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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
13章 氷山エリア
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270話 氷谷の撃竜戦

吹き荒れる爆風の中、俺がザイルの金属部分を操作した事によって俺の身体はザイルを伝って俺の身体が風に任せて急上昇する。


それと入れ違いになる様に添島がアクアの背中に移って大剣を片手で引き抜いて二本の足で立ち上がる。


何てバランス力だ……アクアの身体は高速飛行中で地面と身体の向きが平行ならまだしも、偏差飛行中のアクアの身体は傾きを自由自在に変えてまともに立てる様な場所では無い。


真っ黒な黒煙の中から浮かび上がった大きな影がアクアに向かって飛んできたかと思えば、添島は左手をアクアの背中に触れ、重心を低く保ち、三本の手足で正面を見据える。


そして、三本の手足に一瞬でエネルギー波が収束したかと思えば添島は既に大剣を両手に持ち替えており、虎の様な低い姿勢のまま、アクアの飛ぶ勢いに乗せて真っ黒な黒煙から出て来た飛竜を見て大剣を振り下ろして一閃した。


一閃した大剣の速さは俺が移動中だった事もあるのか、俺でも目を細めないと捉えられない程の速さで、添島は既に飛竜を切り捨ててそのままの勢いで腰を捻って飛竜の外側に回って大剣を左手に持ち替えた。


胴体に大きな線が入り、鮮血を散らして勢いを既に失って落下中の飛竜の翼を右手のみで掴んだ添島は腕で飛竜を押して落下している飛竜の上に乗るとそのまま足に力を込めて上空へと跳んだ。


そのまま、ザイルを伸ばしてアクアの脚の爪に鉤爪を引っ掛けた添島はアクアに再び飛び乗る。


何か、添島の身体能力が恐ろしいレベルになっているな。


オーラタンク込みの添島の現在の身体能力は、俺の予想の遥か上を行っていた。


元々俺達の中でも身体能力が格段に高かった添島の身体能力が更に引き上げられて、その状態で強力な身体強化スキルである、オーラタンクを使用しているのだ。


弱い訳が無い。


しかも、闇智達との訓練で上達したオーラタンクはバネの様なしなやかさも兼ね備えており、空中の不確かな足場でも軽々まるでそこに地面があったかの様に登る事が出来る。


まぁ、当然、添島のあの動きに現時点でついて行けるメンバーはアクア以外いない為に、移動の時に使う事は無かった。


それに長時間使用となると話は別だ。


流石の添島でもオーラタンクを発動し続けて、活動出来る限界の速度ギリギリの速度で動き続けたら息も切れるし、体力も続かない。


マラソン大会を二日や三日やり続けるのと同じ様な物だ。


普通に考えて、それは有り得ないだろう。


ここの階層が普通の階層だったならば、休憩を取れる為、その作戦もありかも知れないけどな。


「誰か俺と変わるか?」


添島がアクアの背中の上で、三本の手足で身体をしっかりと固定した状態で俺達に声をかけるが、正直アクアに乗るのは添島で良いと思う。


まぁ、二人位ならアクアの速度は落ちないだろうから強いて誰かを乗せると言えば遠距離攻撃の威力に不安がある山西くらいかな?


限界超越のスキルは確かに強力なんだが、マナを直接媒体として発動する魔法と違って物質が必要だ。


自身にスキルを適用するならば、話は別なんだが、この様に高速移動している状態で落ち着いて空気中の媒体の性質を変化させて、攻撃性を敵に向けるのはかなり難しい。


限界超越もマナの量やコントロール依存で威力が変わったりするが、先程も言ったように媒体有りきの技なのだ。


まぁ、単純に今の戦闘能力ならば身体強化でも太刀打ち出来ない事は無いと思うけどな。


多分、今の山西だったらマルチの七重強化位は発動出来る気がする。


ただ、身体強化にマナを割かなくても十分に敵モンスターとの戦闘が出来ている事を考えてもあまり発動するメリットは無さそうだ。


ただ、間違いなく身体強化した俺達でも敵わない敵は直ぐに現れる。


それは、フローラの口調から考えても分かる事だ。


そうなった時は、必ず山西。お前の力が必要になる。その時は頼んだぞ。


俺はそう思いながら、山西にアクアに飛び移る様に指示を出す。


だが、先程も言った様に誰もが添島の様な高い身体を持ち合わせたいる訳では無い。


山西はザイルの先に付いた鉤爪状の金具をアクアに向けて射出させ、アクアがそれを脚の爪でキャッチする。


勿論ザイルを伸縮までは山西も行うのだが、添島の様にアクアの背中の上に乗る場合は四本の手足でしっかりと自分の身体を固定する必要がある。


添島の様に片手に自身の体程の大きさがある大剣を構えたまま、アクアにしがみ付くなんて言う真似は出来ない。


まぁ、飛竜達も大分俺達との実力差を理解したのか、少し勢いが落ちている気がするけどな。


アクアの真横をすり抜ける様に複数本のナイフが縦横無尽に飛んで行って飛竜達を狙うがまともに的が絞れていない。


亜蓮のシャドウウォーリアだが、複数体を対象にする場合は対象がランダムになってしまう弱点を持っている。


元々敵が複数体いる状況ではシャドウウォーリアは分が悪いスキルだ。


ナイフ型の全方位の場合は敵を絞れないし、シャドウフィールドの場合も敵を絞れない上に効果が微妙で、中心にいる亜蓮本体に攻撃が集中する事も多い。


全く、こう考えるとあいつの性癖が顕著に出てきた様なスキルだな。


だが、全ての対象に行き渡らなくても良い。


残りは俺達に任せろ!


何匹か、追跡速度を落として貰えれば十分だ。


亜蓮の役割は本来ヘイト稼ぎだから敵を倒す必要は無いのだ。


少しでも敵を引きつける事が出来れば、それで良い。


亜蓮もナイフを同時に放出できる数が格段に増え、今では弾幕の様にナイフを張り巡らせている。


弾幕とは言ったが、数にして三十本位か? だが、ナイフの色が半透明に近い為に弾幕っぽく見えるってだけだ。


マナで形成された半透明のナイフに紫色のエネルギーが巻きついており、飛んでいくナイフは光の尾を引いて少し綺麗だ。


現在、どれくらいの数亜蓮がナイフを作り出せるのかは分からないが、あのフロストレイドドラゴンの皮膚を切り裂いているのが確認できる時点で威力がかなり上昇しているのは理解できる。


まぁ、弾幕に一番近い攻撃をしているのは重光さんだと俺は思っているけどな。


重光さんは巨大な火球を形成して向かって来る飛竜達に対する盾にして視界を塞いで外側から雷の槍を飛ばして飛竜達を貫き落として行く。


巨大な火球からは遠く離れていても熱を感じる程で明るい赤色の火球の中で黒色の炎がぐるぐると燃えており、どこか悍ましい雰囲気も感じる。


俺は何も見なかった。


うん。そう思いたい。


俺の奇襲の甲斐もあって、俺達は全員一際大きな水晶の上まで移動する事に成功した。


これで、やっと渓谷も終わりだ。


だが、この先に何が待っているかは分からないから決して気を抜くことはしない。


マナも結構使ってしまったし、そろそろ休みたいと思いながら俺達は次の階層への入り口を通過した。


だが、俺達の休みたいと言う願いは実現する事は無かった。




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