表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
18章 轟雷エリア
408/544

404話 避雷針

雷雲の伝手(サンダークラウド)は青色の尾を引きながら地面を這う様にジグザグと不規則な動きを入れ込みながら駆ける。あの細い後ろ足から放たれているとは思えない程雷雲の伝手(サンダークラウド)のステップは軽やかで俺達を翻弄する様な動きをしている。だが、それに合わせて添島が力を抜いた状態で大剣を構えて走る。


この際添島の大剣はぶらりと手からぶら下がってはいるものの添島の身体に遅れて空中で風を切って進む。添島の視線は常に雷雲の伝手(サンダークラウド)に向いており雷雲の伝手(サンダークラウド)が左に行けば左に、右に行けば右へと添島が標的を逃がす事は無い。相手の速度もかなりの物だが、それ以上に添島の方が速度も速く力強く大地を蹴っている。


添島は走りながら大剣の持ち手を右手に変えて左手の指で素早く俺達にサインを出した。


《右から左へのフェイントを出して右側へ攻撃》


その指示を理解した俺達はすぐさま添島の援護に入る姿勢を整えた。重光はマッドショットを詠唱し、雷雲の伝手(サンダークラウド)の行く先を遮る。重光の周囲に形成された手のひら程の大きさの水を含んだ土の塊は勢いよく雷雲の伝手(サンダークラウド)目掛けて飛翔する。


相手はそれに気が付いて回避しようとするが、地面に付いた泥で出来た土の塊は地面にぶつかるや否や円状に飛散し、地面を汚す。その地面を踏むと滑るのは勿論なのだが、電気を扱う相手にはそれ以上の効果を発揮する。雷雲の伝手(サンダークラウド)の体表から出る電気が重光が放つ泥球に触れる度に放電の形を変え、泥球が破裂した部分を黒く焼け焦がす。重光が放つ泥球は相手の電気の制御を難しくさせる。実際に雷雲の伝手(サンダークラウド)は添島に対して何発か高電圧の光線を放っているが、その光線は直線状に飛ばなかった影響で添島に避けられている。


影武者シャドウウォーリア


雷雲の伝手(サンダークラウド)が泥を避けて右に飛んで出来た僅かな隙を添島は見逃さない。それでも攻撃を避けられてしまう可能性は否定出来ない為俺の後ろで亜蓮は準備していたナイフを一本取り出して紫色のエネルギーを纏わせて軽く手首のスナップを利かせて投擲した。


亜蓮の手から放たれたナイフは添島の左側から弧を描く様に飛んでいき、添島の正面でステップを踏んでいた雷雲の伝手(サンダークラウド)の注意を削ぐ。だが、雷雲の伝手(サンダークラウド)を直接大剣で攻撃する事はおすすめしない。奴の肉体には強烈な電気が纏われており、触れるだけで高電圧の電気が触れた対象に向かって一気に流れ込んでしまう。そうなってしまえば、相手の攻撃を出来るだけ食らわない立ち回りをした意味は無い。


「共鳴真空波」


添島の静かな低い声がその場に響き、それと同時に雷雲の伝手(サンダークラウド)の肉体が真横に吹き飛ぶ。しかし、雷雲の伝手(サンダークラウド)も最後の抵抗なのか、全身の毛を逆立てて青色に発光させていた。その直後、雷雲の伝手(サンダークラウド)から強烈な電撃が周囲にゴロゴロと言う雷鳴と共に放たれ、視界が青色に覆われる。俺達の身体からは炎が激しく立ち昇り黒煙が周囲に舞うが、俺達の肉体自身には大した損害は無い。


やはり電気と言う事だけあって攻撃範囲は馬鹿にならないな。黒煙が晴れた先……俺達の視線の先には尾根枝のパンチを頭から食らって角をへし折られ、地面に叩きつけられた雷雲の伝手(サンダークラウド)の姿があった。尾根枝の肉体には青色の稲妻がビリビリと伝っているが、尾根枝は表情一つ変えない。


あいつ……防御力高いのは知ってたけどここまで強いと逆に心配になってくるな。尾根枝の肉体は天然の鎧みたいだ。奴の場合裸でも鎧を身にまとっているのと同じと考えて良いだろう。本当に無理はさせたくないが、奴の限界も気になるところだな。俺は雷雲の伝手(サンダークラウド)の死骸の元へと近づき、手を近づける。まだ、雷雲の伝手(サンダークラウド)の死骸には触れていないにも関わらず、俺の手甲とモンスターの死骸の間には放電現象が発現しており、これだけで相手の身体に蓄えられている電気の量や電圧が如何に高かったかが分かる。


とは言え死骸を回収する為には奴の身体に触れる事はやむを得ない。死して尚強烈な電気を放ち続ける死骸に俺は手を翳してモンスターの死骸をマジックバッグに収納した。相手の最後の放電攻撃で防具の表面には小さな焦げ跡が全身に刻まれてしまった。この攻撃をあと数十回……いや、数百回は耐えられると信じたいが食らってしまうと絶縁性能が低下や素材の劣化が起こりそうだ。


鎧に付着した煤を手で払いながら俺達は電気で敵を感知するモンスターの攻撃を避ける方法を考える。周囲には常に電気が迸っている為、その中からいきなり飛んで来る雷撃を瞬時に見抜いて判断する事は難しい。だが、どの方向からそれが飛んでくるのかさえ分かっていれば、事前に戦闘を回避できる可能性は高い。


「常に武器を抜刀しておこう。そうすれば武器が避雷針の役割を果たす。これで敵の位置は事前に察知可能だろう」

「「了解」」


俺の指示を聞いた仲間達は武器を抜刀する。武器の刀身自体は電気を通すが鞘や柄の部分は電気を通さない素材で作られている。その為武器を避雷針に使用した所で俺達がダメージを受ける事はない。


ただし、武器を抜刀したまま移動を行うと言う事は走る姿勢が崩れる為、戦闘移行速度や、敵の察知能力は上昇するが、移動速度が落ちる事を意味している。走っている時に青い稲妻が武器を伝って俺達の身体の後ろへと放たれる為、その見た目が少しカッコいいと思い、厨二心が働いてしまった事はみんなには内緒である。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