498話 白髪の男
熱39度出して嘔吐して寝込んでました。
ストック切らしてすみませんでした。熱の原因は不明ですが、血液検査で血液中に黄疸が出ている事が分かったので一週間後変化が無ければ精密検査になります。
またあの夢か……休みたい時位休ませてくれよな……。俺の視界には前回見た夢の続きの映像が映し出されていた。半魔神が押していた状況から魔術師が船本体を自身の体に取り込んだ事で形勢が逆転した。その状態で魔術師が世界を滅ぼそうとしていると思えなくも無い程に強大なマナで魔法を詠唱する。それに加えて魔術師のマナが強化された影響か、反射バリアも半魔神の攻撃を通さない程に強化され半魔神にとって絶望的な状況になった。と言う所で前回の俺の夢は途切れた。
正直、俺の見ているこの夢はスケールが大きすぎて未だに訳が分からない。今の俺達の実力はやっとSランク冒険者の端っこに立った位に達した程度でしか無い。最初に夢を見た時は魔術師や金髪の男、Sランク冒険者と思われる戦士達が全て格上だった為明確な戦力差は分からなかった。だが、今なら分かる。この魔術師……圧倒的に強い。いや、圧倒的に強い事はあの時から分かっていた。だが、その想像を大きく上回るレベルで強い。今の俺達でも強さのレベルが分からないレベルでな。ロークィンド本土にはこんな化け物達がいるのかと思えばエルキンドがあれだけ謙虚なのも納得がいく話だ。ただこの夢もそろそろ終わるだろう。この夢は俺がこの迷宮を進むにつれて徐々に俺の脳内に映し出される。しかも、一エリアに付き一回と見る回数は決まっている。この残り階層は最後の階層を含めると六階層。夢が終わるならば今回か、次回だ。
俺の夢の世界でしばらく静止画が流れ、体感で数分が経過した頃だった。ようやく夢は動き始める。前回と同じように夢はスローモーションで流れており、夢の内容が俺にも読み取れる様になっている。やはり、夢は俺に何かを伝えたいのだろうか?
無理矢理嵌めた右腕を左手で掴み忌々しそうに魔術師を睨み付ける半魔神は何かを口ずさみながら自分の周囲に数百、それ以上の数の黄金の槍をマナで形成し、船と一体化した魔術師に向かって放つ。その槍の一つ一つには俺達が全力を出しても出せない程のマナが凝縮されていたが、そのマナの量は魔術師が蓄えているマナとは比べ物にならない位に少ない。
それを魔術師も分かっているのか魔術師はニヤリと口元を綻ばせて中の本体が見えない程濃密に可視化させた魔法陣を起動させた。
勝負あった。半魔神が魔術師に敗れ、世界が終わる。俺がそう思ったその時だった。魔術師と半魔神の間に一人の男が現れる。一体何処から現れた!?スローモーションでこの映像を見ている俺でもそう思う程その男が現れた瞬間を捉える事は出来なかった。
その突然現れた男が両手を広げて半魔神と魔術師に触れると半魔神が展開させた槍と魔術師が周囲に展開していた魔方陣が反射バリアごと一瞬で消滅する。そんな目の前で起こった有り得ない現象に半魔神は男から距離を取り、魔術師は怪訝な表情で突然現れた男を睨みつける。
突然現れた男は服を何も身につけておらず、夢を通して見ても不思議な印象を感じる男だった。足先まで伸びた白髪に白色の皮膚、全身真っ白に染まった肉体からは不気味さすら感じる。身体の半分はモザイクがかかった様に濁り、テレビの砂嵐の様に激しく色味が切り替わっていた。頰は痩けてはいるものの肉体は引き締まっており、全体的に人間味には欠けていると言った印象を強く受ける。まず全身白色で、身体の半分が砂嵐の様に点滅するなど人間では有り得ない。これが何かのスキルによる物なのか、それともそう言う種族なのかは分からないが、魔術師と半魔神が驚いた表情をしていると言う事は未知の物である可能性が高い。
白髪の男はそんな二人を見て口元をキツく縛り、力を抜いた無防備な姿勢で両者を睨んで何かを叫んだ。その言葉に二人は何かを感じたらしく互いに顔を見合わせて、驚愕の表情を浮かべる。だが、それに対して白髪の男が返した答えは言葉では無かった。白髪の男は無言で掌底を打ち出して半魔神の身体を吹き飛ばす。半魔神の身体は船の一部を大きく吹き飛ばしながら遠くへと吹き飛んだ。半魔神が意図していなかったとは言え、回避出来ない程の攻撃。それに警戒心を強めた魔術師は即座に魔法を詠唱する。だが、それによって伴った魔方陣は白髪の男が手を触れるだけで簡単に消失してしまう。その魔方陣に込められたマナの量は決して少なくはない。寧ろその魔方陣に込められたマナの量は半魔神ですら致命傷を受けると思わせる程だった。
そんな状況を不味いと思ったのか魔術師は自身の触手を振り回して白髪の男を仕留めにかかる。この触手は半魔神の身体を貫く程の威力を持っている為、決して弱くは無い。だが、白髪の男は手刀を作り意図も簡単にその触手を切断して見せた。そして、触手を掻い潜った白髪の男は核となった魔術師の肉体に向かって蹴りを放つ。そして、白髪の男の蹴りを食らった魔術師の肉体は船の核ごと船を破壊しながら吹き飛んだ。それと同時に核を失った船は動作を継続する事が不可能になったのか、高度を落としながら落下を始める。
そして、直ぐに白髪の男は再び何かを叫びながら無理矢理何かに連れ戻されているかの様に突然と姿を消した。白髪の男が消えた後にその場に残っていたのは白髪の男に吹き飛ばされて、大きなダメージを負ったものの転移魔法でその場に戻って来た魔術師と半魔神の二人だった。
その二人は大量の血を流し、肩を大きく揺らしながら対峙する。お互いに殺意の篭った目を向けて。白髪の男に反射バリアを破壊され、船との一体化も解除された上船の動力源も破壊されて何もかもを失った魔術師に対するは全力で戦い疲労困憊の半魔神。そのどちらかが勝つのかは誰にも予想が付かなかった。




