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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
13章 氷山エリア
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275話 氷地疾走

「!?」


あの夢の続きを見る事は無く、俺は薄暗い部屋で目を覚ます。


「どうした?驚いた顔をして……。急に起き上がるからこっちがビックリするじゃねえか。何か寝てる間お前のマナの状態が不安定になっていたから不安になっていた所だ」


俺の目の前では不思議そうな顔をした添島が俺の顔を覗き込んでおり、周囲を見渡すと亜蓮の姿もあり、それは無事俺達が逃走に成功した事を表していた。


「マナの流出が止まってマナが安定した……?」


重光が俺の身体に触れてマナを流し込みながら不思議そうな表情で俺を治療する。


やはり、夢を見ている間に俺はマナを消費し続けていたらしい。普通に考えてみたらあんな化け物同士の戦いなんて今の実力では視認する事も難しいだろうな。


どうしてだ? 誰が俺にあんな夢を……ってこれは毎度思う事だが、考えても無駄だから考えない様にしよう。


迷宮に残された時間があと僅かって事も関係してたり、俺が眠りに着く前に起こった迷宮の脈動自体も関係しているのかも知れない。


そうなると、この迷宮がロークィンド本土と元は同じ世界で繋がっていたって事は、ロークィンド本土のマナがこちらに少しずつ流れ込んで来ているのかも知れない。


マナが誰かの記憶を運んだり、変な夢を見させたりするって事は聞いた事も無いが、少しでもある可能性をゼロと見るのは少し言い過ぎだろうな。


だが、あの魔神と魔術師……最初は恐怖しか無かった物語だったが、あの世界、あの戦争の事を知りたいと思い始めてから俺は次第にあの夢への興味を大きくしていた。


あれだけ、強大な戦闘力の戦いを見ているのは仲間達の反応から見て恐らく俺だけ……となると、外に話して良い物なのかどうか迷う。


一応エルキンドには話してみたもののエルキンドの口実では知らないと言う話だった。


この迷宮の管理者もあれ位の強さを誇っているのだろうか……?


迷宮の管理者……ん?迷宮の管理者が核の分離体だとしたならば、この迷宮の管理者の容姿はモンスターの様な容姿をしている可能性もある。


思い出したくは無いかも知れないが、ジジイに姿も拠点に戻った際に確認を取っておくか。


取り敢えず、この夢の事は今は終わりにする。


あの夢を最初に見た時程の恐怖を感じる事がこれから起こるかも知れない。実際にあの夢と同じレベルの恐怖を味わうとしたならば、実際に感じる恐怖はあの程度では無いだろう。


考える事を忘れ、自我をも失いただ恐怖に身を任せるしか無くなるレベルだと思う。


そう言う恐怖をこれから感じる事があれば、この夢を最初に見た時の事を思い出すとしよう。


人間はより大きな事を体験していれば、感覚的にそれより小さな物であれば割と簡単に乗り越えられる事がある。


それが、感覚の麻痺ってもんだ。


この迷宮に慣れたのも感覚の麻痺だと俺は感じている。


「はい、マナは大方満タンまで回復させたわ。身体の傷もそれなりに治療はしたのだけど今すぐにでも出発する?それとも休む?ここが何かのモンスターの巣である以上はあまり長居は好ましくないわ」


何故かアクアが鼻を高く持ち上げて自慢そうにしている事からオリヴィエと聖属性魔法を使って俺を治療してくれた事は何となく理解した。


そして、ここは何かのモンスターの巣って言う事はここは地面が沈降して露出した洞穴だって事は理解した。


偶然、地中に巣を作っていたモンスターの住処があの地震によって俺達が侵入出来る場所に出てきてくれたのだ。


これはラッキーと言えるだろう。


氷山の階層に来てから夜が来ていない為に、俺がどれくらいの時間眠りについていたのかは分からないが、亜蓮も含めて体力を回復し切っていると言う事は相当な時間眠っていたのだろうな。


重光のマナリンクも中々時間がかかる作業の為、俺的には重光が大丈夫であれば直ぐにでも出発したい。


「すぐにでもここを出よう。今はモンスター達が地震で混乱して散り散りになっているが、いつ戻ってくるのか分からない」

「分かったわ。起きたばっかりだけど大丈夫なの?」

「それはこっちの台詞だずっと治療してたんだろ?」


俺の荷物は全てマジックバッグに収納されている為、特に準備をする事も無くスッと立ち上がって洞穴の外に出る。


それに従って仲間達もゆっくりと立ち上がって俺に続く。


「例ならアクアちゃんに言ってね。私はマナを供給しただけだから」


重光が、少し気まずそうにアクアの方を向いて立ち上がる。


まぁ、それは最初から分かっていたけどな。重光は自分が全て治療したみたいなニュアンスで俺が捉えたと勘違いして恥ずかしくなったのだろう。


頰を若干赤らめているのが、クリスタルレンズを通しても確認できた。


そういや、アクアに次休む時に頭を撫でてやるって思ってたんだったな。


「アクア。おいで」

「ギュルルル!」


アクアの方を向いて俺が手を広げるとアクアは嬉しそうに鳴き、頭を擦り寄せて来る。


だが、洞穴から出た事によって既に自分達が敵地の中にいる事を分かっているのか、少し遠慮して頭を少し撫でてやると自ら頭を下げる。


場所は大きく大地がせり上がっている場所がかなり遠くに確認出来る事から俺が眠りについてから数キロは進んだんだなと理解した。


飛竜達を撒いた事はかなり大きな利点だ。


残りのこの階層をさっさと駆け抜けるぞ。


俺は防具で覆われた自分の頭部をガシンと叩いて気合を再び注入してエネルギーを全身に流しながら大地を蹴った。


添島程では無いが、気と言われるマナの親類みたいな物も俺達はかなり扱える様になっていた。


気は元々少しずつは使えていたのだが、それも最近では殆ど使いこなせる様になった。


全員気を使う事によって高まった身体能力を更に高める事が出来て、軽やかに、高速で力強くほぼ平地とも言える大地をひたすら走った。


平地であれば、それなりの速度を出して走っても問題は無いだろうな。


これならば、今までと同じくらいの広さの階層であれば、今日中に階層を抜ける事が可能かも知れない。


また、次の階層に移動した直後にこの階層に来た直後に奇襲を受けた様にその可能性も考慮して油断しない様に俺は心を強く持って先を目指した。



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