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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
6章 沼地エリア
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43話 毒霧とアクア

俺は折れた右手を添え木で固定し、しばらく階層の境目で休憩してからアクアと二十四階層に続く階段を降りる。そして、二十四階層に到着し、直ぐに異変に気付く、、、「ゲホッ、、、ゲホッ、、、何だこれ、、、!?」

俺はあまりの息苦しさに噎せ咳き込んだ。そして、周りを見る。先程までの階層とは違い二十四階層は全体を紫色の毒々しい色の霧が覆っている。恐らく遅延性の毒だろう。直ぐには効果が出るものでは無さそうだ。だが、どうする?ジジイの簡易ガスマスクじゃ防げそうに無い、、、と言うかあの簡易ガスマスク何の役割も果たしていない気がする。ウィンドエンチャントで前方の毒霧を吹き飛ばしながら行くか?いや、それは体力の消耗が大きすぎる。ただでさえ右手が使えないのにそんな事をしては敵と遭遇した時にまともに戦えないだろう、、、

「キュイィィ!」

そう思った時だった。アクアが何かの魔法を詠唱する。そして、俺とアクアの周りをキラキラと輝く水のドームが覆い、中の空気が浄化されていく。一体何なんだ、、、このドラゴンは、、、アクアには驚かされてばかりである。そして、俺は二十四階層へと足を踏み出す。

「うわぁ!」

一瞬焦った。足を踏み出した瞬間地面に足が吸い込まれ、腰程まで俺の身体を埋め込んで俺の足は止まった。水位は俺の胸あたりまであった。思ったより深いな、、、そう思いながら俺はバチャバチャと音を立てながら慎重に沼を進む。近くにはあの甲羅を持つ亀の様な生き物も見える。そして、泥の中には大きな鰻の様な生き物やワニっぽい生き物もいた。ここにはかなり大型のモンスターが住み着いている様だ。食料には困る事は無いが今の俺だとまともに戦えない可能性が高い。それに俺は腰の刀へと目を落とす。先程巨大な鳥の鉤爪と刀がぶつかった衝撃で刀の刃が傷んでいる。まともに硬いものを切る事は難しいだろう。それに足場も悪く間合いも上手く取れない可能性が高い。ここからの戦いは殆どスキルとアクア頼りになりそうだ。だから出来るだけ戦闘は避けたい所だ。それにこの階層は寝る事の出来そうな場所が無さそうだ。どこも見る限り一面深そうな沼で覆われている。出来るだけ早く次の階段に着きたいものだ。次転移碑が無かったら割と詰みなんだが、、、俺的にそろそろ拠点に戻りたい所だ。そう思い俺は目の前で無邪気に欠伸をしているワニの様な生き物の横を通り過ぎようとする。

「グォォォ!」

俺が横を通り過ぎる瞬間ワニは口を大きく広げて俺を威嚇する。そして、そのワニの牙からは紫色の毒の様な液体が滴り落ちている。おおっとちょっと待て待て、、、足場が足場なんだ。しかも毒持ちかよ、、、今攻撃されたら回避できる自信はない。それならば、、、先手必勝!

属性付与エンチャントファイア!」

そう考えるや否や俺は即座に左腕にエンチャントを発動しワニの方向へと手を向けマナを込める。

(ボコボコ、、、)

沼地の泥がボコボコと沸騰したお湯の様に動き出す。

「グォォォ!」

ワニが此方に向かって飛びかかろうとした瞬間俺は左腕に込めるマナの量を一気に加速させた。

(ドン!ドドドドン!)

俺が力を込めるとまるで大地が爆発したかの様に前方の沼地の地面が大爆発を起こし更にどんどん連鎖しかなりの規模で大爆発が起こる。やべぇ、、、思った以上に火力が出てしまった。俺は泥の中の水に水が沸騰する以上の温度を込めて水蒸気爆発を起こそうとしたのだが、、、モンスターの死体や排泄物、植物などが積み重なって出来たヘドロのようなどろどろの泥は俺が思った以上にガスを蓄えておりそのガスも粘着性の高い泥に阻まれ密封されていたのだ。そのガスに水蒸気爆発という巨大なエネルギーが加わる事で連鎖反応を起こしたのだろう。分かりやすく言うならば大量の化石燃料がある場所にダイナマイトで着火する様なものだろう。だが、凄くやってしまった感が強い。目の前は生物の死体が大量に浮かび、まさに死屍燦々という言葉が似合う光景になっていた。そして、沼地の水分は残っているものの先程胸あたりまであった水分は俺の腹位まで落ち着いている。先程の熱で大分蒸発したのだろう。そう思い、俺は先に進もうとするが、

「熱っ!」

まるで熱湯、、、いや、熱湯以上だ。俺が吹き飛ばした沼地の部分の沼地の水温は泥沼のガスにより超高温に加熱され百度近くなっていた。

所々まだブクブクと泡が湧き出ている。粘着性の高い泥のせいで中々温度が抜けないのだ。参ったな、、、これじゃあ俺も進めないぞ、、、俺が通る部分だけでもエンチャントで温度を下げられたら良いのだが、、、無理だろうな、、、温度が高い部分が大き過ぎて俺の出せる冷気程度では直ぐに身体を焼かれてしまうだろう、、、事の発端が俺なだけにどこかむず痒い。くそっ、、、やらかした。そう思っていると向こうから大きな影が近づいて来た。この温度でも耐える生き物がいたとはな、、、と思い俺は確認する。それはあの強そうな亀の生き物だった。やはりあの亀の様な生き物はかなりの耐久力が有りそうだ。本来であればスッポン鍋になりそうな温度でも平気そうな顔をして我が物顔で歩いている。恐らく奴の分厚い鱗に熱が阻まれているのだろう。そしてその生き物はゆっくりと歩きワニの死骸に近づきモグモグと食べ始める。そして俺はこのモンスターをみてある方法を思いつく。このモンスター、、、確か、、、二十一階層にもいたモンスターだよな?あの時も確か、電気ナマズを食べてて餌を奪いに来た鳥達には威嚇はしていたものの俺達には一切興味を示していなかった、、、つまり、このモンスターは比較的温厚な部類に入るのか?それとも圧倒的強者の余裕か、、、だが食い意地が張っているのは確かだ。今ここには沢山の食料が浮いている。これはイケるかも知れない。無理だったら全力で逃げよう。

「アクア!行くぞ!」

俺は自分が招いた大惨事をどうにかする策を思いつきアクアと共に付近のモンスターの死骸を集め始めたのであった。


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