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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
6章 沼地エリア
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42話 怪鳥

「っ!?アクアぁぁぁあ!」

巨大な鳥に攫われて行くアクアを見た俺は全力で叫ぶがその声は届く事は無い。そして、自分が物凄い勢いで落下している事に気付く。だが、先程と違い近くに木の幹は無い。アクア、、、必ず後で助けに行くからな、、、そう思い一先ず自分を助ける事に専念する。

属性付与エンチャントウィンド!」

俺が刀に風を付与し下方向に向かって振るう。

(ブォン!)

その瞬間俺の手元から突風が巻き起こり落下する勢いを少し緩和する、、、だが再び加速する。俺は間髪入れずに刀を振り続けるがこれでは俺の体力が持たないし、いつ地面にたどり着くかも分からない。それなら、、、

属性付与エンチャントウォーターアイス!」

俺は右手の刀に水を左腕に氷を付与する。

「はぁぁぁあ!」

そして水を付与した方の刀を先程と同じ様に振るう。すると、、、刀が水を纏い水が斬撃のように下方向に飛んで行く。そして、俺は氷を付与した左手で右手を掴みマナを込める。だが、、、

「くそっ、、、駄目かっ!?」

その水は凍らなかった。いや、少しは凍っているのだろう、、、実際飛んで行く斬撃の軌道が少し変わっている。だが流石に俺の冷気は液体の空気中を飛んでいる水を一瞬で凍らせる程強くは無い。刀が冷気を帯びるが水はただの冷たい水になって下へと落ちて行く。このまま下へと落ちれば俺の命は無いだろう、、、しょうがない、もう後の事なんて知るものか!そう思い俺は左手に自分の込める事の出来るマナを最大限に込めた。すると、、、

(ピキピキピキピキ)

徐々にではあるが排出して行く水の内側から水が凍り始めたのだ。勿論大量の冷気を発し周りの霧は霜となり、更に霜同士が結合し氷となり俺の腕を覆って行く。もう少し、、、!

「はぁぁぁあ!」

(ピキピキピキピキ!)

そして、俺の右腕の刀からは長さ十メートルは在ろうかと言う巨大な氷柱が出来上がり、俺は地面に向かって垂直に落下して行く。そして、

(バキバキバキバキ!)

地面に俺の右腕の氷柱は突き刺さり大きな音を立てて瓦を割るように粉々に砕けて行く。

「ぐはぁっ!」

そして速度は一気に落ちたもののそれに比例して俺にはかなりの衝撃が走る。もしかしたら腕の骨が折れたかも知れない、、、腕の氷柱が割れそのまま俺は地面に叩きつけられた。

地面が沼地な事もあり俺は一命を取り留めたものの右腕が動かない。確実に折れている。そして、氷柱と一緒に持っていた刀も一本折れてしまった。使える刀は残り一本のみだ。そして、俺の両腕は冷気の影響で完全に凍結している。俺は微かに残っているマナを使いファイアエンチャントを発動し腕を内側から解凍する。そして、物凄い倦怠感の中俺は立ち上がる。

「痛てててて、、、」

体の節々が痛む。いくら減速したとはいえあんな高所から落ちたのだ。無傷な訳が無い。そして、俺は目の前に階段を見つける。次の階層への階段だ。

「出口だ、、、」

俺は階段の方へと足を一歩進んでそこで後ろを振り返る、、、そう木の幹がある方向だ。

「アクア、、、」

そうだ、アクアを取り戻すんだ!戻るのはそれからだ!とは言ったもののこの満身創痍の体で何が出来る?まず満身創痍じゃなくてもこの木を登る事は不可能だろう。そして、あの巨大な鳥、、、登った所で上には奴がいる、、、さてどうしたものか、、、やるしかねぇ!これしか思いつかなかった、、、今少ないマナで出来ることはこれしか無い!駄目だった時の為に予備を作っといて正解だった。そう思った俺は前回獣屍鬼と戦った時に使った蛍光液の予備を取り出す。そして、木の根元に流し込み始めた。そして、全ての液を流し込み終わると俺は木の上を眺める。頼む、、、後少しだ、、、後少しだけ耐えてくれ。俺はそう願い木が地面の蛍光液を吸収するのを待つ。沼地に生えている木だ。相当の水分を保有しているに違いない。それでも濃霧の中だから蒸散量する量は少ない筈だ。それでもこの木が腐らないと言う事はこの木が水を大量に溜め込む性質があると言う事だ。それならば話は早い。恐らくこの木は吸収蒸散のサイクルでは無く吸収、循環と言う変わったサイクルをしているのかも知れない。そして、待つ事三十分。地面にまいた蛍光液が薄くなってきた。そろそろか、、、俺も重光の様にマナを加えられるか分からないがやってみるしか無いだろう。そう思い俺は木の根元に触れ無属性のマナを付与し残りのマナを全て解き放った。

(ズドドドン!)

