2話 迷宮の幕開け
またペーストとコピー間違えて全消しました(泣)
「ここはどこだ……」
気がつくと俺は仰向けで見知らぬ天井を見ていた。その天井は高く、どこかの体育館かと思う程だ。
俺はガンガンと痛む頭を押さえながら周囲を見渡して状況を確認する。俺はともかく、他の友達がどうなっているのかは分からない。自分の安否は確認出来たのだから、他の友達の安否を確認しなければ。
正直この状況は訳が分からない。
だがそれが逆に自分を冷静にさせていた。先ずは友達を探さないと……。
「みんなは、無事か? ……ん?」
俺が周りを見渡して仲間を探していると目の前には年老いた身体とは思えないほど引き締まった身体で白くて長い髭でロン毛っぽい白髪を一ヶ所で纏めている変なジジイがにやけながら立っていた。
自分の安否は確認出来たと思っていたのだが、やはり、俺は死んでいたのか……?となるとこの白髪のジジイは神様なのだろうか……とか考えているとその変なジジイが口を開いた。
こんな状況で少し場違いかもしれないが、もし、俺が死んでしまったと言うのならばこれは俗に言う異世界転生の流れだ。冒険の書でもくれるのかと少しワクワクしていると
「おお、やっと気付いたか」
ジジイは俺が目を開いて意識がはっきりしだしたのを確認したのか白髪のジジイは異世界転生定番のセリフを話す。まだだこの続きがあるはずだ……。
「わしの事は全員起きてから全員に話すわい。今起きておるのはお主のみじゃから何もする事はないのぉ……」
ジジイは後ろを振り返りながら言葉を濁し、ゆっくりとした口調で話す。ジジイが振り向いた方向には添島達が寝転んでいた。
それで、俺は理解する。なるほど勇者召喚とかで全員転生パターンか、それにしても神の世界にしては殺伐とした雰囲気だ。どう周りを見渡しても一切飾り気の無い洞窟にしか見えないのだが、神の世界って何も無い白い空間とか言われてるし、こんな物なのだろう。
周りを見渡しているとジジイと目が合った。何か聞ける事は聞こうと思ったがついつい何時もの癖でふと気になったどうでも良いであろう事を言ってしまう。
しかし、転生する前……つまり、神様と別れる前に神様とは出来るだけ話しておきたかった。神の姿は常に一定に保たれているとか色々説がある為俺はこの世界の神の場合姿形は一定なのか?と純粋な疑問を抱いた。
「じゃあ、爺さん一つ聞いて良いか?」
「なんじゃ?」
「その髭剃れよ」
他にも聞くべき事は合っただろうが、どうしても気になってしまったのだ。これは仕方がない事なのだ。真理を追求するのは人間の貞と言うものだろう。
あの長さは、サンタクロース並みだ。どう見ても邪魔にしか見えないし地味にフサフサ当たってくすぐったい。キャラ作りか?
「お、お主!?なかなかシビアな所をついてくるのぉ……嫌じゃ、嫌じゃ!絶対に嫌じゃ!この髭はチャームポイントなのじゃぁ~」
するとジジイはなんか勝手にものすごく動揺していた。お茶目にヒゲを触りながら剃る事を拒絶する辺りヒゲは剃れないのか?まず質問の答えになってない。このジジイ意外にもガードが固い。それとも単に神様的なキャラ作りか……?
