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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
14章 天空島エリア
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294話 失策は活躍次第でどうとでもなる

アークアンゲロスの策と俺の策どちらが勝つかと言う誰も勝負だと思っていない勝負に圧倒的敗北を記した俺はショボンと少し落ち込む。


指揮官が各自で向かい撃てって言ったらもう指揮官要らないじゃないか。まず、俺って指揮官だっけ?


アークアンゲロスが上空からキュクロプスの頭を貫いた青いレーザーを直線状に照射しながら空中から槍を構えて俺に迫る。


四つん這いの姿勢で大地をかけて初撃は回避したもののアークアンゲロスは根強く逃走する俺をレーザーで追尾する。


その逃走する俺の視線上では既にアンゲロスが槍を引いており、突きの姿勢に入っていた。


レゾナンスエンチャントって事前に設置していなくても発動出来るんだぜ?


ドンッ!!!


マナの導火線を正面にいるアンゲロスの頭に纏わりつかせる様に張り付けて一気にマナを送り込んでアンゲロスの頭を破壊する。


アンゲロスの黄金の兜は煤に塗れ、ひび割れた状態で煙を上げ、アンゲロスの肉体は動力を失った様に真後ろに転倒する。やはり、アンゲロスはモンスターの部類だ。身体を操作する頭が破壊されれば死亡する。


後ろから前傾姿勢のまま空中を飛翔してレーザーで地面を焼き切りながらこちらへと向かって来るアークアンゲロスの飛行速度はアクアにも匹敵する速度だ。


何もしなければ、直ぐに追いつかれてしまうだろう。そう。何もしなければだ。


正面から飛びかかってくる複数体のアンゲロス達は正直大した事は無い。厄介なのはアークアンゲロスと奇襲班とは別に俺達を追尾していた後続班の部隊だ。


後続班にも一体アークアンゲロスがおり、追い付かれると二体のアークアンゲロスを相手にする事となる。


アークアンゲロスにアクアを向かわせるって言う案もあるが、図体が大きなアクアは人型サイズのアークアンゲロスと戦うのは不利だ。アークアンゲロスの機動力はアクア並みにある上に全身を拘束されてもレーザーと言う攻撃手段を持ち合わせる。


アクアの得意な尻尾での拘束攻撃などは活かせない。その為アクアは他のアンゲロス達の連携を崩させる遊撃隊の役割を単騎で割り当てている。


二体のアークアンゲロスが合流と言う最悪の事態。それだけは避けたい為、アークアンゲロスの処理は最優先事項である。レーザーの威力はあの硬いキュクロプスの頭を傷が付いていたとは言え、貫通する程の威力を持つ。


正直、今の俺達の戦闘力を持ち合わせても馬鹿には出来ない威力だ。ただ、射程がかなり短く、キュクロプスの頭をゼロ距離射撃で貫通して多少余白が出来る程度しかない。


俺に対するレーザー攻撃も低空飛行状態で放っている為、射程は四から五メートル程度と俺は予測している。


しかも、レーザー攻撃を放つ際に眩しい光を放つ為、隠密射撃には適していない。尚且つ隠れる場所が無いこの天空島エリアでは俺達に気付かれずにレーザーを当てる事など不可能だ。当たればかなりの痛手だが、食らわなければどうって事は無いのだ。


ただ、照射時間には制限は無さそうなので、逃げ続けるだけだと機動力の差で俺が負ける。


しかし、俺を狙うアークアンゲロスが唐突に明後日の方向を向いて頭に半透明のナイフを受けて仰け反ってレーザーを空に向かって発射する。


その状態で亜蓮が魔導射出機構マジックインジェクションで宙を切るレーザーを回避して両手にククリソードを構えてアークアンゲロス頭の黄金の兜に向かって引っ掛ける様に突き刺して自分の身体の位置を上部に移動させて、引き抜き両腕を振りかぶってブスリと突き刺した。


フロストバイトベビーモスの素材とリヴァイアサンの鱗で作られた透き通る青色をしたナイフが抵抗も無く、アークアンゲロスの黄金の兜に突き刺さり、鏡の様に黄金の色を反射して刃にその色を写す。


亜蓮はそのままの姿勢でアークアンゲロスの頭を地面に叩きつける様に跳び、地に着地する。


アークアンゲロスの首に亜蓮の全体重がかかり、耐え切れなくなったアークアンゲロスの身体は頭と亜蓮を軸にして回転し、亜蓮は背負い投げの要領でアークアンゲロスをククリソードで引っ掛けたまま地面に叩きつけた。


頭を綺麗に貫かれたアークアンゲロスは既に息絶えており、ピクリとも動かない。


「一丁終わりぃ!」


亜蓮は間違いなく対人戦の戦闘力はトップクラスに高い。亜蓮は人型キラーでもあり、単体キラーでもあるのだ。


しなやかな体術に、トリッキーな戦闘と確実なヘイト稼ぎは相手の少しの隙も見逃さない。


既に間近に迫っていた後続部隊も既に添島と重光が向かっている。


俺のチームの二大火力要員が向かった訳だ。結末は何と無く見えている。俺は後続部隊の大天使達にご愁傷様ですと心の中で言葉をかけつつも残った指揮官を失ってあたふたしているアンゲロスのみの奇襲部隊を殲滅する。


アンゲロス達の数はそう多くは無い。今までの戦闘を見てから山西の事を弱者だと思ったのだろうか?アンゲロス達は俺を狙わずにほぼ同時に山西の方へと飛んで行った。


山西の方へ向かった中で一体のアンゲロスは翼をアクアに咥えられて、尻尾で俺の方へと吹き飛ばされる。


アクアのしなりを効かせた尻尾の一撃で既にアンゲロスの黄金の鎧にヒビが入って悲惨な姿になっているのだが、トドメとばかりに俺は両手を飛んでくるアンゲロスの方へと向けて爆炎を照射する。


俺の手から眩い光が発生してアンゲロスの身体を炎で包む。金属の鎧が壊れる様な音がしてアンゲロスの身体のパーツはバラバラになって地面に転がる。


頭も破壊した様でアンゲロスは動きもしなかった。

後は二人に任せた後続部隊と山西の方へ向かったアンゲロスだけど……問題ないか。


アンゲロスの放った槍の突きを両刃槍の刃で受け止めて相手の槍を切断して、そのまま反対側の刃でまとめて二体のアンゲロスを葬った山西を見て俺は一息つく。


山西の身体は二重にぶれており、レイテントアラウザルを使っているのが見て取れた。


左右からの攻撃も、上下両方に刃が付いている両刃槍にとってはいなす事は容易い事だ。カウンターを主体に一撃でアンゲロスを全て葬った山西は二重にぶれた身体を元に戻して息を切らす。


「はぁ……はぁ……やっぱりあの技はある意味身体に来るわね」


案外余裕かと思っていたが、そうでも無かったみたいだ。それは山西のレイテントアラウザルの習得がまだ未熟な事を示していた。


一方添島達の方を見ると既に後続部隊を壊滅させていた。


大地が黒焦げになって一部の地面とアンゲロスの鎧が溶解している事から何の魔法を使ったのかは分かったけど。相変わらずエゲツない威力だ。途中で熱気を感じたのはそのせいで間違い無いだろう。


何だかんだで複数の敵との戦闘で疲れた俺達は戦闘の痕跡がある場所で休む訳にも行かず、野営をしようとした場所から数キロ離れた場所に移動してそこで野営をする事になった。


そこにアンゲロス達が再び襲って来る事は無かった。




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