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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
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412話 雷光の渦中

連鎖属性付与チェインエンチャントファイア!!!」


俺の掛け声と共に前方を覆っていた黒雲は真っ赤な炎に包まれ、俺とアクアは未だ大量の黒煙と炎を上げながら燃え続ける黒煙の中を突き抜ける。黒雲鳥ブラッククラウドバード程度の防御力ならば、連鎖属性付与チェインエンチャントでも十分倒せる筈だ。少し距離が離れていた個体は倒せなかったかも知れないが、それはアクアの勢いで突き抜けてしまえば問題は無い。


そう思った俺だったが、黒煙の中から漏れる黄金の光を確認してアクアの左の脇腹を軽く蹴る。それと同時にアクアは水を右側に勢い良く噴射し、高速で旋回した。そんな俺達の真横を極太の雷光が貫く。


「やはり、連鎖属性付与チェインエンチャントでは火力不足か……?いや、違う!」


ピカピカと激しく点滅する黒雲を目撃して俺は更なる警笛を脳内で鳴らす。間違い無く俺は手前にいた黒雲鳥ブラッククラウドバードは仕留めた。奥に見えていた黒雲鳥ブラッククラウドバードを仕留められなかったとしても、見えていた数ではこれ程の雷光を放つ事は不可能だ。


先程俺達の真横を通り過ぎた雷光の直径は五メートルを上回っていた。視界を覆う黒煙ごとアクアが高圧をかけて噴射する巨大なカッターナイフの様な水の刃が切り裂き、視界を晴らす。その時俺の目に映ったのは水平線の向こうまでズラリと並び、爆発寸前の爆弾の様に体を光らさせて俺達を爛々とした目で狙っている黒雲鳥ブラッククラウドバードの群れの全貌だった。いや、全貌では無い。奥が見えないのだ。どこまで見ても黒雲鳥ブラッククラウドバードの群れ……まるでこの階層の黒雲全てが黒雲鳥ブラッククラウドバードであるかの様に……。


アクアの図体が大きい影響でこの選択は仕方がなかったとは言え、上空を通過するのは今回に限って言えば悪手だったか……とことんやらかしてくれるな……。八十一階層では正規ルートが地雷コースだったのに今度は裏ルートが地雷コースって訳か……。俺達は極太の雷光を交わしながら天空を駆け、急いで先を目指す。


すまない。先に行ってるぞ。流石にこの危険な環境でゆっくりしている訳にはいかない。


「グルルルルル!!!」




(キィィィン!)


アクアの鳴き声で先に行く意思を仲間達に伝えるとそれに合わせて重光の魔法の音が返って来た。未だ下からは異常を伝える音などは返ってきていない為あいつらは大丈夫そうだ。先で落ち合わせよう。絶対に後で追い付いてこいよ!


最初はあの新技を使いながらじっくりと進もうかと思っていたが、作戦変更だ。一気に駆け抜ける。両足でアクアの脇腹を軽く蹴るとアクアの背中の魔方陣に先程よりも沢山のマナが流れ、背中付近から噴出される水の勢いが強まり、アクアの速度も更に上昇する。俺は共鳴属性付与レゾナンスエンチャントを付近で発動させて、回避不可能と思われた雷光の軌道を逸らしたり、黒雲鳥ブラッククラウドバードの討伐に使用した。


「幾ら敵の攻撃を感知してから発動して、威力が高い共鳴属性付与レゾナンスエンチャントを使えるとは言ってもこの頻度であの威力の攻撃が飛んで来るんじゃ、マナも厳しいな」


俺はぶつぶつと愚痴を呟きながら一瞬にして通り過ぎていく視界の中でマナをコントロールする。共鳴属性付与レゾナンスエンチャントは発動すれば強いが、技の仕組み故にアクアの高速移動に合わせてマナのバイパスを上手く動かすのが難しい。そのせいで俺は他の事には一切集中出来ない。要するにジリ貧だ。何処かで気が抜けてしまえば、共鳴属性付与レゾナンスエンチャントの発動場所やタイミングがズレてあの攻撃を被弾してしまう可能性は高い。


マナが無くなれば改良した俺の新技を発動すれば良いのだが、そのタイミングがまた難しい。他に注意を避けない事がこれだけ大変だとは思わなかった。




アクアと共に全速力の移動を始めて早一時間が経過した。たったの一時間。それなのにそれが俺にとっては数十間にも感じられた。下の方に見えていた通路を塞いでいた迫り出した青白色の鉱石の壁は地面から垂直に立って並んでおり歪みは無い。それを確認して俺達は下の通過へと降り立つが黒雲鳥ブラッククラウドバード達の追撃は終わらない。最初に確認した様に奴らの集団で放つ極太の雷光は視界の外からも届く程射程が長く、数キロにも及ぶ。その為、地面付近に逃げた所で雷光の射程圏内だ。


当然、アクアの全力で飛翔して逃げて来た俺達の元へと仲間達が追い付いている筈もなく俺は上空を眺める。一向に止む気配の無い攻撃に嫌気を感じながらも、俺は頭の上に土壁を形成して雷光の攻撃を防ぐ。流石に大技を使用しないのであれば、一時間やそっとでマナが空っぽになる事は無いが俺のマナの残量はすでに三割を切っていた。それ以上にアクアのマナの残量は少なく、二割弱しか残っていない。


自力で可能なマナの回復手段を持ち合わせている俺はまだしも自力でマナの回復手段を持ち合わせていないアクアはちょっと厳しそうだ。すぐ後ろの青白色の鉱石が迫り出して天井の様になっている部分に逃げれば俺だけは雷光から逃げられるが、身体の大きなアクアは通る事が出来ない。もしかしたらどこかで四つに分かれている道が統合するかと思っていたが、そんな甘い事は無いみたいだ。


倒木的な感じで道を塞いでた訳ではなく、意図的にこの様な構造にしているのは明確的だ。狭い通路もパーティの連携行動を阻止する目的で作られている。アクアが入るとギリギリ動けない幅……詰まる所、横並びの隊列だと俺達でもほぼ動きは取れない。だが、その道を選ぶメリットは大いにあった。それは俺が一番良く知っている筈だ。上空の大量のモンスターである。


ただ、青白色の鉱石自体は外部からの受ける事によって自らも発する事が可能な為、俺達の仲間は攻撃の渦中なんじゃ……まさか!?地上で発してあの光はモンスターと交戦している時に出ている光だと思ったが……あの光は鉱石から出ている電気の光も含まれていたのか……どうやら大変なのは俺達だけでは無さそうだな。


俺は仲間達が来るまでどうやってこの場を凌ぐか頭を全力で回転させた。


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