37話 低温加熱
「ふぁぁあ、、、よく寝た、、、」
敵地であるとは思えない程間抜けな声が辺りに響く、、、最後は添島が見張りをしていてくれた様で、俺達は無事野宿を終え、マットを植物の上から片付ける。薄く霧がかかっている為仲間とはぐれない様に気を付けたい所だ。そして、俺達は水こそ溜まってないもののぬかるむ泥を踏みしめながら進む。匂いは相変わらず臭いが何処か慣れて来た。そして、俺達は探索を再開する。周りには俺達と同じくらいのサイズのハエトリソウの様な植物が生えており何かを消化している様だ、、、グロいからあまり見ない様にしたい。その時俺は足にチクリとした違和感を感じ足元を見る。
「ひっ、、、」
思わず情けない声が出る。俺の足には俺の血を吸い巨大化したヒルがくっついていた。確かヒルは火を近づけると離れる筈だ、、、だがこのエリアは微かに腐乱した地面からガスが発生し空気中に漂っている。火属性のスキルや魔法は使えないだろう、、、仕方ない、、、
「亜蓮、、、ちょっとナイフを一本俺に貸してくれ、、、属性付与赤熱!」
(バチバチバチ!)
亜蓮からナイフを受け取りナイフから炎が上がらない程度に調節した温度で熱する。するとナイフは煙を上げ赤熱し、空気中のガスに反応し音を立てながら火花を上げ。それを自分の足についてるヒルに近づけるとヒルは俺の足から離れた。
「成功だな、、、」
俺は思い描いていたスキルを発動させ汗を拭う、、、だが、
「このナイフはもう使い物にならねぇな、、、」
添島が俺が持っている、ボロボロになっているナイフを見て言う。そうなのだ。この技はこのエリアで使うとガスと金属が反応を起こし圧倒的に金属を痛める速度を早めてしまうのだ。このスキルを使った状態で剣を振るうとかっこいいかもとか思ったが使ってしまっては終わりだろう。
「ギァァァア!」
「ぐはぁっ!?」
ヒルを取り除く事に集中していた俺は下を見ており上空から飛んでくる何かに気付く事は出来ず顔面に何かの爪が直撃する。
「ぐ、、、」
「大丈夫か、、、また来るぞ、、、集中しろ!」
俺は頰から血を流しながら立ち上がり周りを確認する。そして、
「はぁっ!」
亜蓮がナイフを投擲し、再び飛んで来た何かを撃ち落とす。
俺を襲って来た生物の正体はフクロウの様な生き物だった。霧の外から俺達を狙い攻撃を仕掛けて来たのだ。だが、これで分かった。奴の巣は近くにある。フクロウは直ぐ近くのから俺達を狙い、攻撃を仕掛けて来たのだ。またいつ奴の仲間がくるか分からない。さっさと先を目指すのが賢明か?
(シュッ)
(ブチッ!)
「チッ」
昨日のウツボカズラか、、、俺は思わず舌打ちをし、飛んで来た蔦を刀で断ち切る。そして、一歩一歩確実に戦いながらも俺達はゆっくりと進んで行く。重光にバリアを張って貰うのが安全かと思われるがそれだと移動ができなくなってしまう為、俺達はお互いの背中を合わせ重光のサウンドソナーを使いつつ多方面からの敵の攻撃に対応が出来る体制を築き着実に足を進める。
「ギァァァア!」
「はぁぁあ!」
再び別の方向からフクロウが飛んでくるが山西が槍の先端で足を絡めとり後ろの沼へとフクロウを弾く。濡れたフクロウは白い羽を赤く染め飛び立って逃げる。その時だった、!
(ガンッ!)
目の前からイタチの様な生き物が霧の向こうからこちらに飛び込んでくるが、常に警戒しながら歩く俺達には効くはずもなく、イタチの顎を剣の腹で粉砕し脳震盪を起こさせイタチを気絶させる。全く、、、このエリアが沼地じゃなかったらさっさと強化でもかけて行くんだが、、、
(ガンッ!)
先程のイタチの仲間と思われるモンスターが俺に攻撃を仕掛けてくるが俺にとっては壁にもならず同じように顎の骨を打ち砕く。手には僅かに水掻きもあり、沼でも迅速に走れる身体つきになっている。俺も走りたいが、慎重に獣を倒す。
「グルルルル」
すると俺達の目の前には頭にトサカを持つトカゲのような謎の生き物が現れ、四つん這いで必死に足を回しながら突っ込んでくる。何だ、、、飛びつきか、、、
(カン!)
俺は後ろに下がろうにも仲間が邪魔で後ろに退がれず、刀で応戦するが奴の頭のトサカ部分にふれ、金属音を立てる。奴の頭のトサカは骨?の様なものが表面に露出しており固くなっている。だがただそれ以外はただのオオトカゲである。体は元の世界のコモドドラゴンと同じ位のサイズであり、今の俺達の相手ではなかった。そして、俺達はこういった交戦の末やっと数百メートル進む事に成功するのだった。このままのペースだと俺達はこの階層を突破するのに数日はかかるだろう。俺は頭をフルに回転させながらまだまだ湧いてくる敵と交戦しながら考えるのであった。