51話 竜種
再び全員のメンバーが揃いそのメンバーの体力も回復したところで俺達は次の階層への支度を始める。今回の失敗から学び、食料は俺が殆ど持つものの他のメンバーも腰のポーチに多少は入れる事にした。勿論壊れた装備達はジジイが修理して新品同然の品として使えるようになっている。いやむしろ強化が施されている。この短期間で修理だけでなく、強化までけろりとした様子でやってのけてしまうジジイは本当にヤバいと思う。素直に感謝したい。そして俺達は二十四階層の最後へと転移する。そして、二十五階層へと足を進める。次はボスのいる階層だ。気を引き締めていこう。次の階層も毒の霧があるかもしれないのでアクアにはこの前張ってもらったキラキラと輝く水のドームを展開してもらう。そして、二十五階層へと足を踏み入れる。
「う、、、何だ、、、これは、、、」
俺達が足を踏み入れた先は先程とは比べ物にならない程の濃度の毒霧が辺り一面を覆っていた。アクアのドームがあるから大丈夫なもののこれは見ているだけで息が詰まりそうだ。沼地の泥はすっかり干からびており、泥とは違う何かの物質が干からびた泥の表面に滲み出てきている。そして、その物質は紫色の煙を上げており毒の元物質のような感じがする。試しにアクアに毒を浄化する事の出来る水をその物質に対して撃ってもらうとその物質は徐々に小さくなっていき毒毒しい色は消え、煙も発しなくなってただの石と化した。そして、そこには植物などは生えておらず俺が二十四階層でお世話になった亀の様なモンスターがゆっくりと動いており干からびた泥の底から何かを掘り食べている。そして背中の管からは紫色の煙がもくもくと湧き出ている。食べ物に毒素を含んでいるとあの生き物は性質が変わるのだろうか?そう思いながら俺達は足を進める。そして、ボスの扉の前に辿り着いた。ここに来るまでに出会ったモンスターはあの亀型のモンスターだけだった。もしかして、空気中の毒素が強すぎてそれに対して生存可能なモンスターがあのモンスターだけだったのか?確かにあの濃度の毒素が漂っているあの場所で普通の今までの階層にいた様なモンスターが生存する事は難しいだろう。それなら納得できる。二十四階層にいたあの甲虫達でも厳しいのだろうか?地面には何かがいるようだったがそれが何なのかは俺達には分からない。そう考えながら俺は仲間に声をかけ全員でボスへの扉を開いた。
「っ!?」
俺達は入った瞬間一歩退く。アクアのドームの外側の空気中は紫色の途轍もなく濃い濃度の毒素が渦巻いており、地面は毒々しい色のドロドロとした液体でボス部屋は埋まっている。アクアのドーム内は空気もドロドロの毒々しい液体も浄化されているがこのドームから一歩でも外に出たらアウトだろう。そして何より、、、
「グルルルルルル、、、、」
「ド、、、ドラゴン、、、!?」
紫の毒素の霧の中から黄色い目が光る。その生き物の体長は高さだけで五メートルは超えており全長で言えば十五メートルはあり、頭からは立派な角がエリマキ状に生えており、身体には大きな甲羅を背負っている。全身に管が繋がっておりその管からはだくだくと毒々しい色のドロドロとした液体と煙幕を延々と出し続けている。その生き物は一言で言うとドラゴンだった。そしてかなりの威圧感を放ち俺達を圧倒させる。そのモンスターの姿はどこか見た事がある気がして勘付いた。もしかして、、、あの亀型のモンスターの上位個体、、、!?その圧倒的な威圧感と大きさは桁違いだったがパーツなどはあの亀型モンスターの面影を残している。もしあのモンスターと同じならばあの手が効くはずだ、、、俺はそう思い手始めにマジックバックに手を突っ込み肉を取り出し放り投げる。すると、
「グオオオオ!」
その巨大なモンスターは大きな身体を地面を揺らしながらゆっくりと旋回し、餌が落ちた方向へと頭を向けて肉を頬張った。やはりな、、、そして、奴の弱点も分かった。速度だ。あのモンスターはかなり大きな身体と甲殻のせいか素早い動きは出来ない、、、だがあれだけの、、、身体を回すだけで地面が揺れる程の質量、、、俺達の生半可な攻撃は通用しないだろう。そして、俺達も向こうの攻撃を食らっては一たまりもないだろう。奴の身体が大きなだけで攻撃はゆっくりでも範囲が広くなる。とは言っても奴の攻撃手段は今のところ分からない。だが近くにいると奴の移動にも巻き込まれそうだ。だけど一番こいつを相手にするにあたって難しい事はもっと他にある。それは、俺達はこのアクアが作ったドームから出られないという事だ。もしも奴に直接攻撃をするならばこのドームが奴と密着する程近づかないといけない。だがそうなると本当に奴の攻撃を回避できない。大威力の攻撃に巻き込まれてしまう。今回頼りになるのは重光、亜蓮、、、くらいか?いや亜蓮も大した威力は期待出来ない。そうなると重光のみか、、、これは厳しい戦いになりそうだ。遠距離からかつ威力の高い攻撃を出来ないと奴を倒す事は不可能に近い。だけど実質亜蓮は高火力とは言えないし重光と亜蓮以外は遠距離攻撃手段に乏しい。だが極論を言えばドーム内から武器のリーチがギラギリ奴に届く位置から攻撃すると言う手もある。だが、それは出来ないことも無いだろうが、それも奴の攻撃に巻き込まれる可能性が高い距離でリスクが高い。魔法などでリーチがとてつもなく長い武器を作って攻撃も出来そうだが、まともに扱える気がしないのは当然の事だろう。添島も馬鹿みたいにタンクの気を使っているのでそこまで無理は出来ない。俺達はそう色々な事を考えながら一先ず奴から距離を取り奴に攻撃をする作戦を練るのであった。