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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
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407話 エネルギー補給

尾根枝が俺達を匿いながら三叉の峡谷を進み始めてから約二時間が経過した。尾根枝の肉体の表面には小さな焦げが少しずつこびり付いており、尾根枝も微量ではあるもののダメージを受け続けていた事が窺えた。


やはり、流石の尾根枝と言えども雷による継続ダメージはやばかったか?それに尾根枝の行動限界の時間もかなり迫って来ている。この足場の悪い峡谷では尾根枝でも時速百キロ位しか出せない。しかしながら、俺達を襲って来るモンスターは殆どおらず、モンスターの配置が三つの通路に偏っていた事が分かった。


それに、三つの通路は先に進むにつれて真ん中の通路の方向へと湾曲して来ており、そろそろ三つの通路は繋がり、雷の峡谷も距離を狭めていく。その影響で青白色の鉱石が放つ雷撃の強さも徐々に増して尾根枝の身体を痛めつける。


「あと少しだ。行けそうか?」


俺の尾根枝を心配する声に対して尾根枝は口元を綻ばせて大丈夫の意を返して更に自身のギアを高める様に速度を上げる。本当に無理していないか気になるのだが、ここで無理をしているようならば尾根枝の乱用は今後避けるべきだ。正直尾根枝の身体能力のポテンシャルは高く俺でも把握できていない。その為、こいつの限界や、からげんきを言動のみぇは判断出来ない。


「良い刺激よ」

「は?」

「このピリピリと直接筋肉を刺激する様な電流……中々癖になりそうだわ」


うん……大丈夫そうだ。ただ、モンスターが放つ圧縮された雷撃だけは避けようとしていた事から尾根枝も食らって良い攻撃と食らってはいけない攻撃を判別している様だ。やはり、そこら辺は野生の勘なのだろうか?


事前に尾根枝から聞いていた持続時間はあくまでエネルギーの持続時間の話か?それに前イフリート戦で巨大化した時よりも明らかにデカイ。尾根枝の奴……もう既にステータスカンスト状態かと思っていたが、まだまだ成長していると言うのか?いや、前のあの姿が最大サイズとは限らないし、何とも言えない。





しばらく尾根枝に乗っていると三本の通路は繋がって俺達は尾根枝の手から地面に飛び降りる。尾根枝も三メートルほどの大きさに戻って一息ついたが、尾根枝の全身の筋肉を見ると俺達を運ぶ前よりも少しバルプアップしており、全体的に大きくなっている様に見える。その上、全身の筋肉のカットが強く刻まれており、尾根枝の肉体はまるで減量末期のボディビルダーの様だ。


恐らく、あの状態で二時間も活動を続けた弊害だろうな。この前の百人分の食事のエネルギーがまだ残っているとは思えないし、どこかで尾根枝に食事を摂らせないとマズイな。


「どうやらここには罠は無いみたいだから早く先を目指しましょう?」


俺達の心配を他所に先を見据える尾根枝に対して俺は待ったをかける。


「重光、土壁を形成してくれ密度はかなり厚めで、強度も強めだ」

「分かったわ」


俺の指示通り重光はマナを大量に練りこんだ土壁を俺達全員を覆う様にドーム状に形成させる。そして、俺はマジックバッグの中から大量の食料を取り出す。勿論尾根枝用に出すのは頭突き亀(ヘッドバッドトータス)などの調理してもあまり美味いとは言えない食材達だ。それでも尾根枝にとっては腹に入れば良いらしく胃袋と頭、食道などの食事に関する部分を巨大化させ、掃除機の様に体内に食料を吸い込んでいく。


その速度は異常に早く、俺達が肉を焼くのが間に合わない位だ。俺達がオークの肉一人前を食べるのにかかる時間で尾根枝は数十人分の食事を摂ることが可能だ。


食事を摂っている時の尾根枝は体の一部の大きさを弄っている為エイリアンの様な見た目になっているが俺は気にしない。尾根枝曰く、一度にあまり食い過ぎると大量のエネルギーを摂取出来るが、その分胃袋などの器官を常に大きくしておく必要が出て来る為、エネルギー消費も増え、効率はあまり良くないのだと言う。その為、食事の量は百人前程度で抑えている様だ。


俺達にしてみればその百人前でも化け物レベルなんだけどな。


土壁の防護壁の中で数十分が経過し、俺達は食事を終える。良く横で俺達が美味そうな物食ってて欲しがらない物だ。普通なら一口位欲しがると思うんだけどな……まぁ、それだけ尾根枝にとっては食への関心が薄いのだろう。もしも、尾根枝の食事への関心が強かったとしたならば、俺達は困っていた。これは残飯処理係としても助かる。正直あの不味い食材達は俺達では廃棄処分確定だ。このマジックバッグの保存機能が無ければな。


「成る程な……今はこの土壁でも十分に雷撃を防げそうだな」


俺は手甲を外して若干暖かくなっている土壁に触れて呟く。俺達は百度程度の温度では火傷を負わなくなっている。だけど、それで熱さなどは感じられるのか?と言う疑問は湧くだろう。その答えは熱さは感じるが痛みは感じないが正しい答えだ。発汗作用も、細胞内部自体の温度がキープされている為、自身の限界を超えた気温の中にいない限りはあまり変わらない。ただ、痛みを感じないだけで不快感は感じるし不快感を感じる気温であらば発汗作用も増幅する。


地球でも痛くはない温度でも差は感じる事が出来るだろう。それと同じ事だ。十度と三十度が同じ事と言う人は殆どいないだろう。それと同じで俺達も温度の差は感じる事が出来る。ただ、その限界が大きくなったと言う事だろうな。


俺は再び手甲を嵌めて再び二層式の鎧をしっかりと着込んで重光に土壁を解除する様に指示を出した。重光が魔法を解いた瞬間土壁は壊れ、土壁の表面を伝っていた電気が行き場を失い、周囲に散る。


これ、寝る時や休憩する時結構大変そうだな。俺はそんな事を思いながら正面の階層の狭間を表す虹色の膜とその先に薄っすらと見える黒色の世界を眺める。八十二階層……八十一階層でこれなんだからこの先どうなるのやら……。


俺は轟雷エリアの奥地を想像して少し寒気がした。




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