68話 滝壺
ヴァレオンが亜蓮の方向へと猛スピードで突っ込んで行く。その時亜蓮は絶体絶命かと思われたその時だった。
(ドガァァァン!)
「っ!?なんだ!」
亜蓮の目の前の壁が突如崩壊し、濁流が流れ込んでくる。そして、巨大な下顎を持つモンスター、、、バクナムルが現れ亜蓮に襲いかかろうとしていたヴァレオンを捉えヴァレオンはバクナムルの巨大な牙に捕まえられる。
「グオオオオオ!」
元々満身創痍だったヴァレオンがバクナムルの攻撃に耐えらる筈もなくバクナムルの牙は易々とヴァレオンの胴体を貫通してヴァレオンは悲鳴をあげる。だが
「グルルルルル!」
ヴァレオンもかなりの勢いで突っ込んで行ったのでバクナムルにも多少のダメージはあったようでガラガラと鳴き声をあげながらバクナムルは首を振ってヴァレオンの息の根を止めにかかった。ヴァレオンも必死に抵抗しバクナムルも苦戦している。いくら満身創痍だとは言ってもヴァレオンの力は強くバクナムルの顎でも苦戦を強いる程だ。だが次第にヴァレオンは動きが鈍くなりバクナムルの体内に収納された。先程バクナムルが破壊した壁からはまだ濁流が流れ出ている。濁流の勢いはそこまで強く無いが俺達は流されないよあに注意しながら出口の方へと移動する。
「グルルルルルル!」
俺達が移動を開始した頃バクナムルの悲鳴が聞こえた。バクナムルは口から煙を上げて転げまわっている。恐らく体内でヴァレオンが最後の抵抗に熱を発したのだろう。俺達は苦しむバクナムルを横目に滝壺を脱出する。そして、二十七階層の終盤に来ていた事もあり、俺達は直ぐに二十八階層への階段を発見するが、そこで驚きの声を上げた。
「マジかよ、、、」
添島が眉を顰めて面倒くさそうに言う。沼地階層でも二階層進めば転移碑があった。それを考えて流石に転移碑があると予想して先程の戦いでマナを思う存分に使って戦ったのだ。だが、今俺達が立っている二十七階層と二十八階層を繋ぐ狭間の場所には転移碑は存在しなかった。アクアと山西のマナはほぼ切れかけており、俺も微妙なラインだ。その状況で転移碑が無いとなると、、、一旦休んでマナを回復させた方が良さそうだと俺達は思い、階層の狭間で夜を過ごす事にする。そして次の日。俺達は二十八階層へと進む。
「ここは、、、二十七階層までとガラリと雰囲気が変わったな、、、」
添島が周囲を警戒しながら二十八階層へと足を踏み入れ感想を述べる。二十八階層は通路が滝の中へと突っ込んであり、雨がしとしとと降っていた。そして、その滝の中は先程ヴァレオンと俺達がヴァレオンと戦った滝壺とにており滝壺の中を徐々に進んでいく道のりになっていた。天井からは水が滴り所々に穴が開いており濁流が流れている。恐らくこの道を行くと滝の上陸に繋がっていると思われ、谷のかなり上の方まで行く事になりそうだ。この谷の上部がどうなっているのかは分からないがとても滑りやすい為に慎重に行く必要がある。幸い通路の部分は浸水しておらず進む事が出来る。だが、地面はクネクネと複雑に曲がっており先に進む道も崖を登らなくては先に進め無い場所も多数存在する。そして、何よりも嫌らしい点が大体その崖を登らなくてはいけない場所の天井に穴が開いておりそこから上へと抜ける仕組みになっていると言うところだ。つまり、俺達は濁流に呑まれながらほぼ垂直に近い崖を登る事になる。しかも、足場は滝壺だから安全かと思いきや穴が所々に開いており下に繋がっている為足を滑らせるとどこまで落下するか分からない。これはまたマナと体力を大量に奪われそうだ、、、しかも、濁流には鋭い牙を持った大きな鯉のような魚が濁流を逆流するように泳いでおり、その魚の牙から考えて除去せざるを得ない。俺はまたこの階層も一筋縄では行かなそうだ、、、と色んな可能性を危惧して頭が痛くなった。食料は腐らない様に火を通すか乾燥させて大量にストックしてあるから問題ないんだ、、、問題は、、、俺達全員がどうやって消耗せずにこの階層を進んで行くかなんだ、、、そう、俺達全員が、、、一部の仲間は簡単に進めそうだが全員が楽に進めるとは思えず苦悩し、滝の上流に向かって俺達は足を進めて濁流が流れ落ちる崖の前で俺達は全員が出来るだけ消耗を抑えられる策を練るのであった。