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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
17章 海中洞窟エリア
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398話 間の取り方

アビスを蛇の様な口を大きく開いてニヤリと笑い、全身に纏った水を操作し、俺達を狙うが、そこへ亜蓮が逸らした大質量の水が一直線にアビスの元へと入り込んでアビスは困惑した様子を見せ、一瞬アビスの周囲の水は普通の水へと戻り崩れかける。


「まだだ、お前の相手はまだ俺だ」


亜蓮はまだ紫色のエネルギーを全身に纏っており、それはディレクショナル・リムーバルがまだ発動中の事を示していた。亜蓮のやつ、アビスが放った水流を受ける瞬間にアクアの背中から飛び降りて、体の向きを調節して攻撃をアビスの方向に逸らしやがった。それに、ディレクショナル・リムーバルの攻撃を受けた時に起こる一瞬敵のヘイトが元に戻るクールタイムを利用し、アビスの注意を上手く分散させたのか……それで、もう一度アビスが攻撃をしようとしたタイミングでディレクショナル・リムーバルを発動……こんなのほぼハメ技だな。


ま、この程度ゲーム好きの亜蓮にとっては造作も無いだろうな。俺はそれを確認して、リクィディティエンチャントで空気に流動性を持たせて手を刀の鞘にかけてアビスがいる方向に向けて加速する。


今亜蓮に注意を逸らされているアビスが警戒している対象は俺くらいだ。アビスは忘れている俺達の中でも最も近接戦で相手にしてはいけない二人組をな。


それに、バフをかけるなら今しかない。


「山西!!七重セプタプルだ!」

「了解!七重強化セプタプルアップ 撃防速マルチ!!!」


山西も限界超越がアビス相手にはあまり通用しない事が分かった為、魔法式を事前にある程度詠唱していた様で山西の魔法詠唱は俺達がアビスに到達する前に成功する。


内部属性付与インプレスエンチャント サンダー


アビスの周囲には水が漂っている。その上その水はアビスの思うがままに操れる。それを考えれば今ここで選択すべき技は火属性ではない。ほぼ確実にアビスにダメージを負わせる事が可能な属性は雷属性だ。


バチバチと手元から雷鳴を轟かせながら俺はアビスの周囲にある水との間合いが刀の射程圏内に入ったのを見計らって時間差で左右の刀を引き抜く。一撃目はアビスが水を内側に引っ込めた事によって容易く回避されてしまうが、これも想定圏内である。俺が今すべきは添島と尾根枝がアビスに攻撃を当てるまでの時間を稼ぐ事だ。


その上、あの二人の攻撃の威力を最大限に活かすためには超近距離攻撃をアビスに直接当てる必要がある。少なくとも亜蓮がアビスの水流をそらして、アビス本体に当てた大質量の水……あれが邪魔だ。


だが、アビス本体との間に多量の水があり少し距離が離れているとは言え亜蓮にヘイトを引きつけられている上、身体強化のバフを受けている俺の攻撃を簡単に回避されるとは……こいつ、基本能力値もかなり高いな……。右手の居合い斬りを避けられた俺はもう一本の刀を居合いでは無く、鞘から抜き出した直後に胸に引き寄せる様にして二本の刀を胸の前でクロスさせ、同時にアビス目掛けて鋭い突きを繰り出す。


当然アビス本体には俺の攻撃は届かない。だが、俺の攻撃の射程は刀のリーチだけではない。ただでさえ十分な刀のリーチに加え、雷属性を付与された刀は刀の先から一筋の雷光を放つ。


その雷光は鋭く光の様にアビスを一直線に狙い撃つ。雷は水を伝導する。水を纏っているアビスはこの攻撃を避ける事は難しいだろう。


と俺は思っていた。


だけど、アビスは全身に纏った水を全て捨てた。それと同時にアビスが今まで操っていた水が元の水へと戻り、アビスの身体は宙に浮き、亜蓮の方へと向かっていた水も重力にしたがって落ちる。アビスが捨てた水の中には俺が含ませた電気が通っている為触れると感電してしまう。その為アビスの周囲の水が邪魔でアビスに近づく事が出来ない。


自然落下に任せてしまえば間違いなくアビスは風のバリアの外に出てしまう為、周囲の水を退かす必要がある。


ここは風属性のエンチャントで吹き飛ばすか?


(いや、大丈夫!僕がやる!)


そう俺が思った時頭の中にアクアの声が響きアクアの背中の上に魔法陣が浮かぶ。ああ、そういえばアクアは氷系統の魔法も使えるんだったな。アクアの魔法詠唱が完成するとアクアは口から圧縮された氷の球を飛ばす。


その氷の球がアビスの周りの水に触れると一瞬で氷は凍り、それにアビスも巻き込まれて動きが拘束される。若干蓄積電力は落ちているだろうがまだあの氷には俺の電気が残っている筈だ。その為氷と共に凍らされたアビスに向けて一気に水に含まれていた電気が流れる。


だが、それも一瞬。凍らされた水は粉々に砕け散り、アビスの身体を背中の甲羅から出てきた黒い靄の様な物が覆い、アビスを守っていた。その黒い靄からは紅の不気味な瞳が複数亜蓮を睨んでいた。一応亜蓮の方へとヘイトは向いている様だが、あの靄はいったい何なんだ?


まぁ、良い。媒介を失って自然落下を始めた今のアビスにはあの二人の攻撃をまともに食らうしか選択肢が無いのだからな。


尾根枝は一応、亜蓮のヘイト稼ぎがあるとは言っても保険として姿を消していたのだが、その意味はあまり無かったようだ。


アクアの背中から飛び上がった添島は背中の大剣を颯爽と引き抜いて螺旋状のエネルギーを両手で練って大剣に集中させる。その時の添島は久しぶりに大暴れ出来るという事もあってか、ここ最近では見た事がない程活き活きとしていた。


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