35話 悪臭
獣屍鬼を倒した次の日ジジイから新たな装備を受け取り、俺達は転移碑に触れ転移した。
「時に獣王も我が子を谷底へと突き落とすという、、、逆にその谷から自力で這い上がれないのならばそれまでの事じゃったということじゃが、、、まぁ、大丈夫じゃろう、、、」
ジジイは俺達が去った後何か考えに耽る様に何処かへ歩いて行った。
「着いたな、、、行くぞ!」
俺達は二十階層の端の転移碑に転移し、二十一階層に続く階段を下る。その瞬間だった、、、俺達を悪臭が襲ったのは、、、
「!?」
「「くっさ(せぇ)!?」」
二十一階層に出た瞬間下水のような臭いが俺達の鼻を突き抜ける。最悪だ。
「おい、、、安元、、、アレを出せ、、、確かジジイが作った装備の中にアレが有っただろ、、、」
添島が眉を顰め鼻を摘みながら言う。
「そう言えば、、、そんな物もあったな、、、」
そう言いながら俺はマジックバックからジジイが獣屍鬼の皮で作ったガスマスクの様な物を取り出し、皆に配りながら装着する。なるほど、最初このガスマスクが渡された時には何に使うのか分からなかったがこう言う事か、、、ジジイ用意周到過ぎだろ、、、獣屍鬼の皮を使っている事もあり防具にもなると考えたのだがこれをつける事により息苦しさが優ってしまい、行動の支障になると思い使わなかったのだ。それにしても通常は鞣すだけでも時間がかかる皮製品もこんなに早く仕上げるなんて、、、
「う、、、く、臭ぇ、、、」
だが、この階層に入った時よりかは多少匂いが和らいだもののまだ臭う。このガスマスクはフィルターを付けただけの簡易マスクに近い作りをしていたのだ。それだと当然匂いを完全に遮断できる筈も無いだろう。そして、そのガスマスクの頬の部分に窪みがあり、そこには何かの個体が入った小さな容器が挟まっていた。そして、外が臭すぎて分かりにくいが微妙に香草っぽい匂いがする。恐らく匂い消しのつもりだろうが、殆ど役には立っていない。そして、まだ俺達はこのエリアの臭いしか嗅いでいない。何かこの臭いからこのエリアがどんなものかは察したが、勇気を出しエリア内に足を運ぶ。
(ぐちょ、、、)
俺の足にはねとりと気持ち悪い感触が伝わる。やっぱりか、、、他のメンバーもそれぞれこのエリアに足を踏み入れていき顔を上げる。そこには下水の溜まったヘドロの様なくすんだ沼が続いていたのだ。
「はぁ、、、これは流石に萎えるな、、、」
俺達はガスマスク越しに香る悪臭に眉を顰めながら足を進める。
(ぷくぷく、、、)
俺達が沼地に入り、下を確認すると沼地の至るところから空気の泡の様なものが出てきている。だが、泡のサイズからみて敵では無さそうだ。
「グェェエ!」
暫く沼を歩いていると俺が歩いた足元から何かの鳴き声が聞こえ俺は意識を失った。
「安元!」
添島が叫び足元を確認すると土に隠れていたのであろう長さ四メートルはあろうかと言うナマズが全身泥だらけで姿を現し、安元を一口で食べようとヒレを使い安元に覆い被さる様に跳ねる、、、
「おりゃぁぁあ!」
(ビリビリビリ!)
添島が巨大ナマズを斬り裂こうと剣を振るうがその瞬間そのナマズの髭から稲妻が放出される。
「火球、、、っ!?」
水面に雷が伝わるのは流石に不味いと思ったのか重光が咄嗟にファイアボールを放とうとする、、、だが、
(ドーン!)
重光から放たれたファイアボールは膨張し、一瞬で周りの空気を巻き込み爆発した。恐らく地面から出てきたガスが空気中に散らばっており爆発したのだろう。ここでは火属性の攻撃は使えないだろう。
「ゲホッゲホッ、、、」
重光は煙にまかれながら咳き込む。
「おりゃあああ!」
添島は先程の稲妻で電気が武具を伝い気を失いそうになっていたが、ギリギリの所で耐え奴を斬り裂きにナマズを斬り裂きに行く安元と山西は両方気絶していたが、亜蓮は持ち前の速度で感電する範囲から抜け出していた。重光に至っては元々範囲外である。
(ブシャァ!)
添島の刃は見事にナマズの腹を切り裂く。そして、ナマズは倒れた。
「ん?ここは、、、!?」
「お、起きたか、、、意外に早かったな、、、」
俺達は怪我は無くただナマズの電気をくらい意識を暫く手放していたらしい。そして、現在俺の横には腹を裂かれたナマズの姿があった。これは食べれそうだ、、、だが問題はこの匂いをどうにかするかだな、、、果たして洞窟エリアとどちらがマシな飯を食えるのだろうか、、、こちらの方が臭いは臭いものの肉などは多めである。まぁどっちもどっちだな。すると添島が自分の剣を見ながら言った。
「おい、安元、、、お前には特に気をつけて欲しいんだがこのエリアの敵を切るとお前の刀だとマジで直ぐになまくらになるぞ」
添島が言った通りだと俺も思った。刀は剣と比べ直ぐになまくらになる。泥を切った時などは数撃でなまくらになってしまうだろう、、、そして俺達はナマズを回収して進もうとした、、、が、、、
「ぐっ、、、なんだ、、、」
ナマズを回収し足を踏み出そうと考えた時だった。
「!?」
足が地面に沈み始めており、沼の地面から何かが俺の足を掴む。だが、無理矢理足を移動させる。だが、その何かはちぎれ泥となりもう一度手の形を成し、俺の足を掴む。何だこれ、、、めんどくさい。そして、見た目はまるでド◯クエのマドハ◯ドみたいな感じだ。俺達が幾ら進んだところで俺達の沼での移動速度はたかが知れている。俺達はこのエリアの悪臭と嫌な敵、そして動き難さに少しイライラしながら探索を続けるのであった。