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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
22章 終焉
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525話 交差する光

「それも中々ヤバい攻撃だが、あの老人の攻撃には遠く及ばぬな」


  管理者は鎧の埃を払いながら水で創られた龍を凝視した。


空気弾エアバレット


  超魔は杖を翳し、小さな魔法陣を無数に形成し、空気を圧縮した見えない弾丸を管理者に向かって放つ。


「ほう。それよりかは老人の衝撃波の方が堪えたぞ?」


  龍の腹を打ち破って出てきた無数の空気弾を見た管理者は避ける事もせずに笑っていた。空気を圧縮した弾丸は管理者に当たると周囲の空気の光を屈折させる程大量の空気を一度に放出しながら破裂した。風の刃とも言える無数の弾丸が周囲に舞い、空気弾が破裂し、それによって生じた衝撃波で迷宮の床や壁は大きく吹き飛んだ。壊れた床をマナで補強した管理者は次々と自分に襲いかかる水で出来た龍を腕で吹き飛ばした。


「良い準備運動だ。そのお陰でオレは少し感覚を取り戻した」


  管理者は準備運動と言った。その言葉に誰も反論は出来なかった。何故ならばここにいる全員、それが事実以外の何者ではない事を知っていたからだ。


「そうか、時間稼ぎ……する必要は無いな。寧ろ、今殺る必要がありそうか」

「時間ならば幾らでもやろう。生憎、オレは暇なんでな。お前達が居なくなったらオレの遊び相手がいなくなってしまうだろう?」


  管理者は笑って拳を握った。


「中々にお前達は骨がある。次の世代の奴らが育てばオレはまた新しい奴を呼ぶ。後はそれを繰り返すだけだ」

「っ!?水龍壁ウォーターウォール!」

  闇智は吹き飛んだ。それも、自分達が見えない所まで。


  闇智が形成したのは水の壁だった。だが、その壁は龍を象った物であり、管理者が殴打を放つや刹那その龍は管理者を食らった。管理者の拳を含む全身が水に包まれていた。それにも関わらず管理者の拳の衝撃波は留まる事を知らず、闇智の身体を大きく吹き飛ばした。


「まだ命を刈るには至らぬか」


  管理者は血で滲んだ周囲に散らばった水を見て言った。


「間に合わなかったーー」

「案ずるな茨燕。ここは下僕ザーブが出るざ」


  眷属転移が間に合わなかった事を悔やむ茨燕を尚武は制した。そして、尚武の右眼の辺りが蒼く発光した。その光は兜を照らし、蒼い炎の様であった。今の状況であれば超魔は防御魔法をかけられたであろう。だが、超魔はかけなかった。いや、かけても無駄だと言う事を知っているのだろう。


  放つ攻撃魔法も、管理者に全く効かないと言う事もあって超魔はマナを温存する戦法に変えた。


「いや、ウチもーー」


  自ら管理者の方へと歩みを進める尚武。その尚武に帝武は加勢しようと共に前に出ようとした。だが、それを尚武は制した。


「まだアレはやめておくざ、今はバフに徹するべきざ。アレを使うのは誰かが倒れてからでも遅くは無いざ」

「――分かったっス。ご武運を祈るっス」


  帝武は少し間を置いて答えた。


「行くざ」

鱗粉舞スケイルドダンス


  尚武の合図に従って、帝武は蝶の羽を生やして舞った。黄色い鱗粉が周囲に舞い、走り始めた尚武を含む仲間達全員を包み込んだ。鱗粉が尚武の身体を包み込んだ瞬間尚武の走る速度は一気に加速する。バフの重ねがけ。山西とは方法は違えど、帝武は別々の種類の似たバフを性質を変えて掛ける事でそれを可能にしていた。


「良い速度だ。今までのお前の動きが嘘の様だ。だが、オレも少し調子を取り戻して来たからお互い様か?」

「――」


  尚武は何も答えなかった。表情こそ窺えないものの尚武の心は絶対零度の氷の様に何も考えていなかった。ただ自分が忠誠を誓った主の為に盾を振るう。二つのタワーシールドと言う武器は明らかに攻撃には向いていない。それをおもちゃの様に軽々と振り回す尚武。タワーシールドに付いた刃が、管理者の頰を掠める。明らかに向上した尚武の身体能力に管理者は少し思う所があったのか、笑みを消して身体を反転させて、即座に尚武の背後に回り込んで蹴りを放つ。


「ほうーーん?」


  あまりに速い蹴り、先程闇智を吹き飛ばした殴打と同レベルの攻撃。それに、尚武は反応していた。身体を反転させて、盾を翳す尚武。だが、防御は間に合わなかった様で尚武は片方の盾を粉砕させて闇智と同じように迷宮の地面を破壊しながら吹き飛んだ。そして、管理者も同時に頭を地面に付ける事となる。


  尚武が管理者に蹴り飛ばされる直前。管理者の頭上には突然一つの影が姿を現した。神宮である。神宮は両手を引いて管理者の脳天に武器を使った強烈な一撃でを叩き込んだ。その際に近くにいた帝武は背中に巨大な甲羅を形成し、茨燕と超魔の二人を強烈な余波から庇った。


  管理者は地面に頭を突っ伏したまま動かない。だが、その周囲にいる全員は気が付いていた。


「地面が硬い……!?」


  神宮は驚きの声を上げる。自分が放った一撃は間違いなく大地をも穿つ一撃。それは今までの戦闘で分かっていた事であった。それなのに周囲の地面には小さなクレーターが出来ただけであまり壊れていなかった。


「毎回修復するのも面倒なもんで、マナを注いで迷宮の地面も大きく強化させて貰った」

「なんと!」

  神宮は大きく上空に跳んだ。


  神宮の腕のパイルバンカーが壊れ、金属が地面に転がり甲高い音を立て、管理者の頭が大きく跳ね上がり、神宮の目の前を大きな管理者の角が掠めた。そして、そんな戦闘を繰り広げる二人から少し離れた場所で尚武は立ち上がる。


下僕ザーブ達はスロースターターなんざ。下僕ザーブ達もこれからざ」


  尚武の左目は赤く光っていた。両目に赤い炎と蒼い炎を纏わせた尚武はゆっくりと立ち上がって身体に付いた埃を払う。壊れた兜の隙間から漏れる赤い光と蒼い光は暗闇の中で交差した。



 


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