホークはヴァレオンがいる階層ではそこまでしつこく無かったと思うんだが、、、もしかして、俺達舐められてる?ヴァレオンと比べて威圧力が足りないか、、、そりゃぁ、ヴァレオンとこのチャージホークとで戦ったらチャージホークが勝つビジョンが一切浮かばないけどさ、、、そして、俺達はチャージホークから逃げ切る事に成功し、二十九階層への入り口に到着するのであった。それにしてもチャージホークの素材を何気に回収してみたが、素材になっても帯電性は持続しているようで触ると静電気の様な電流が走るのだった。そして、俺達はまた肩をがくりと落とす。
「はぁ、、、またか、、、」
俺達は転移碑が無い事実にまた落ち込む。流石にそろそろ拠点に戻らせて欲しかった。今日に至っては重光が魔法を酷使し続けていた為当然、、、
「休むか、、、」
「そうね」
俺達は階層と階層の狭間の空間が地味に安全地帯である事に感謝しつつ眠りについたのであった。それにしてもそろそろマジックバックの容量がギリギリである事は誰も知る由は無かった。