67話 谷獅子竜の猛攻
「グオオオオオ!」
来たか!やるしか無いのか、、、俺達の必死の抵抗も虚しくヴァレオンが滝壺に突入する。
(アクア!)
(了解!)
俺はアクアに指示を出し、能力を使ったドームを形成して貰う。
「添島!」
「分かってる!気貯蔵!」
まだ添島のタンクの量には余裕があり、体力は回復している為先程ヴァレオンと戦った時と然程変わらないエネルギーを纏いヴァレオンと相対する。今回は重光も足場の補助に回る必要も無いので攻撃の援護に回る。そして、
「四重強化 撃速防」
山西も短期決戦で決めようと思い、アクアのマナ軽減能力の恩恵を活かして息を荒らげながら俺達をフル強化する。これならばイケる!俺も先程の戦いから時間が経過しインプレスエンチャントもギリギリ三発くらいは撃てそうだ。
「グオオオオオオ!」
ヴァレオンは先程の戦いから学習したのか一番に俺を狙う。それは良い考えだ、、、だがな、、
、!
「俺達を舐めてもらっては困るな」
添島が俺の目の前に立ち塞がり大剣を振るう。
「グオオオオオオ!」
「ぐっ!」
四重の強化がかかった添島の攻撃は先程のヴァレオンとの戦いと違い添島も反動で少しよろめくが耐え添島の力がしっかりとヴァレオンに伝わる。だがヴァレオンも馬鹿では無い。その伝わった力を逃す様に真上へと飛ぶ。
「多重雷火槍!」
ヴァレオンが後ろへと飛ばなかった理由は重光にある。重光は予めヴァレオンが下がる位置を予測して魔法を十字状に放ち左右からヴァレオンを仕留める算段だったが上に避けるのは予想外だったのか、悔しそうな顔をする。真上に避けるという事は空中、、、つまり、翼の無いヴァレオンにとっては身動きがうまく取れない一瞬の隙が出来てしまう為、上に避ける事は予測していなかった。それに山西の四重のバフがかかっている添島の攻撃を受け流し別の方向に避ける事が出来る時点でヴァレオンの力の強さが伺える。今回は滝壺の中である為に天井の高さに制限がある。ヴァレオンはそれを利用しようとしたのだ。それならば上方向に避けても天井を足場として使い素早い身のこなしは可能だろう。ふっ、、、だが、そう簡単に俺達を倒せると思うなよ?
「内部圧縮属性付与!火!」
「グオオオオオオ!」
俺は添島が稼いでくれた時間を利用して近くの石に溜めたマナを爆発させ、真上のヴァレオンに向かって放ちヴァレオンは爆炎に包まれる。ヴァレオンは悲鳴をあげる。よし!決まった。俺が爆発の熱で大粒の汗を流しながらヴァレオンの方向を見ていると、黄色の目が上空で舞い上がる黒煙の中から輝く。
「グオオオオオオ!」
(バキィ!)
「安元!」
添島が叫び、ヴァレオンが猛スピードで黒煙の中から飛び出す。
「っ!?、、、分かってら、、、!」俺はインプレスエンチャントを撃った直後で腕が痺れて動く事は出来ない。やはり火属性や風属性などの大きな衝撃を発生させるタイプのインプレスエンチャントは反動が大きすぎる!
「ぐはっ!」
添島が間に入りヴァレオンの攻撃を受け止めるがヴァレオンの落下する速度とヴァレオン自身の身体能力を合わせた強力な一撃で無理な姿勢で受け止めた事もあり添島は大剣で攻撃を逸らす事には成功するが吹き飛ばされ地面に叩きつけられる。もう一本の腕で、、、!俺がインプレスエンチャントを使おうとしたその時目の前に影が現れた。
「射盾加速」
亜蓮だ。亜蓮は俺を担ぎ、盾の火薬を爆発させヴァレオンの攻撃範囲から抜け俺を放り投げ俺がヴァレオンに作った傷口に向かってククリナイフを突き刺した。
「グオオオオオオ!」
「ぐはぁぁあ!」
ヴァレオンの鱗が空中に散りヴァレオンが暴れ、亜蓮を吹き飛ばす。地面に手足がついていない状態での体幹を使った攻撃のためそこまでの威力はない筈だが軽装備の亜蓮は胃の中身を吐き出しながら吹き飛ぶ。咳き込んではいるものの身体に異常はなさそうだ。体幹だけの攻撃であの威力とは流石ヴァレオンだ。そして、そのヴァレオンの目はそのまま亜蓮を捉え自分を傷つけた相手を憎悪の目で睨み突撃する。不味い!添島は反対側に吹き飛ばされているし、俺はあの速度に付いていけない!そして重光の魔法ではヴァレオンは止められる気がしないし、詠唱が間に合わない!亜蓮は咳き込んでおり到底避けられる状態じゃない!絶体絶命のピンチ、、、死、、、俺達はその文字が頭を過ぎったのであった。
主人公達の仲間全員のマナ残量割と余裕に見えてピンチです。