表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
425/544

421話 無休と言う主題

身体以上に目が疲れる。それが俺達が八十四階層に入って感じた大きな感情だった。基本的に重光の防御壁バリアはモンスターなどが襲って来ない限りは破壊される事は無い。その影響か、俺達は自然にそちらを気にする余裕も浮かんでいた。


一応、重光の体調も常に気を付けてはいるものの、今の所は異変などは起こっていない。この様子だとボス部屋までは何とか持ちそうな気がする。既にこの階層に入ってから数十分が経過したが大きな問題は未だ起こっていなかった。どうやら、八十三階層までとは違って激しく空気中を電気が伝って点滅し、濃霧に反射する光で周囲が見え難いのは俺達だけでは無いみたいで、他のモンスター達も周囲が良く見えていない様だった。


薄暗い場所では、夜行性の動物のように視界を確保できるモンスターは多い様子だったが、真逆の眩し過ぎる環境下ではそれに適応したモンスターは少ない様だ。これは俺にとっても予想外だった。異世界クォリティだからその程度の壁はぶち壊して来るもんだと思っていたのだが、そうでも無いみたいだ。ただ、大型のモンスターが近くを通ると影が写り込む為、大体の位置はお互いに感知可能だろう。


だけど、それでもモンスターの急襲が少ないのは他にも要因が考えられた。それは八十四階層が他の五感能力を使い難い環境であるという事だ。激しく鳴り響く雷鳴は音を搔き消し、雷光と濃霧は視界を奪う。その上、雨と雷がぶつかり合って周囲の温度はあやふやになって判別つかない。こんな環境下でどう五感を使えと言うのだ?それは無理な話だ。


まぁ、一つの五感に関して特化しているなど、独特の進化を遂げたモンスターであればこの環境下でも感知は可能だ。煌髪龍グリッタードラゴンなどは鼻もある程度利く為、俺達を感知する事が容易に可能である。だが、煌髪龍グリッタードラゴンは基本的に興味が無い物相手には執拗に追いかけたりする事は無い。姿を捉え難い環境下では煌髪龍グリッタードラゴンがする行為は捕食が殆どで、大きさの比較的小さな俺達の捕食優先順位は低い。


ま、要するにこの階層は環境さえ対策出来ればそう厳しくは無いと言う事になるな。





俺達が八十四階層に到達してから数時間が経過した。あれからモンスターとの交戦は数度しか無かった。雷その物が意思を持ってモンスターになった姿である雷霊サンダースピリットや、煌髪龍グリッタードラゴンの亜種で少し小柄で体に電気を蓄積させるのに特化している銀色の体毛を身に纏った銀色煌髪龍シルバーグリッタードラゴンなどとの戦闘を行った。


雷霊サンダースピリットは白い空気の靄の様な姿をしており、八十四階層の様な白い霧に覆われており尚且つ雷光が常に迸っている場所では攻撃されるまで気付くことが出来ない。雷霊サンダースピリットは自由自在に身体の大きさを変える事が出来、強烈な雷撃を放つ事が出来る厄介なモンスターだ。その雷撃の威力はかのゴーレムにも匹敵する。その為、何度か防御壁バリアを何も無いところから貫通されて焦った。ただこいつ自体は一度雷撃を放つと姿を消す為、特に交戦と言う形は取っていない。ただ攻撃して来るのは奴らの気まぐれなのだろう。ただひたすら防御壁バリアを唐突に破壊して来る面倒な敵だ。


銀色煌髪龍シルバーグリッタードラゴン煌髪龍グリッタードラゴンとは違って銀色の体毛をしており、体長は尾を含めても十メートル位しかない。アクアや煌髪龍グリッタードラゴンと比較するから小さく見えるがこれでも相当大きい。それで、こいつの最も特出すべき点は体内にある雷を生成する器官だ。煌髪龍グリッタードラゴンと比べて身体能力などは若干落ちた為、腕力に任せて防御壁バリアを殴り壊すみたいな事は無くなったが、その代わり身体から発せられる雷の威力は煌髪龍グリッタードラゴンよりも格段に上がっている。防御壁バリア込みの戦闘ではそこまで苦にはならない相手だが生身で戦うってなれば、煌髪龍グリッタードラゴンよりも厄介なのは間違いないだろう。偶にこいつも口から雷撃を放って防御壁バリアを破壊して来る点が面倒だ。だけど、その場合は初動も大きい為回避可能で、雷霊サンダースピリットに比べると達は悪くないモンスターである。


俺達がここまで進んで厄介だと思ったのはこの二体位だ。後のモンスターは基本的に放置していても階層を進むのに弊害が出ない程度しか無かった。正直、毎回階層やエリア毎にコンセプトがあると言うのは知っているが、ここのコンセプトは今までの嫌がらせを主にしたコンセプトからはズレている気がする。どちらかと言えば、無休とかそんな感じだ。素早い意味も含む疾風迅雷。これを表していると言うのも何となく分かる。


それでもまだ何かあるのでは無いか?と周囲を警戒してた俺だったが、結局その警戒は杞憂に終わる。だけど、八十五階層……つまりボスのいる場所に行くのにも関わらず、俺自身のマナが回復し切って居ないのには大きな不安を覚えた。


アビス戦では環境が悪かったとは言え、かなりの苦戦を強いられてしまった。それを考えると轟雷エリアのボス戦も楽にクリア出来るとは思えない。しかも、ジジイの図鑑を見る限り、ボスモンスターは二体だ。イフリートとフェニックスの様なコンビネーションを発揮し、その上で地形を生かした攻撃をして来る事を考えると厄介極まりない。当然ボス部屋もボスに適した……つまり、このエリアであれば雷につつまれた環境。重光の防御壁バリア又はこれまで装備品の劣化を必死に抑えて来た二層式鎧。この二つをどれだけ有効に使えるかがポイントとなる。


重光をこれ以上精神的に疲れさせる訳にもいかないが、万全じゃ無い状態で挑むボス戦がどの様に響くのか……それは俺にも予想が付かなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