まぁ、どちらにしても見た目のキャラは守れたが、人格のキャラは既に崩壊しているのは確かだ。
それにしても筋骨悠々としたジジイが駄々こねてる姿は本当に気持ち悪い……あと全然シビアじゃないと思う。もうこいつの名前知らないけど面倒くさいしこれで良いか……。
「子供かよ、じゃあ名前は髭で良いな」
確定した。こいつの名前は今日から髭だ。すると少しうな垂れた様子でジジイが話す。
「お、こうしてるうちにも仲間が起きて来た様じゃぞ」
お、おう、ノーコメントかよ。ジジイは俺が付けた名前を完全にスルーして、話の方向性を変えた。やはり、このジジイガードが固い。
しかも立ち直りがめちゃくちゃ早い、あれは演技か……?いや、そうじゃないと本当に気持ち悪い、そう思っておこう。と考えていたら後ろから低い声が聞こえて来た。
「おう、安元、元気そうじゃねえか」
後ろを振り返ると若干声に怒気を含んだゴリラが立っていた。ああ流石ゴリラだこんな状況でもピンピンしてやがる。
「お前こそピンピンしてんじゃねえか♪」
ここで得意の空気を読まない俺の攻撃。
「とんだ事に巻き込んでくれたな、おい」
添島にゼロのダメージ。
添島は怒り状態になった。
添島が怒気を含んだ声で俺の肩を掴みながら言った。どこが冷静なんだか……正直誘ったのは俺だが開けたのは添島である。
「開けたのお前じゃん」
ふと呟くと添島も俺が揶揄っている事に気が付いたのだろう。若干ショートコントの様になりつつ半笑いでニヤニヤしながら俺の肩を叩き、言った。
「誘ったのはお前じゃねーか」
本当に良い友人だと思っていたらまた近くで聞き覚えのある声が聞こえた。
「相変わらず……起きて早々騒がしいわね、少しは静かに出来ないのかしら」
と声が聞こえたと思うと足に痛みが走った。
「痛い、痛いってー」
ちょ、貴女はいつからお姫様ですか……?というよりただの暴力女である。添島とは違ってコイツの場合ガチモードだ。やっぱりコイツは何かと苦手だ。とか考えつつ添島達とたわむれていると他のみんなも起きてきたようだ。
「……」
あ、なんか凄い空気になってる……。周囲はどうやら俺達待ちだったららしく、ジト目で俺達を眺めていた。すまんな空気読まなくて……だが痛いものは痛い。
「あーそろそろ良いかのぉ……」
ジジイが困った顔で口を開いた。すると山西がキッって感じでジジイを睨んだ。おい、完全に八つ当たりだろ。ジジイは悪く無い……というより良く考えるとこれはどういう状況なのだろうか。
「周りを良く見るのじゃ。」
ジジイは、疲れたようにそう言った。え、本当にここ何処だ?
「えー!ここはどこなんだー!?(なのよー)」
取り敢えず、定番のセリフ叫んでみたけど。うん、マジで何処だ?
「気づくの遅ぇよ」
亜蓮がボソッとつまらなそうな顔で呟いた。いや、このやり取りしてたら忘れるものだろ。
「まず、お主らは今とても驚いていると思うんじゃが落ち着いてくれ」
ジジイがオロオロしながら咳払いをするが、最初あんたの方が動揺してたからな。
それと、不思議とさっきの緊張感の無いやり取りのせいで現実味が足りないのか俺は今置かれている状況よりもジジイが気になる。と言うよりこの状況をまだ理解出来ていないから現実逃避に近い感じか?
「わしはな昔お主らと同じ様に隠宮高等学校の扉を開けてここに来たのじゃ」
急になんかジジイが懐かしそうな顔をして語り始めた……ん?ちょっと待てよ。このジジイめ……こいつも俺の思考と同じであの扉に入ろうとしたのか……?そこで俺は気がつく。このジジイ神様なんかじゃねえ。ただの馬鹿だ。深読みして損したかもしれない。
どういう思考してんだ、まぁ俺が言えた事じゃないが……と言うか早くここが何処なのか教えてくれよ。
「帰る方法は有るのですか?」
重光が不安そうにジジイに尋ねる。おふ……場所知る以前にそれ聞いちゃう?まぁ帰れるに越した事は無いだろうがちょっとワクワクしてたんだよな、何が起こるかわからないってワクワクする。
「見ての通りまだワシも帰れてないのじゃ」
ジジイが態とらしくそう言った。あ、こいつ何か隠してるな……演技下手だ。
「そして、これは紛れもなく現実であり空想なんかでは無い」
真面目なトーンでジジイが言い放ったがどう見てもさっきのを誤魔化しているようにしか見えない。
だからここはどこなの?くそ、知りたい答えが知れない事にむず痒くなってきた。ああ、腹減ったな。そう言えば俺達は何時間位眠っていたんだろうか……。それに、この重い空気に耐え切れなくなった俺はジジイと同じ作戦に出る。
「ところで腹減らねえ?」
こんな見えない会話よりもまずは飯だ腹が減ってはなんちゃらだ。難しい会話は苦手だ。これで話は確実にそらせる筈だ。
と言うかまず食料が有るのだろうか?
