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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
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433話 無双

俺の目の前には身体の半身が魔神と類似、半身が金髪の男に類似している人物がおり、両手にマナで形成したと思われるエネルギーの塊で出来た槍を握り、その槍で二体の鎧の胸元を貫いていた。俺はその男の事を半魔神と仮に呼ぶ事にした。半魔神によって槍で胴体を貫かれた鎧の背後にあった筈の一度溶岩に包まれ、変色していた大地は余波で全て消し飛び更地に戻っている。それを見た俺は一切様子が分からず動揺する。前回夢を見た時はこの半魔神が鎧の胴体を槍で貫いた所で夢は途切れていた。


そこから、ストーリーは進んでいない筈なのに、俺が見ている映像は前回の夢から時が加速した様に新しく生まれ変わっていた。胴体を槍で貫かれた鎧はその槍を解こうとその槍を両手で握ろうとしたその途端俺の背中にぞくりとした何かが走った。恐怖……いや、違う。これは圧倒的な強者による冷徹な視線。それを受けただけ。直接その視線を受けたのは自律式の魔術師が作り出した鎧達なのだが、鎧達を完全に見下す様な冷徹な半魔神の視線にただ見ているだけの俺も思わずたじろいだ。


あの馬鹿げた魔法を行使する魔術師や魔神、金髪の男などの圧倒的強者の視線もかなりの物だったが、この半魔神の物は質が違う。そう思わせる程威圧感を感じた。そして、一瞬の出来事だった。何の予備動作も無く鎧の機械仕掛けの両腕が宙を舞い、半魔神の両腕付近から閃光が走る。そして鎧達の後ろの大地が大きく抉れた。夢の速度補正があってもギリギリ俺が見えるかどうかの速度で半魔神は鎧の胴体に突き刺した槍を抜かずにそのままスライドさせて、鎧の腕を断ち切ったのだ。その時の一撃を放つのに半魔神の身体は腕以外動いていない。衝撃だった。俺がどこまで行っても届かないと思わせた高みにいる存在である金髪の男や魔神とほぼ互角に戦える存在であるあの自律式の鎧をいとも簡単に破壊したのだ。


俺は夢の世界と分かっている筈なのに半魔神を見て反射的に一歩下がり、半魔神を凝視し、唾をゴクリと飲み込んだ。半魔神は両腕を失った二体の自律式の鎧をもう一度確認すると手に持った槍をぐるりと大きく回転させ、鎧二体の胴体を圧倒的な力で切り裂く。その半魔神の簡単な動きについて行けた者は周囲には存在しない。いや、この世界でも存在しないだろう。二体の鎧は胴体を半分に寸断され、地面に上半身を落とす。それでも鎧は身体を必死に動かして半魔神に食らいつこうとしたが、半魔神はそれを許さなかった。


半魔神の腕から黄金のエネルギーの塊の様な球体の物質が出現する。そのエネルギーの塊からは途轍も無い量のマナを感じた。そのエネルギーの方を自律式の鎧にぶつけた半魔神は無表情で口元を動かして何かを唱える。その瞬間、鎧を取り込んだ光の玉は一度収縮し、中で心臓の様に脈を打った。そして、光の玉は粒子になって消え去る。そこには二体の鎧の姿はどこにも無かった。正直何が起こったのか分からなかったが、推測は出来る。普通にあの半魔神が鎧を消滅させる程の威力の攻撃を放ってしまったらこの夢の世界ごと吹き飛んでしまう可能性がある。あの魔術師ですら大地を吹き飛ばす化け物だ。この半魔神にそれが出来ない筈は無いだろう。


その為、予め自分の膨大なマナで防御膜を作り出してその上でその防御膜の中で圧縮させたマナを使って圧倒的なエネルギーを生み出して中の物体を消滅させる。あの半魔神が作り出した防御膜だ。重光が作り出した防御壁ですら、格上の攻撃力を誇るサンダーの攻撃を瞬間的とは言え防ぐ程の性能を誇る。俺達よりも修練され尚且つ、素のマナの量も桁違いのあの半魔神が作った防御壁の防御力は破壊しれない。そして、何よりも驚きなのがその防御膜を破らない程の威力の攻撃ですらあの二体の鎧を消滅させる威力を誇ると言う事だ。


あの半魔神……一体何者なんだ?颯爽と魔神が苦戦していた鎧二体を消滅させた半魔神は魔神の方を振り向いて何かを話す。そして、何やら事情を把握らしく半魔神の表情に変化が表れる。今まで殆ど無表情と言っても過言では無かった顔に突如として青筋を浮かべて半魔神は上空で戦っている魔術師と金髪の男の方を眺めた。そして、全身に黄金のエネルギーを纏うと半魔神の背中に巨大な魔方陣が描かれる。その魔法陣が起動すると、それを上空から見ていた魔術師も同じ様に左の指先に魔方陣を展開させた。金髪の男がその隙を突いて魔術師がいた場所を鎌で掬うが、既に魔術師の姿は無い。その瞬間世界が止まる。夢が俺に世界を見せているのだ。俺は必死に魔術師と半魔神の姿を探し、やっとの事で遥か上空……魔術師の巨大な船がある場所で半魔神と魔術師の姿を確認した。


そこで俺が勘違いをしていた事に気が付いた。船がある場所では無い。元船があった場所だ。半魔神の拳は船の一部を貫いて今にも魔術師の身体にぶつかりそうな勢いだ。そして、半魔神の周囲は激しく冷却され、凍り、山の様に巨大な龍の頭を象った氷の牙で半魔神の肉体は貫かれていた。


それでも半魔神の肉体は氷の牙で貫かれて尚即座に再生を始めており逆に半魔神の肉体は氷の牙を飲み込もうとしている。それも時間が止まっていても分かるほどの速度……つまり、魔術師が放ったと思われる大魔法を受けたのと同時に肉体が回復したと言う事だ。


半魔神の拳は船底を貫いて魔術師の反射バリアに触れている状態だ。その状態で時が止まっている。確か、船にも反射バリアの魔法が仕掛けられていた筈だ。金髪の男でも、魔神でも割れないあの反射バリアをいとも簡単に破ったと言うのか?俄かには信じられないがあの半魔神が船の中に侵入成功していると言う事はそう言う事だ。


魔術師と半魔神が使った魔法は転移魔法だと予測出来るが、イマイチ反射バリアをすり抜けられるのかどうかは分からない。今の一瞬の間に何が起こった?俺は考えるが、考えて分かる問題でも無い。俺が考えて分かる事は魔術師有利だった戦況が覆ったと言う事だけだ。そして、この夢はここで途切れた。


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