木の上の方で大きな爆発音が聞こえる。だが木からは爆発の炎などは一切見えない。だが、木の内部からは煙が上がっている。それを見ると同時に俺は地面に倒れ込んだ。マナ切れか、、、アクア、、、頼むから無事でいてくれ、、、俺は動かない体を必死に起こし首から上だけを動かし上空を見る。巨大な木がゆらゆらと揺れており今にも倒れそうだ。そして、

(ギィィィイ、、、バキバキバキバキ!)

木は物凄い音を立てながら倒れていく。そして、

(ズドーン!)

まるでこの階層全体に地震が怒ったかの様に大地を震わせ巨大な木は倒れた。木が吸収した蛍光液を着火させた事で内部の木の生きている部分が破壊され外側の表皮だけで自重を支えられなくなって倒れたのだ。木の表面の死んでいる部分は硬いが中の生きている部分はそこまで硬くはない。俺はそれを狙ったのだ。そして、

「キュイィィイ!」

アクアが心配そうに俺の所へと駆け寄って来た。おお無事だったか、、、だがよく見るとアクアの鱗には沢山の傷跡が付いている。あの鳥にやられたか、、、それにしても良くこの程度の傷で済んだものだ、、、いや、自分で回復させたのか、、、?相変わらず凄い生命力の持ち主だ。まず俺は考えていなかったのだが、良くあんな高い所から落ちてもアクアが無事だったな、、、その理由は分からない。アクアが俺の右腕の骨の折れた部分を舐める。少し痛みが引いた気がするがまだ腕は折れたままだ。そして、俺は俺が動けるくらいになるまでマナを回復する為に大人しく待つ。ここで何かに襲われたら終わりだな、、、そして数十分が経過し、歩く事くらいは出来るようになった。

「よし、出口へ、、、」

俺はそう言いすぐそこに見えている次の階層への階段を目指して歩く、、、その時だった、、、

「ギィィィ、、、」

俺達の目の前には見覚えある影が立っていた、、、くそっ!?分かってはいたが奴が来たか、、、そう、、、俺の目の前にはあの忌まわしき巨大な鳥が身体から何故か血を流しながらボロボロの状態で立っていたのだった。恐らく先程まで倒れた巨木の下敷きになっていたのだろう、、、だが何故だ?あの巨大な鳥の飛行能力があれば倒れて来る巨木を回避する事は可能だった筈だ。良く見て見るとその鳥の羽の部分に何かの歯型が付いていた、、、まさか!?そう思い俺は俺の隣で座っているアクアの方を向く。

「キュィ?」

これでアクアがあの高さから落ちて助かった理由にも合点がいった。アクアは巨木が爆発した瞬間一瞬動きの鈍った鳥の翼に向かって噛み付いたのだ。いくらあの巨大な鳥とはいえアクアは体長二メートル近くあるのだ。脚で掴むのとはわけが違う。そして、そのまま制御を失った鳥はアクアと共にふらふらと空中で飛びながら暴れ、下降して来たところでアクアが重心を変え鳥を巨木にぶつけたわけだ。そうすればアクアは助かるし、あの鳥は巨木の下敷きにもなる。だが、あの巨木に敷かれて生きてるとは、、、なんてタフなんだ、、、あと、アクアもかなりの強さだ。赤ちゃんとは思えない。だがあくまで空中で制御を失っているからこそできた事であって地上で戦えば当然あの鳥には力負けするのは間違い無い。ただ体長故に重さを使った攻撃は可能だ。そして、その鳥は俺を見るや否や怒りの矛先にしたようで脚で走って来た。おいおい、翼使わなくてもその速度で走れるのかよ!今の俺に回避する体力は無い。だが迎え撃つ事は可能だ。お互い満身創痍の筈だ。どちらかと言うと奴のほうが全身ボロボロだ。居合、、、これで決めるしか無い!そう思い俺は左手で刀の鞘に手をかけ腰を引く。そして、今だ!

「はぁぁぁあ!」

奴が俺の間合いに入った瞬間俺は腰の捻りと同時に刀を振り抜いた。

(ギィィィイン!)

「がはっ!」

俺の放った一撃は鳥の鉤爪とぶつかりその衝撃で俺は吹き飛ばされる。そして、その鳥も例外では無く俺が吹き飛ばされた影響でその鳥も対象を失いそのまま俺の方向へと吹き飛んで行く。そして、地面へと滑り込んだ。奴の脚の爪からは血が滲んでおり立とうとジタバタしている。アクアが俺の横を通り過ぎる。そして鳥の元へと行き鳥の首元に噛み付いた。そして鮮血が舞う。そしてその鳥は命を絶った。アクアはその鳥を咥えて俺の所まで連れて来る。そして、俺にこの前の水球を飛ばして傷を治療する。勿論腕の骨は折れたままだが他の細かい傷は治った。

「ありがとな、、、アクア」

「キュイィ!」

こうして俺とアクアは次の階層への階段へと向かったのだが、そこである事に気がついた。転移碑が無いのだ。くそっ、、、ここもか、、、俺とアクアが仲間と合流するのはまだまだ先になりそうだった。




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