47話 燃料切れ
(ドガァァァアン!)
俺は突如辺りに鳴り響いた大きな音と振動で目を覚ます。思っていたより長い時間眠っていたようだ。俺の身体から生臭い香りが漂うが血を殆ど飲み尽くしていた為にそこまで匂いはキツく無い。肉は微生物が分解してくれると信じて近くに放棄した。鳥の内部をくり抜いた寝袋の内側の肉を極限まで削ぎ落とし使えそうな羽の部分を腰の小さなポーチに入れる。それにしてもだ、先程の大きな音と振動は何だったんだ?まるで地震でも起きたような感じだったぞ?その様な大きな衝撃を起こす何かがいるかもしれないと考え警戒は強めておこう。
「さて、、、とそろそろ行くか、、、気貯蔵!」
起きて特にここに留まっている理由も無いのでエネルギーを身体に纏い再び走り出す。昨日から来た方向を考えると、、、俺が今から進むのは、、、先程の大きな音がした方向か、、、俺は進む方向を確認して、少し顔を痙攣らせる。できれば先程の音がした場所には行きたくないんだが、仕方がない。真っ直ぐ進む以外の方法で進むと確実に迷う。俺はそう考え先程の大きな音がした方向に走る。そして、
「一体何があったんだ、、、?」
暫く走り大きな音と振動が発生した場所に来ていた。そこには内部から破裂した様な痕跡がある巨木が折れ倒れていた。どうやったらこんな事になるのか想像も付かない、、、こんな大きな木が自然にこんな事になるとは思えない。何か別の衝撃が加わってなったのだろう。そして、その巨大な木が倒れている前に次の階層へと続く階段が見えた。何がともあれ良かった。これで拠点に戻れる、、、そう思い、階段に近づく。
「ん?転移碑が無いな、、、参ったな、、、ここもそういう仕組みなのか、、、」
俺が階段へと近づくとそこには転移碑は無かった。そして次の階層へと足を進める。
「っ、、、!?」
階層の境目を出た瞬間俺は口を押さえて再び階層の境目に戻る。
「はぁっはぁっ、、、」
毒霧だ。俺は、、、効果は無いだろうがジジイの作ったガスマスクを着用する。そして、
「気貯蔵拡張!」
俺はオーラタンクの気を使い身体に纏った気を拡張させドームの様に膜を張る。これで酸素さえ足りれば毒霧の中を移動できるだろう、、、だが、これは気の消費量が多い、、、貯蔵分が切れたら中々厳しそうだ、、、ここはさっさと進むしかない!そう思った俺はドーム状に展開した気の中で自分にエネルギーを纏わせる。つまりは二重で気を展開しているのだ。これの消費する気の量は物凄い量になる。そして
「気貯蔵!」
俺は加速して階層の狭間を飛び出す、、、俺が沼に入った瞬間俺の周りのドーム状のエネルギーが沼地の泥を吹き飛ばす。この沼は深さが添島の腰ほどはあるはずなのだがそんなものは関係ないとばかりに泥を吹き飛ばしながら進む。だが、不思議な事に吹き飛ばされる泥の中の生き物が殆ど死滅しているのだ。おかしい、、、俺のエネルギーは生き物を死滅させる程の威力は無い筈なんだが、、、そして、沼からは湯気が上がっている。そして、遂にその時が来る。
(やばい、、、気が、、、切れる、、、!)
俺の周りのエネルギーのドームは少しずつ縮小しておりそろそろ自分の身体に密着しそうな程小さくなっている。流石に酸素も減っており苦しくなった俺はドームを解除する。その瞬間、、、
「ゴホッ、、、ゴホッ、、、」
俺は空気中の毒霧を吸い込み咳き込む。勿論あのただのフィルターなんちゃってガスマスクは役割を果たしていない。だが、毒を吸い込んでもまだ動けた。そして沼地は高温になっているのだが、自分の身体の周りを覆う気でガードする。タンクの分の大量にストックしておいた気は切れたがまだ自分の元々の気は残っておりそれを使って気を展開する。だが流石にドーム状のエネルギーは出せない。あれを自分の元々の気で補うとしたら直ぐに力尽きてしまうだろう。そう思い俺は毒を永遠と吸い込みながら進む、、、そして、、、
「クソっ、、、俺はここまでなのか、、、?」
徐々にぼやけ遠退いていく意識を無理矢理保っていた添島だったが遂に限界が来た。自分の身体に纏った気も徐々に薄くなり常に高温の泥の温度を身体で感じ始める。そして、、、
俺は意識を失った。
「やれやれ、、、全く、、、しょうがない子ですこと、、、」
倒れた添島の身体を黒色の影が覆い被さる様に集まり添島を包む。そして、黒い影が消える。そしてそこには添島の身体は跡形も無く消え去っていた。