62話 起床慌烈
「うっ、、、」
俺は全身の痛みで目を覚ます。んな、、、馬鹿な、、、俺は確か、、、あの崖から転落した筈だ、、、普通に考えてあの高さから落下して助かる筈が無い、、、そして、俺は気がつく。そうか、、、アクアだ。アクアが自身のマナを使って能力で俺を助けてくれたのか、、、だがアクアにかなりのマナを使わせてしまったな、、、
(良かった、、、無事だったんだね)
俺の心にアクアの感情が流れてくる。そうか、今回は沼地と違って仲間達とコンタクトは取れる。俺はアクアに指示を出す。
(俺は大丈夫!二十六階層の最後で待っていてくれ、俺もすぐ行く!と伝えてくれ!)
俺がアクアに伝えると
(分かった。でも無理はしないでね、マナがキツくなったら援護して欲しいってこっちに伝えたら僕が能力を使うから!僕の能力はマナの消費量も軽減してくれるからいつでも頼んでね)
アクアの有難い言葉を貰い、俺は立ち上がる。全身がキシキシと痛むがそれは我慢する。アクアが大量のマナを使い落下時の衝撃を軽減し、組織破壊をも軽減しても尚ダメージは身体に残っている。俺の真横にいる身体の骨が砕け散り肉片をバラバラに散らしているヒッポグリフを見ればアクアの能力がどれだけ強力かは分かるだろう。そして、マナ消費量軽減については俺は知らなかったのだがオリヴィエを使うのにもマナを使うから使い勝手はどうなのか?とは思う。だが強力な攻撃マナを大量消費する攻撃を使う時には使えるかも知れない。だが、俺の能力はどちらかと言えばインプレスエンチャントもだが継続的にマナを使う技が多い。継続的にオリヴィエを発動させるのは効率が悪そうだ。実用性があるのはインプレスエンチャントで一瞬で大量にマナを込めて撃つ時くらいかな?
(ブゥゥゥゥウン!)
そんな時嫌な羽音が聞こえてくる。ああ、あのデカトンボだな、、、そして横の肉片になったヒッポグリフを確認し、俺は痛む身体に鞭を打ち何気にヒッポグリフをマジックバックに回収する。何だかんだ言ってもヒッポグリフの毛皮はいい素材になるし肉も悪くは無い。そして何よりも、、、
(ブゥゥゥン!)
嫌ぁぁあ!こっちに、来るなぁぁぁあ!背後から俺を追いかける様に小動物を狙う巨大な昆虫や、カニのような生き物が走って追いかけてくる。奴らは普段小動物を餌としているが捕食者であるヒッポグリフも死体では良い餌だ。それを拾い血の匂いが付着した俺を執拗に追いかける。
「属性付与水!」
俺は全身から水を滴らせ身体を洗浄しながら走る。
「ぐはっ!」
しかし俺は自ら出した水で足を滑らし転ぶ。そして、周りを囲まれる。マナの残量がまだ回復し切っていないのでインプレスエンチャントを使う訳にはいかない。こうなれば、、、!
(アクア!)
(分かったよ!軽減!)
「うおおおおおお!」
走る!俺は刀を引き抜き突きの体勢のまま走る。つまりは強行突破だ。当然細かな傷は俺に入る訳だがアクアの軽減能力のお陰で直ぐに再生する。しかもこのエリアの谷底は上空の飛行する大型モンスターから逃れてヒソヒソと暮らしている小型モンスターが多い。だが、勿論その様な小型のモンスターだけでは無い。(グサ)
「ヒイイイン!」
俺の刀は目の前の何かに突き刺さり悲鳴が聞こえる。ヴァレーゴートだ。あ、やばい。こいつ自身は基本的には温厚だが怒らせると危険だ。ヴァレーゴートは谷の中腹から谷底で暮らしており、強靭な足腰と巨大な角を持っている。そして、その強靭な足腰で谷を飛び回り植物を食べて暮らしている。良くヒッポグリフなどの大型捕食者に狙われる為大きな角で戦うのだ。つまり、
「落ちて早々これかよぉぉぉお!」
俺は大量のヴァレーゴートに追いかけられる。そして、俺は崖の壁に空いた穴に避難し何と難を逃れる事に成功する。だがこの穴がただの穴な訳が無い。そして、俺は泡に包まれる。だが外はまだ大量のヴァレーゴートが走り回っており到底逃げられる状況では無い。そして俺は泡の時点で察する。あのカニか、、、そう、カニである。だが、ここにいるカニは浜辺階層のカニとは性質が違う、、、確かここにいるのはカルキノスだ。カニの癖に胴体と頭部が分かれておりどちらかと言えば昆虫に近い種だ。だが頭は横に広く地面に這う様にして移動し、巨大な鋏で攻撃する時だけ立ち上がる。だが、驚くのはその速度だ。昆虫みたいな見た目をしているにも関わらず目にも留まらぬ速さで横移動をし、巨大な鋏で攻撃してくると言う。だがその甲殻は柔らかくカニらしく無いカニと言えるだろう。だから俺でも攻撃は余裕で通るのだが、問題はその速さに俺がついて行けるかどうかという事だ。ちょっと今の俺の身体では微妙なんだが、、、そして、カルキノスの複眼が穴の中で輝き俺に向かって来たのであった。