「人の話を聞けぇ、ボケェ!!」
ここで定番の山西劇場開幕だ。山西が唾を散らしながら俺の頭を拳でどつく。あーやっぱり来た。別に良いだろ。腹へったんだから。ボケとかないだろ。
「ボケとはなんだ」
「ボケじゃねえか」
なんだこの会話……。返すのも面倒臭い。
「まぁ二人とも落ち着いて……」
亜蓮よ。俺は落ち着いているぞ。落ち着いていないのはこの女だけだ。多分。
「亜蓮は黙っといて!」
半分キレた様子で山西が亜蓮に怒る。いやいやお前が先ず黙れよ。亜蓮が本当に残念なキャラになっていきそうで怖い。いやもうその部類か……。
(ゴホン)
この空気を変えるかの様にジジイが咳払いをした。俺達のお陰?で少し重かった空気が軽くなった気がしたが、多分それも気のせいだろう。
「えーと話を続けるぞい」
俺達が口を挟む前にジジイは話を続けた。
「一つ言って置くとここは危険じゃ。まぁ何が危険かは後で分かるじゃろうて」
いや、今教えてくれよ。何?そのサプライズ的なの。
「まぁ、元の世界で言う『迷宮』って奴かのお……」
え、何だよそれ、ゲームとかで良く有るやつか?モンスターとか出て来て闘ったりする奴か?まず元の世界ってことはここは世界が違うのか……?よく分からん。ちゃんと説明してくれ。
「迷宮って何?」
「あのー貴方の事なんて呼んだら良いですか?」
重光が俺の発言を遮るように発言した。おい、スルーかよ。そして重光さんさっきまでめっちゃ不安そうな雰囲気出してたのに何?あ、これ現実逃避だわ不安が一周回って受け入れ始めているダメなやつだこれ。
ああ名前?あのジジイなら髭でいいだろ。俺はこのクソネームを全員に浸透させようと思って髭を撃推しする。
「ああ、髭で良いってさ」
「まぁ、髭って、呼んでくれても良いぞっハッハッハ!」
そしたら、ジジイは急に上機嫌になって笑い始めた。ああ、このジジイ自慢の髭をあだ名にされて嬉しいのか?とんだ変態だな。あ、添島の目が冷たい。あれは……。
(大丈夫かよあの爺さん)
みたいな事考えてそうな顔だな……。
「まあ、つまりじゃ元の世界には戻れないと言う事じゃ、すまんのう」
だが、その直後に表情を一変させてジジイが本当に申し訳なさそうな顔で頭を下げた。でもさっき何か知ってそうな顔してたよな……何なんだこのジジイは……どうも何か試した事があるみたいだ。しかし、俺に分かる事でもないので考えてないことにする。
「じゃあ、私達はどうやって元の世界に戻ればいいのー!うわぁぁん!」
重光が泣き始めた。え、さっき現実受け入れたんじゃなかったの?やっぱり現実わかってるな……
さっきのは無理矢理悲しい感情を抑えようとしてたのか……慰めるか……。
ちょっと格好つけてみるか……解決法がある訳じゃないけど俺はそっと重光の肩に手を置きこう言った。
「泣くな!自分達で見つけていけば良いだろう!」
決まった!
「うん」
するとジジイがまた態とらしく泣き真似をし始めた。
「グフグフゥこれが仲間の友情!?ゥゥゥ」
おい、台無しだよ……気持ち悪い。本当に何がしたいんだ?このジジイは……。
「この爺さんマジで大丈夫かよ……あと泣き方キモいな……」
添島が呟いた。おい、完全に声漏れてるぞ。
なんかよく分からないけど何とかなるか……。
「よぉ~し!出発だ!」
「お、おう!」
どこに俺達は向かっているのか分からないがなんか出発した。
「どこへだよ……やっぱりこいつバカだ」
だから声漏れてるって……こうして良く分からないジジイと俺達は会い全然何も分からない中どこに向かうかも分からないがスタートを切った。
ーーどこかでこの出来事を察知した人物がいた。
その人物はこの会話を聞いて部が悪そうな顔で叫ぶ。周囲の人物がその声の持ち主を茶化す様に揶揄うがその人物は何か思う事があったのか顎に手を当てて悩んでいた。
「フンッ!ジジイめ、今度は死なすんじゃねえぞ……俺の二の舞はもう見たくねぇ」
その人物は一言だけ愚痴の様に呟いて目的地を目指した。
ジジイにもちゃんと名前はあります。