25話 水があるだけで機動力は格段に落ちる
鍾乳洞!(◎_◎;)
(ちゃぽ)
足元の水溜まりが音を立てる。俺達は昨日十七階層を突破し現在十八階層にいた。そうここ十八階層は水が天井から常に滴り落ちる洞窟。つまりは鍾乳洞だった。
「何かジメジメしていて動き難いな、、、まぁ水面や鉱石に僅かな光が反射して視界は確保できてるんだが、、、それも逆にテカテカしてて見づらいな、、、」
添島が呟く。確かにそうだ、鍾乳洞では光が色々反射して辺りを照らしているのだが圧倒的に先が見辛いのだ。それに足場が水に濡れていて動き難い。だが、この階層だと、確証は無いがあの百足の様な地中から攻撃を仕掛けてくるタイプの敵はあまりいない筈だ。多分。そして少し先の水面が僅かに輝いている。あれは何かの魚だろうか?遠目ではよく分からない。
「そうだな、、、確かに見辛いのもあるんだが、、、また今までの様に敵に囲まれたらこの階層だと逃げきれないな、、、機動力が圧倒的に落ちる、、、」
俺達はこの階層の考察をしながらゆっくりと進んでいく。そして最初は水の深さは靴が浸るくらいの深さだったのだが徐々に深くなって行き水の深さは俺達の腰あたりまで来ていた。そして、
(ゴゴゴゴゴゴ!)
「何だ!?」
急に辺りを一体が地震の様に揺れ始め水面に波が立つ。
「キシキシキシキシ!」
「っ!?」
(バシャーン!)
俺達の目の前を巨大、、、そう長さ二十メートル近くはあるだろうか、、、そんなサイズの身体は百足の様な身体をしており頭の部分はエビのようである。そして、そのモンスターは透き通った身体を光で反射させながら大きな波を立て、俺達の前から去って行った。
「何だったんだ、、、今のは、、、」
添島が驚き声をあげる。俺達もみんな顔を見合わせ黙る、、、本当に何だったんだあの生物は、、、前の階層で敵が徐々に大きくなって来ているとは思ってはいたのだが、これ程までとは流石に想定外だ。だが奴は俺達の方には見向きもせず立ち去った、、、それはそれで良かったのかも知れない。あれと戦うのは御免だ。そう考えていると、羽音が遥か上空の方から聞こえ、その辺り一帯が輝き始めた。
「ちっ、、、あの虫か、、、幸いここはあの虫がいなくても光源は確保出来てる。さっさと、、、」
添島がそう言い重光の方を振り向いた時だった。
(シュッ)
(ドドドドドド!)
「っ!?」
俺達の横から何かが伸びて行き、あの輝く昆虫達を一瞬にして葬ったのだ。そして、その葬った奴を見てみると体長さ二メートル程の両生類の様な見た目をしているイモリの様な生き物が陽気に水面に落ちて来た虫をモグモグと美味しそうに食べていた。そして、その虫達を食べ終えると俺達に気がついた様で
「コココココ!」
喉の袋をポコポコと膨らまし音を立て口から液体の塊を俺達に飛ばして来た。
「うおっ!?アブねぇな、、、俺達は水中で中々奴の近くへ行けねぇ!亜蓮!重光頼んだ!」
その液体の塊が水面に着弾したが何も起こらない、俺達は機動力が無いため先制攻撃を添島が重光と亜蓮に頼む。だが、
「了、、、!?」
攻撃を仕掛ける前にそれは起こった。
(ドン!ドン!)
先程水面に落ち水中で広がった液体が爆発したのだ。そして、水中で水蒸気爆発を起こす。
「くそっ!これでは奴の所に中々攻撃出来ん!ここは俺が奴の攻撃を防ぐ!その間に奴を倒せ!」
添島が指示を出し未だに液体を放出し続けているイモリのようなモンスターの方へと突っ込む。添島が盾の代わりにしている剣に液体が付着し爆発し炎をあげるが添島は大粒の汗を垂らしながらそのイモリの方へと突っ込み続ける。それに合わせて俺達も援護に入る。
「多重火雷槍!」
重光が添島を避けるように魔法の槍を飛ばす。だが、
「コココココ!」
イモリが自分の周りに液体をドーム状に貼りガードする。
(ドーン!)
重光の魔法がイモリのドームに触れ爆発するが、
「はぁぁぁあ!」
奴の攻撃を耐えながら近づいた添島が奴に斬りかかり、、、奴の体を真っ二つに切断するが
「コココココ!」
奴は生きていた。奴の切断された身体はその場に残り赤く赤熱し、爆発する。
「ぐわぁ!」
添島は爆発に巻き込まれ吹き飛び着水する。そして、身体を分断されたと思われた奴を見ると尻尾が無くなっており、既にかなり遠くへと逃げていた。何なんだよ、、、尻尾は無くなっても尻尾を巻いて逃げるのかよ、、、今一瞬俺上手いなとか思ったが気にしないでくれ。
「大丈夫か?」
吹き飛ばされた添島に声をかける。
「ああ、大丈夫だ、、、だが、逃げられたな、、、」
「そうだな、、、この階層は敵は少なめの様だが面倒な敵が多いらしいそして俺達もこの機動力だ、、、参ったな、、、まともに戦闘が出来やしない」
亜蓮が苦虫を噛み潰したような顔をしながら答える。そして、俺達はこの水中の機動力故に大して進む事も出来ず、この日の探索を終えたのだった。