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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
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422話 舐めプ

八十五階層へと続く入り口は目の前にあった。雷光の中にポツリと佇んでいる一つの島……そこの島には巨大な門が設置してあり、その門の表面には階層の狭間を意味する虹色の膜がかかっていた。


雷光を受けて青白く光を反射して輝く重厚感のある武骨な門は孤高であるにも関わらず、周囲の中でも際立って存在感を示す。今までとは違い、門自体に特殊な意匠などは凝らされていない。ただ、職人が荒削りをした様なそのままの姿で島の中心に佇んでいる門の中から門以上に存在感を感じ、俺は少したじろぐが、今はそんな事を考えている余裕は無い。


「次の階層を超えれば、このエリアは終了だ。あとちょっと……頑張ろう」


俺は仲間達に励ましの声をかけながら重光を見る。俺達の周囲に展開された防御壁バリアは門がある島の方へと伸びていき俺達は伸びていく防御壁バリアの上をゆっくりと歩いて門の元へと足を進めた。


「準備はいいな?」

「「勿論!」」


俺の全員を鼓舞する様な掛け声と共に俺達は胸を張って門をくぐる。門を潜るとそこは今までの場所とは違った。てっきり俺は八十四階層よりも更に過酷な環境になる事を予想していた。だけど、俺達が出た場所は屋内だったのだ。


神殿を意識している様に周囲は荘厳な雰囲気に包まれている。一定間隔で生えた無数の刻印が入った柱は馬鹿広いこの神殿全体を支える為にずっしりと構えており、無駄な造形物などは一切合切省かれていた。


神殿の様な雰囲気の場所にも関わらず信仰を捧げる対象となる筈の像の様な物は設置されていない。天井の高さは優に百メートルを超え、天井が微かに霞んで見えるレベルであり、神殿の端も霞んで見える程広い。屋内戦闘のボス戦と言えば天空島階層を思い出すが、あそこまでは広くは無い。全体的に金属質で光を反射しているのにも関わらず、透き通り光を透過している青い鉱石を使って神殿は作られており、その鉱石はクリスタルの様に美しかった。


荒く削られた鉱石の表面はキラキラと光を放ち、全てを見透かす様に透過するその様は見るもの全てを魅了する。それは宝石などに然程興味が無い俺でも欲しいと思う程で、この神殿には余計な物が無いのでは無く、余計な物がいらないのだと無理矢理にでも分からせる感じがした。


そして、八十五階層に入った途端にこのボス部屋の様な雰囲気……アビスの時と同じだ。あの時は確かエリアの最後はボス部屋と一体化した空間だった筈だ。もし、それと同じであればアビスと同じ様に俺達をどこかで監視している可能性が大きい。俺が重光に耳打ちをして、防御壁バリアを解かせなかったのはその奇襲に対応する為である。


周囲の鉱石のあまりの美しさに少し俺はたじろぎながらも大声で叫ぶ。


「居るんだろ?いるなら出てこいよ!」

《やはり、バレてたか》


俺の声に反応して陽気な男の声が脳内に響き、その直後俺達の視界は閃光に包まれ、それと同時に重光の多重に展開していた防御壁バリアが幾枚か割れる。


「何だ!?」

《何だとは、失礼だなぁ。オイラは君に呼ばれたからこちらから出向いてあげたって言うのにさ》


俺達の正面には青色の稲妻が密集している様な巨大な集合体が全身の稲妻の形を自由自在に変えながら佇んでおり、その稲妻はビクビクと俺達の様子を面白がる様に震えて笑う。密集した稲妻はあまりの密度で密集している為透過はしておらず、物体としての形を形成する。虎の様な形を取ったそれは面白がる様に口を動かして言う。


《オイラが試してあげるよ。彼はまだ呼ぶ必要は無い……とは言っても彼は直ぐに待ちきれなくなって自ら出てくるだろうけどさ》


舐めプ。世間的にはそう言われる物だ。今までの敵は舐めプだと思える行動には色々意味があった敵も多かったのだが、こいつの場合は本当にやっている気もしない事は無い。名をサンダーと言い、フェニックスや雷霊サンダースピリットなどと似た様な存在で、実体が無い。その為、こいつを倒すならばフェニックスと同じ様にマナを消耗させて属性攻撃などで押し切る他無い。


サンダーの性格が、ゆっくり目な性格で助かった。最初から本気で来られたら俺達だって相手の力量を見る事が出来ない。様子見で最初に戦えると言うのは有難い。


しかしながら、先程サンダーが登場した際に放った一撃の威力……一言で言うならばめちゃくちゃヤバい。俺達は奇襲とは言えサンダーの攻撃を直接食らった訳では無い。サンダーは登場する際に神殿の上部から落雷を落とす様に雷を纏って登場した。その際に周囲の金属を伝って流れた電気とサンダー自身から放電された電気で重光の防御壁バリアが複数枚破壊されたのだ。


本当に馬鹿げた威力だ。あの攻撃を直に食らっていたならば、ほぼ間違い無く、防御壁バリアは貫通され、防御壁バリア内部にいた俺達はあの放電を直に食らっていただろう。


サンダーが着地した地点の鉱石は表面が赤く赤熱しており、大部分が融解して凹み、ゆらゆらと炎を上げている。サンダーが触れている地面を伝って神殿全体に電気が流れ、神殿自体が巨大なコイルと化し、常に俺達に対してスリップダメージを与える。


今は重光の防御壁バリアがある為鎧の損傷には繋がっていないが、厄介だな。まぁ、最初の一撃を態と外したのも舐めプって奴だな。しかし、それで自分の強さを俺達に分からせてくれてる辺り優しいのかもしれない。ただあの一撃で分かった事はこいつが俺達を舐める気持ちも分からない事も無いと言う事だ。もう一体ボスがいる。


それを考慮しなくてもサンダーは十分な強さを持っていた。



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