28話 魔法制御
また大きな敵、、、
「おっ、、、元の階層に戻ったみたいだな、、、」
「動光」
重光が魔法を唱え光源を確保する。俺達は十八階層を突破した次の日、十九階層に来ていた。そこには水場等も無く、元の十六階層の様な感じだ。だが十六階層と違い道の岩肌が大きく切り立っている。足場が悪い。
「ここを突破すれば次はボス部屋だ、、、気を引き締めていこうぜ」
俺は注意喚起を促しながら進む、、、
「ちょっと待て、、、糸だ、、、蜘蛛がいるな、、、」
添島が手を横に伸ばし、俺達を静止する。俺の目線の先、、、には微かに俺達の光に反射して煌く糸があった。それにしてもよく気付いたな、、、そして、よく見ると複数の場所から糸が伸びて来ている様だ。全体は相当なサイズになるだろう。恐らくこれはあの十六階層で見つけた蜘蛛の物と同じだろう。このまま行くといつか蜘蛛の巣に引っかかりそうな気がする。そう思わせるくらい色んな場所から俺達が今から進もうとする場所には蜘蛛の糸が張り巡らされていた。
「これがあると邪魔だな、、、燃やすか、、、属性、、、いや、やっぱりやめておこう」
俺がエンチャントを唱えようとした時に俺の脳裏にあのムカデ達が温度に反応し、向かって来る光景が浮かび俺はエンチャントを唱えるのをやめた。
「何故エンチャントを唱えるのを止めるんだ?」
亜蓮が疑問の表情で聞いて来る。
「いや、また温度に反応してムカデとかが来たら嫌だなぁ、、、と思ってな、、、」
さてどうしたものか、、、このまま蜘蛛の巣を強行突破するか、ムカデのリスクを負ってもエンチャントを使うか、、、そう考えていた時だった、、、
「私多分今なら火球位なら使えると思う」
重光が発言した。少しずつだが魔法の制御が上達した重光は光源を付けたままでも簡単な攻撃魔法なら使えるかもしれないと考えた。確かにそれなら大丈夫そうだ。少し遠くにある蜘蛛の糸目掛けてファイアボールを放ってくれればムカデ達も俺達とは関係ない所へと向かうだろう。
「分かった。重光頼んだ、、、できるだけ遠くの蜘蛛の糸を狙ってくれ」
「了解、、、火球」
(ボワ、、、)
一瞬光源が歪みはしたものの重光の光は消える事無くファイアボールを詠唱する事に成功した。そして、ファイアボールは遠くの蜘蛛の糸へと命中し、炎が上がる。そして、
(ドドドドドドドド!)
地面から音がする、、、やっぱりムカデが来た。だがなんだか音が少し違う気がする。そして、僅かに地面も揺れている、、、そして、
(ガチン!)
ムカデが顎をかち合わせる、、、そして
「キィィィィイ!」
地面から甲高い音を出しながら巨大なミミズが現れ空中から落ちて来た巨大蜘蛛ごと一口で飲み込み、再び地面に戻って行った。一体なんだったんだ、、、?そしてあの巨大ミミズ、、、十八階層にいた巨大なモンスターと大きさはあまり変わらない。だが、水場で無いだけにまだこちらの方が戦闘はし易い気がする。蜘蛛は思った以上に呆気なかったが、さっきのミミズが通った場所の岩が破壊され、通りやすくなっていた。やっぱりミミズは地面を耕してくれるらしい。それではあのミミズが耕してくれた道を進むとしますか、、、と言う訳で俺達はそこを進む。
「ギィィィィイ!」
すると暫く進んだ所で地屍鬼達が俺達の目の前で大量に道を塞いでいた。地屍鬼達が吠え、重光の魔法が乱れる、、、が何とか魔法を制御し、光を消さずに耐える事に成功する。やはり、重光の魔法制御力は格段に上がっている。一つ前の階層での並立制御が大分効いているようだ。
「ギィィィィイ!」
「来るぞ!」
地屍鬼達が一斉に走り出し、俺達を狙う。俺達も勿論反撃の体勢を築く、、、その時だった。
(ドドドドドドドド)
再び地面が音と共に揺れ始めた。おかしいな、、、今回は温度が関係する行為はしていない筈だ、、、そう考えていると、
「キィィィィイ!」
また先程の巨大ミミズだ。
「なっ!?」
俺達の反応を他所にそのミミズは猛スピードで地屍鬼達を吹き飛ばしながら俺達の前方へと進む。俺達は流石にあのミミズを確認する。体にはいくつもの傷が付いており何処か様子が変だった。まるで何かから逃げているような、、、その時だった。
(ドーン!)
「何だ!?」
俺達の後ろで大きな音がして振り返る。
「キュイー!」
地面が大きな音を立てながら穴が空き、そこから銃弾のように物凄いスピードで何かが甲高い鳴き声を上げながら飛び出し、、、そのままその何かは巨大ミミズの方へと突っ込んで行った。
(ガァァアン!)
その何かの爪のような物が巨大なミミズの胴体、、、とは言っても全身が胴体に見えるのだが、、、ミミズの身体に突き刺さったように見えた。だが、
「キィィィィイ!」
そのモンスターの爪が当たった場所には岩がくっついており、ミミズはそれで身体を守る。ミミズはそのまま暴れるがそれに攻撃をした何かは華麗に避け、、、少し離れた位置から腕突き出した。すふとその何かから岩の塊が伸びていき、ミミズの胴体に突き刺さる。
「キィィィィイ!」
ミミズが悲鳴らしきものを上げ、このすきそれに岩の塊を突き刺したモンスターの姿を確認する。そこにはモグラがいた。俺達と同じ位のサイズのモグラだ。特に変わった点はあまり無いだろう。だが、全身に茶色い岩が付着している。そして、ミミズとそのモグラとの対決はほぼケ決着はついていた。ミミズは次第に弱っていき、倒れた。そして最後にモグラは、俺たちの方を向き、
「キュイー!」
この獲物は自分のだと言わん限りに威嚇をしてきた。だが獲物常々に俺達は敵対するつもりはないのだ。さっさと大人しくモグラの横を通る。モグラは鼻をヒクヒクさせながらも俺達に敵意が無いのを感じたのかミミズの死体の方をクンクンと嗅ぎ始め、ミミズの肉を食し始めた。それを尻目に俺達はその場を抜けたのだった。そして、もうそろそろ二十階層が見えてくる!そんな時だった。
「キュイー!」
何故かモグラはここにも出た。もしかしたらここら辺一帯はこのモグラの縄張りなのかもしれない。そしてそのモグラは、俺達の方を向き鼻をヒクヒクしている。そして、
「キュイー!」
俺達に向かって岩が盛り上がる攻撃を仕掛けて来た。
「!?」
俺達はそれを避ける、、、だが
(バリン!)
「ぐはっ、、、」
モグラは盛り上がらせた岩を腕で貫きながら俺を襲う。俺はそれをくらい、吹き飛ばされる、、、速い、、、!?そして、俺は汗のかいた額に触れる、、、
「血、、、?」
そう、俺の頭からは薄く自分の血が滲んでいた。モグラ、、、中々強敵のようで、奴はここを通してはくれないようだ。こうして俺達は謎のモンスターの縄張り争いに巻き込まれたのであった。