38話 濃霧
「グルルルル!」
何匹目だろうか、、、目の前の固いトサカを持つオオトカゲの攻撃を躱し首元を搔き切る。淡い赤色の血が噴き出し、トカゲは倒れる。キリが無い、、、よし、決めた。
「ちょっと離れてろ!属性付与赤熱 風!」
俺は予備の帯刀していた金属製の刀を取り出し低温加熱する。剣が赤く赤熱し、火花を放つ。そして、風を刀にエンチャントで込めると、、、
(バチバチバチ!)
まるで刀が生きてる様に大きな音を立てながら激しく燃え始める。
「グルルルル!」
「食らえ!爆破刀!」
俺がその状態で刀を振るうと、空気中を刀が爆破音を立てながらオオトカゲを切り裂きオオトカゲは煙を立てながら倒れる。よし。これで分かった。この程度の温度の火なら空気爆発はしない。これなら、、、
「はぁぁぁぁあぁあ!お前ら!俺に続け!」
俺は地面に刀を突き刺し、地面から煙を上げながら駆ける。これなら刀を突き刺した部分の沼地は水分を失い、固まる。そこを進めばかなりのスピードで探索は進むだろう、、、
「四重強化速!」
山西が一つの強化なら一度に四重までかけれる様になり、俺達のスピードを最大限に上げる。
「グルルルル!」
(スッ)
「ガウッ!」
横から沼地にも関わらずオオトカゲが俺達に向かって走って来て亜蓮がナイフで妨害する。しかし、オオトカゲは頭のトサカでナイフで弾き追って来ようとしたが、
「射盾加速」
「ガウ、、、!?」
亜蓮頭でナイフを弾いたオオトカゲの顎を自身のバックラーで殴り火薬の勢いで吹き飛ばす。そして、反対側も、、、
「おらぁ!」
添島が走りながら剣の手元を軸にし、大剣を回転させてオオトカゲの喉元を切り裂く。こうして俺達はオオトカゲの群れから突破した、、、と思ったその時だった。
「キュウウ!」
「!?」
(ズガガガガ!)
俺達の目の前から鷺の様な嘴の長い鳥がその鋭い嘴で俺達を狙い飛んで来たのだ。その鳥の嘴を俺は横に飛んで避け爆破刀の状態で避けながらその鳥の首を狙い刀を返す。
「キィエエエエ!」
その鳥は悲鳴を上げ倒れる。大した強さは持っていない様だ。よし次だ。そう思い、もう一度地面に刀を突き刺した時だった。
(ビギビキビキ)
嫌な音が響き、、、
「あっ、、、」
刀が折れた。まぁ、分かっていた。だから予備の帯刀を使ったのだ。もう次の階層は近い筈だ。先程のだけでもかなりこの階層を猛スピードで突っ切っている。もう少しの辛抱だろう。そう思い俺達は先を急ぐ。そして、、、
「おお、、、やっと着いたか、、、」
目の前には次の階層へ続くと思われる階段を発見した。そして、
「良かった、、、転移碑もある」
転移碑もそこにはしっかりと建っていた。俺達はそこで転移碑を使い一旦拠点へと戻り、しっかりと布団の感触を楽しみながら眠りに着いたのであった。そして、次の日、、、俺達はまた同じ様に転移碑が無かった時の事を考えて食料などを大量に積み込み、二十三階層の入り口の転移碑に転移した。
「ん、、、これは、、、何も見えねえな、、、」
まず最初に入り口から外に出た添島が呟き、それに続き俺達も外を確認する。すると俺達の目の前に広がっていたのは一言で言うなら濃霧。真っ白な世界だった。
(ぐにょ)
そして、地面は二十一階層程では無いがぬかるんでいる。さっきの二十二階層よりかは水を含んでおり、どちらかというと二十一階層に近い感じだ。本当に濃い霧だからはぐれない様に気を付けなくてはいけないな、、、
「出来るだけゆっくり行こう。はぐれたら大変だ」
「「了解」」
「重光?この霧は風魔法で払えないのか?」
もしかしたら霧は風で払えるかと思い重光に尋ねる。
「試してみるわね、、、外旋風!」
俺達が洞窟の水場で使った魔法を重光は唱え俺達を中心に風の渦が外向きに展開される、、、だが、
「ゴホッゴホッ、、、重光、、、ちょっとタンマ、、、」
展開された風は濃霧を巻き込み俺達のいる中心をも巻き込み俺達は大量の水分を含む霧を吸い込む事になった。あと発動出来たとして俺達の周りの霧しか払えないので結局視界は悪いままだから発動した所で意味が無い。中心は風はない筈だが、霧が入って来た理由は気圧の関係だろう。外との気圧の差で霧が入って来てしまった。水の時は大丈夫だったのに、、、粒子が軽くて小さいのか?そこで俺は考えた、、、霧も同じ水だ。乾燥させれば良いのでは、、、と考えたが却下した。今の状態で霧を乾燥させたならば霧は高温の水蒸気となって俺達に襲いかかるだろう。それは勘弁して欲しい。そんなこんなで俺達はこの濃霧の中ゆっくりと進む事にした。凍らせる事も考えたのだが、生憎常に空気中を凍らせると温度が下がり俺達の体力が激しく失われる上に霧が霜となり俺達の身体に付着し、より体温を奪い、行動も鈍くなる。程よい温度、、、つまりはさっきの俺のエンチャントみたいな感じで熱してみたがやっぱり直ぐに水蒸気となってしまう様で俺達が耐えられなかった。そして、そのまま数時間仲間達と声を掛け合いながら進んでいたのだが、いつの間にかはぐれてしまったらしい。声をかけても誰も反応がない。
「添島!山西!亜蓮!重光!」
大声で叫ぶが声が返ってくる事は無い。自動地図を見て現在地を確認する。だが、俺は驚いた、、、この階層だけ地図がぼやけているのだ。恐らくこの地図はGPSの様なものだと今まで認識していたが、違う。視覚情報によるGPSなのだ。洞窟エリアの様に光などで視界情報が補えれば地図には表示されるし、一回確認すれば地図はずっと記述される。だが現在見えるのは自分の場所を示すアイコンだけだ。つまり、、、ジジイが紙にかけた魔法『自動地図』とは所有者の視覚情報を紙に記載してくれる魔法だったのである。確かに今まで自分達が通った地点の少し先も記載されていた、、、そう考えると辻褄が合う、、、だが今はそんな事はどうでも良い。俺は周りを見るが濃霧でどちらが北か南かさえもわからない、今の濃霧でまともに進めるとは思えない。下手に動くと駄目だ、、、とか言うが進むしか無いだろう。転移碑で拠点に戻る事が出来たならまた合流する事もできる筈だ。こうして俺は仲間達とはぐれ、一人で濃霧の中転移碑目指して進む事になったのだった。