40話 出会い
俺は周りをよく見て親鳥がいない事を確認する。そして、下に降りようとしたが俺は大変な事に気付く、、、嘘だろ、、、食料が無いのだ。探索をする為に大量に詰め込んだ筈の食料、、、それらが全て無くなっていたのだ。何処かで落としたか、、、?とは思ったがマジックバックに入っている筈の食料が勝手に落下する筈も無い、、、つまり、、、食べられた!?このマジックバックは大量に物を詰め込む事ができる。だが、勿論防犯機能なんて物は付いていない。恐らく鳥が俺を発見した時に袋を啄ばんだのだろう、、、それで食料が得られたものだから味を占め食べたと見た方が早いか、、、ちょっと待てよ、、、マジックバックを持っているのは俺だけか、、、という事は仲間達は、、、いや、そういう事を考えるのはよそう、、、今は自分の心配をするべきだ。今から降りた所で食料があるかどうかは微妙だ。出てきた敵からして泥アメーバは食えそうに無い、、、となると食虫植物位か?それならば先にここで収穫をしていた方が良いのでは無いか?大丈夫だ、、、まだ親鳥は帰って来やしないさ、、、多分。と思い俺は巨大な自身の身体程ある卵の近くへと移動する。おお、美味そうな卵だ。これは食べ応えがありそうだ、、、と思い卵をマジックバックに入れようとする、、、だが、
「あれ?入らねぇぞ?」
マジックバックに何故か収納されてくれない、、、何故だ?と思い、一つの結論に至る。生きている生き物などはマジックバックには入れる事が出来ない。という事だ。それならば納得できる。当然野生の鳥の巣なのだから殆どが有精卵だろう。一旦焼くか、、、と思い俺は何故かサイズが一際大きく俺の身長の二倍ほどある卵に手を翳す。
「属性付与火」
俺の手から熱気を発しどんどん辺りの温度が上昇し、周りの霧が水蒸気となっていき俺は汗を滝の様に流しながら熱を加え続ける、、、そして、、、
(ピキピキ)
卵にヒビが入る。
「え?」
おかしい、、、俺が与えた温度は普通に卵であればゆで卵になってもおかしく無い温度の筈だ、、、もしかして、熱を与えた結果卵の殻の中の空気が熱膨張したのか?だが卵の殻は僅かな隙間があって、多少の熱膨張には耐えられる筈なんだが、、、流石に水蒸気はキツかったかと思ったその時だった。
「キュイィィイ!」
「え、ええええぇぇぇえ!」
卵の殻を破り中から生き物の頭が飛び出した。俺は驚きのあまり大声で叫ぶ、、、
「ド、、、ドラゴン、、、?」
そう俺が驚いた原因はもう一つある。卵から出て来た雛がどう見ても鳥では無い容姿ををしているのだ。まだ赤ちゃんだから容姿はしっかりしてないもののゆっくりと目が開く。そして、俺の顔を確認し、
「キュイィィイ!」
俺の方へとゆっくりとおぼつかない足取りで歩く。おお何だ?
(かぷ)
「痛ぇぇぇえ!」
いきなりその孵化したての生き物は俺に噛み付いて来た。噛み付かれた俺の手からは薄っすら血が滲んでいる。赤ちゃんなのに既に小さいものの牙が生えている。もしかして、飯が欲しいのか?うーん、、、どうしようこれ他の卵もこの生き物だったら、、、まぁ、いいか、さっさと親鳥が親鳥が帰ってくる前に他の卵を回収して、俺はこの木から降りる。この生物に構っている暇はない。と思い他の卵にも同じ様に熱を与えてマジックバックにしまおうとする、、、だが
「あれ?今度は普通にしまえたぞ、、、?どういう事だ?」
それから他の卵を次々と回収していくが全ての卵はマジックバックに回収された。それを疑問に思った俺は一つ卵を取り出し試しに殻を割ってみる。すると、、、
「おお、、、」
普通にゆで卵が出来ていた。これが巷で噂の水蒸気調理法かいや、全然噂にはなってないが、、、試しに口に卵を入れる。
「美味ぇ、、、」
俺が口に入れたのは白身だけだがそれでもわかる。この臭い沼地で育ったとは思えないほどプリプリの食感に弾ける弾力と濃厚なコク、、、だが少し味に癖がある。白身だが、これだけで酒の摘みになりそうだお酒を飲んだ事は無いのだがな。一言で言うなら燻製の卵だが食感はプリプリ、、、まぁそんな感じだ。もう少し贅沢を言うならば塩が欲しい所だ。俺がこんな感じで舌鼓をうっていると先程の孵化した生物が鼻をピクピクと動かし俺の方を物欲しそうに見ている。
「分かったよ、、、あげるから、、、」
俺は卵を刀で二つに割りその生物の口元に置く。その生物は匂いを嗅ぐと生えたての牙使い卵を熱そうにと食べ始めた。こうして見ていると可愛いな、、、そう思いその生き物の容姿を再び確認する。長くシュッとした鼻に大きな耳、、、そしてエメラルドグリーンの切れ長の目、、、そして長めの首に繋がっている体には四本の四肢が生えており足の先にはまだ短いものの鋭い爪が生えて来ている。そして背中には翼?になると思われる小さな羽の様な物があり、特出すべきはこの生物の尾だ。身体の長さの数倍の長さはあるだろうとても長い尾を持っている。そして、体表は綺麗な青色の鱗の様な物で覆われておりその上からは金色の体毛が薄っすらと生えている。この生物の身体を隅々まで確認した俺はふと我に返る、、、そうだった、、、今はこんな事をしている場合じゃなかった!
「強く生きろよ、、、」
俺はそうこの生物に声をかけ、木の幹の方向へと歩き出す。
「キュイィ?」
俺が歩くとこの可愛い生き物は俺の方を向き何で行くの?みたいな顔をして、鳴き声をあげゆっくりとついてくる。そうか、大体の生き物は卵から出て来て一番最初に見たものを親と思う習性があるのか、、、これは参った、、、そう思っている時だった。
「ギィィィィイ!」
やべぇ!親鳥が帰って来た!後ろの方から大きな鳴き声が聞こえ、俺は振り向くとそこには翼を広げると軽く五メートルはありそうな巨大な鳥がおり、こちらに向かって飛んで来ていた。
「ギィィィィイイイ!」
そしてその鳥は自分の卵を確認し壊された事を激昂したかの様に鳴き声をあげた。やばい!早く逃げなきゃ!俺はそう思い鳥に背を向け走り出そうとしたその時だった。鳥は食べかけの卵を確認し、それを食べかけていた可愛い生き物を視認したかと思うと物凄い勢いでその生き物に向かって自身の鉤爪を叩きつけようとした。そして、それを見た俺は走り出した。
「危ない!」
俺の体は咄嗟に本来逃げなくてはいけない方向とは逆に動いていたのだった。