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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
13章 氷山エリア
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280話 凍傷之地霊王

敵一人としていない荒廃した荒野で俺達は少し駆け足で走る。六十階層であるこの荒野は異常に敵が少ない。


敵が居ない事を俺が強調する位誰も居ないのだ。それは、本当にこの階層にはボスモンスター以外のモンスターが生息して居ないのを暗示しているかの様に感じる。







ーーこの階層に突入してから早二時間が過ぎようとしているが未だ一体も敵の姿を視認できていない。


そして、目の前には冷気を纏う巨大な大理石で作られた様な見た目の扉が現れた。


今までの氷山階層の広さと比べると明らかに狭いと俺は体感的に感じたが、扉の形も今までよりも荘厳で少し形状が凝っていると思わせるだけの威圧感があった。


突如として出現した大扉に触れると手甲の部分が冷気に覆われて霜が降る。防具の防寒耐性が半端ないせいか、俺自身は全く温度を感じる事は出来ないのだが、この扉が冷凍庫以上の冷たさを持っているのは理解した。


扉の材質はよく分からないが、金属質では無い事から、熱伝導はあまりしないと考えられる。例外の物質はあるものの、明らかにこの大扉は自ずから冷気を発していた。


いや、中から冷気が漏れ出しているのかも知れない。そんな印象を受けた。


大扉の取っ手部分に手をかけて大扉をゆっくりと開く。


ギギギと言う鉄錆では無く、表面に張り付いた氷がひび割れる音が響き、扉はゆっくりと俺達への道を示した。


中から湧き出てくる白い煙が幻想的で、それが一種の演出にも見えてくるのだから凄いものだ。これだけでボスの威圧感を一層高める事が出来るだろう。


だが、そんな事は俺達には関係無い。俺達にとつてある選択肢はただボスに倒されるか倒すかの二択だ。


冷凍庫の中の様に静寂を保ち、冷気漂う場所に巨大なモンスターはいた。


そのモンスターは俺達の姿を確認するとゆっくりと巨大な肉体を動かした。


《儂はいつから寝ておったのかのう?ん?若き者か。ここを通りたくば儂を倒して行けとでも言わなければならんのじゃろうが、生憎見ての通り儂はただの老いぼれじゃからのぉーー》


うん。おじいちゃん一先ず落ち着こうか?俺達を確認してパッと見山にも見える程巨大な肉体を揺らしながら念話でぶつぶつと狼狽えるモンスターの姿を視認する。


そのモンスターからはあまり敵意と言うか物を感じない。


そのモンスターの名をフロストバイトベビーモスと言い。リヴァイアサンと並ぶ神話の怪物だ。


リヴァイアサンも歳を食った話し方をしていたが、同じく、歳を食った話し方フロストバイトベビーモスの話し方はどちらかと言えば喧嘩腰のリヴァイアサンと比べると対照的だ。


俺達が見上げる程の山の様に巨大な体躯を持ち、ゴツゴツとした白銀の皮膚には輝きが無く、絵の具でベタ塗りをした様な質感をしている。


頭には象の様に巨大な巻いている牙があり、その牙は山をも切り裂きそうだ。目は小さく、岩の様な皮膚の下に完全に隠れてしまっているが、先程の話す口調からして視界は確保出来ているみたいだ。


杉の木の様に年輪を重ねた様な長い尾は左右に振るだけで大地の物を薙ぎ倒す。鉄柱をいくつも重ねた様な太さと頑丈さを思わせる尾と背中には鋭いスパイク状の白い木が生い茂っている。


その木の太さでさえ、直径七十センチメートルを超えている事からフロストバイトベビーモスの巨大さが分かるだろう。


鼻は無く、平たい歯が生え揃った真っ赤な口元を開けて白い息を蒸気機関車の様に噴き出しながらフロストバイトベビーモスは俺達に敬意を払いながらサイの様にゴツい脚の関節を折り曲げて大地に座る。


いや、普通に怖いんだけど……。


《わざわざこの様な場所に御出でしてくれて儂のこの態度はすまないと思っている。いや、御出でしたと言うよりは来るしか無かったのであろう?だが、儂はここの守護者である以上、戦う使命があるのじゃ》


フロストバイトベビーモスは少し申し訳無さそうに開戦のセリフを述べて再び折り畳んだ脚を伸ばして立ち上がった。


フロストバイトベビーモスが大地を踏みしめると踏みしめた部分の大地が抉り取られ、その周囲が霜に覆われる。


《お主達のタイミングで良い。いつでもかかってるのじゃ。この老いぼれを倒して儂達を解放してくれ!》


フロストバイトベビーモスは頭を上空に上げて強烈な咆哮を放ち周囲に衝撃波を放つ。


「グルルルオオオオ!!!」


その声量はアクアが、先程大水晶蜘蛛達に放った物の比では無く、あまりの声量に俺達は眉を顰めてフロストバイトベビーモスを視認する。


さっきやる気無いって言ってたじゃないか!これでもフロストバイトベビーモスにとっては茶番って事なのかよ!


地面が抉り取られ、吹き飛んだ破片が片っ端から凍り、即座に地面と接合される。闘志の光が宿ったフロストバイトベビーモスからは白い煙が蒸気機関の様に全身から噴出され、防具を着込んでいてもその圧倒的な冷気を感じる事が出来た。


これが、フロストバイトベビーモス!?別名凍傷之地霊王か。


これが正しく旧約聖書で怪物と表される様に俺はこう言うのを本当に『モンスター』と言うのだと思った。


咆哮を終えたフロストバイトベビーモスは堂々とした姿でその場で鎮座する。


その姿はフロストバイトベビーモスが先程言い放ったいつでも来いと言う言葉を形として体現しているみたいだった。


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