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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
14章 天空島エリア
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287話 不可視の刃

自分の胸の高さぐらいまで長く生え揃った花畑の花々を手で掻き分けながら道行く道を進む。


正しい道と言う道が無いので、俺達は花を掻き分けて適当に進む他無いのだが、何となく歩くたびに自分達が通る場所の花を踏み潰して進んでいる為に何となく罪悪感があり折角綺麗な景色なのに俺は遣る瀬無い気持ちになった。


出来れば、この綺麗な花が大量にある所で戦闘をしたくは無いが、これだけ群生しているそれなりに背丈の高い花々が地面を覆っている場所という事はモンスターが潜伏している可能性も僻めない。


確か草原エリアでは、花粉の匂いと共に状態異常攻撃を食らってしまったのを覚えている。まだ、このエリアの特色が分からない以上、トレラントヴェールを全員にかけておくのが無難か?


流石に六十階層ともなってくるとかかると洒落にならないレベルの状態異常攻撃を仕掛けてくるモンスターもいる。


そう思い、重光にトレラントヴェールを詠唱して貰って俺達は状態異常攻撃に対して事前に対策をしておく。


爽やかな風が吹き、大地の花々がざわざわと音を立て、それと同時に何かが、俺達の横を横切った。


傷?それで、鎧に付いた僅かな傷を俺は見逃す事は無かった。敵が何処かにいる?


そうは思ったものの、周りを確認しても敵の気配は無く、爽やかな風と共に不可視の刃が飛んで来ている事実があるだけだった。


まず、この風は階層全体に吹いている様で、階層全体の花々な一斉にざわざわと揺れる様は一体感がある。


しかし、その花々が騒めく音は他のモンスターが俺達に近づいて来ていたとしても知覚させない為のトラップでもある。ざわざわと言う音はかなり五月蝿く、他の音が聞こえにくい。その為、突然の奇襲などが来た場合に対処が遅れる恐れがあった。


これもギミックの一種か……?いや、草木の中に敵が隠れている可能性も、その可能性を考えたが、先程まで俺達はずっと花々の中に敵が潜んでいる可能性は意識していた。


となると、地中か、空中だけど、地中からは攻撃手段が乏しいし、空にも敵の姿は無――




まさか!?俺はそこで最初にこの島が上空からやって来た時の事を思い出して遥か上空を見上げる。


敵の姿は無い。


だがーー


微かにではあるものの鎧に縦状の小さな傷が入る。俺はこれを横から風に任せて飛翔してくる真空波かと思っていたが、違う。


これは、上空からの攻撃だ。今のまでもフロストレイドドラゴンなどの空中から攻撃を仕掛けてくるモンスターはいた。


だけど、今回はレベルが違う。それは俺の一番苦手とするタイプの敵だった。


超遠距離型のモンスター……。俺達が視認出来ない程の遥か上空から不可視の攻撃を繰り出してくる謎のモンスター……一発一発の威力はそんなに大した事は無いけれどこれがずっと続く様ならば鎧も疲弊し、壊れてしまう。


恐らく、あと一日待っておけば余る程あるフロストバイトベビーモスの素材によって装備品の予備が何セットか出来ていたのだろうけれど、生憎、俺達は一日と待たずに拠点を出発した。


予備の防具は一セットしか無い。


それに、防具が良くても常に上空から狙われていると考えると俺達も流石に長くは保たない。一刻も早く遥か上空から狙撃しているモンスターを倒さなくてはならなかった。


風自体に害は無いとしても、遥か上空から垂直落下してくる斬撃の角度を横殴りに変えて俺達が回避しにくい状況を作っている。鎧に付いた傷も鋭利な刃物で斬りつけられた様な痕が残り、殺傷能力は高い。


遥か上空となれば、敵の姿を視認する事は難しく、俺達の攻撃の射程も届かない。


多重範囲防御壁マルチエリアバリア


生身のアクアは空中から降ってくる攻撃を毛嫌いしているらしく、鋭い眼を顰めて明らかに嫌な雰囲気を出す。


それを見た俺の判断で一旦俺達は動きを止めて、様子を見る事にする。俺達を中心に半透明の壁が形成され、上空からの攻撃を弾く。


これで、敵の攻撃の規則性でも見つけられたら良い。攻撃された位置によって敵の場所を特定出来ると尚良い。


「重光、亜蓮。敵のいる場所に技は届きそうか?」

「無理だな(ね)」


遠距離型の重光と亜蓮ならば射程範囲内に入るかと思ったが、まず亜蓮は敵の正確な場所が分からないとまともに攻撃出来ないし、敵が俺達でさえ視認出来ない位置にいるって事は俺達のいる場所との高度差は敵の大きさやカモフラージュ能力によるが最低でも数百メートルを超えていると予想する。


実際に今の俺達ならば五百メートル程の距離なら離れていても人間程のサイズがあればはっきりと視認できる。


上空には雲一つ無く、さんさんと輝く太陽が常に上っており、かなり眩しい。飛行機の窓などに遮光加工がしてあるのはそう言う事だ。


高度が高いと遮る物も無く、空気も澄む為にかなり眩しい。


遮光性能があるクリスタルレンズが甲冑の面甲の部分に付いていても尚眩しい。遮光性能が無い防具で上空を直に見たとしたら失明物だ。


失明まではいかないにしても、しばらくの間視界が見えなくなるレベルなのは間違い無い。


少なくともこうやって直に眩しくても視認し続ける事が出来ている時点で遮光クリスタルの効能はかなり高いし助かる。


また、地面と水平に投擲をするのと、地面と水平に投擲をするのでは全く違う。亜蓮の場合は対象さえ捉える事が出来れば攻撃が自動追尾する為、射程の概念は意味を成さないのだけど今回は対象が捉えられないと言う意味での無理だと言う発言なのだろう。


重光は無論、魔法の射程が単純に足らないと言う話だ。敵の位置が分からないと言う事は範囲攻撃をする他無く、範囲攻撃を行うと言う事は魔法の質量もかなり大きくなる。


そうなると上空に魔法を打ち上げるエネルギーが多大に必要となる。しかも、その魔法が敵に命中しなかった場合には自分で放った魔法が自分達に向かって垂直落下して来ると言う悲惨な事態を招きかねないのだ。


空中で爆発させる様に制御すれば問題無いのだが、何より高度な魔法制御能力が必要になる上に、爆発範囲内に敵がいないとただの無駄撃ちである。


何より、数百メートルも離れた場所で爆発する様に巨大な魔法を制御できる程の制御力があれば既に色々な事を試している。


重光のバリアをあの攻撃の威力では破壊する事は出来ないだろうが、いつまでも立ち止まっていては何も進展しない。


アクア……悪いけど付き合ってくれ。


俺はアクアの背中に跨って上空に飛び立った。


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