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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
13章 氷山エリア
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264話 鬼強化

今は視界が悪くはあるものの、アクアの第六感による感知能力を利用して出来るだけ敵の気配を察知しながら進む。


だが、この新しい自分達の力を過信する訳では無いけれど試したいと言う気持ちも少なからずはあった。


アクアの大きさは変わっていないものの、身体能力の大幅な強化によって、全員を乗せての飛行も可能になった。


流石に全員乗るとアクアは少し辛そうだが飛べない事も無いって感じだ。


もしもの時は全員でアクアに騎乗して逃げるって事も出来る訳だ。


強化された肉体で、全速力で走ると高速道路を走る自動車位は軽く出そうだな。


今地形も悪いから流石にそこまでの速度では走れないし、目も強化されたとは言えまだこの身体に慣れていない状態で自分の動きに脳が付いていかない可能性もある。


動体視力が追いついていないのだ。


そちらも、次第に慣らしていく必要がありそうだ。


アクアの感知能力も人間の俺達に比べたら高いのは高いんだが、まだそう言う機能の訓練をあまりしていない為か地中奥深くからとかの気配は完全には察知出来ない。


実際、アクアが感知出来る距離まで敵が迫っていた場合は既に手遅れと言うか、かなり近くまで敵がいると言う事になる。


敵の種類によっては回避する事も可能だが、敵によってはそれも叶わない。


グレートウォールスの様な巨漢のモンスターでさえ、あの隠密能力である。


割と視界ってのは大事なんだなって今更俺は深く心に刻む。


「ギュルル!」


と、やはり嫌な予感ってのは直ぐに的中するもんで、アクアが鋭い声で警笛を鳴らす。


拠点に戻った際に氷山エリアの予習はして来たつもりだが、氷山エリアのモンスターには竜種がかなりの種類いた。


今までのエリアでは竜種と言うのは食物連鎖の上位に食い込むモンスターであったが、ここに来てこれが常連となって来ると中々辛いだろうな……。





今までの自分であればな!


「グラゥ!!!」


地面から強靭な尻尾で大きな音を立てて激しい吹雪の中から平たい頭をした巨大なトカゲが唸り声をあげて現れる。


視界の悪い吹雪の中からの攻撃。


普通ならばこの攻撃を食らってしまっても仕方がないと思えるだろう。


だが、一声早いアクアの警笛によってどこから敵が来るのは事前に察知出来ていた。


これはかなり大きい。


敵は一匹では無い。


フロストバイトリザード……。


強力な凍結毒を持ち、全身には亀の甲羅を平たくした様な白銀の分厚い甲殻が放射状に生えており、生半可な攻撃が通用する様なモンスターでは無い。


そう、普通ならばだ。


フロストバイトリザードは、雪の中に影を潜め、獲物を狙う。


そして、その強力な牙は噛み付いた者を即座に凍らせて、死の恐怖に至らしめ、じわじわと体温を奪って強靭な身体でいたぶって行くのだ。


サンドリザードの亜種ではあるが、性格は獰猛である。


嗅覚の役目も果たす長い舌と赤外線をも捉える事の出来る目で視界が悪い場所でも問題なく行動出来る。


さて、新しい力の腕試しといきますか……これがフローラに力を貰って初めての連携戦だ。


自分の能力値の向上は自分でチェックして確認出来たものの、仲間の状態は殆ど確認していない……いや、正確には出来ていない。


新たな力……見させてくれないか?


俺もあまり普段は得意じゃない技も使ってみようか、あくまで試しだ。


もしかしたら以前行おうと思っていた強力な技が実用性を帯びて来たかもしれない。


俺は全身に雷属性のマナを込めて圧縮させて全身に雷を纏う。


全身内部圧縮属性付与オーバーインプレスエンチャント 麒麟キリン


キリンはジラーフの方では無くて、中国の神話に出てくる生き物のの方をモチーフにしている。


身体から電気が迸り、青い稲妻が身体からビリビリと空気中を伝って辺りを明るく照らして如何にも強そうだ。


渓谷階層で電気ショックを試した時は予想以上の威力不足に悩まされて思った様な動きは出来なかった。


だけど、今の麒麟状態……全身に濃密に圧縮された電気を纏っている状態であれば触れるだけで感電させ、スリップダメージを与える事が出来る程の威力を誇っている。


すまん。スパイル……別に俺はお前の雷纏をパクった訳ではないんだ。


当然、所詮電気を纏っているに過ぎないので、身体を電気の様に高速で移動させたり、身体能力が向上するなんて事は無い。


まぁ、フロストバイトリザードともなれば、この程度の電気じゃあまり効かないだろうなぁ。


電気に抵抗があるモンスターであれば、その抵抗は熱に変わってダメージを与えるが、それをする位ならば炎系の技を直接出した方が効率が良い。


俺はしゃがみこんだ姿勢のままフロストバイトリザードの側面に回って紫電を放つが、フロストバイトリザードの分厚い装甲に阻まれた。


「ギッ!?」


俺が放った紫電はフロストバイトリザードの甲殻の表面を撫で、フロストバイトリザードを炎で包む。


ん?


ここはかなり寒く、発火点にするのも一苦労の筈……なのに、電気の抵抗だけで大きな火を付ける事が出来たのだ。


案外、威力はあるのかも知れない。


フロストバイトリザードは、長い舌を動かしながら威嚇の声を上げ、直ぐに自然に鎮火され、煙を上げている自身の甲殻の事など知らんとばかりに俺を睨む。


遊ぶなってか?分かったよ。真面目にやるよ……。


色々まだ試していない技も多くて、雑魚が相手の内に色々な技を試しておきたい気持ちはあったが、仲間達も既に他のフロストバイトリザードを仕留めているので、待たせる訳には行かず、全身に収束させていたマナの属性を炎属性に変える。


「悪かったな。遊んで」

「ギィィ!」


俺のその態度にイラついたのか、フロストバイトリザードは怒った様に声を上げて、口から凍結液を撒き散らしながら俺に飛びかかる。


地面に垂れ、液体が触れた部分は一瞬にして氷の様に硬く凍結した事からフロストバイトリザードの凍結液の強さが伺える。


だが、俺が少しマナを強く込めると身体に纏った炎がより一層火力を増し、フロストバイトリザードが凍らせた地面は愚か、かなり広い範囲の地面に降り積もった雪さえも融解させる。


そして、俺は腕を真っ直ぐと突き出してフロストバイトリザードの攻撃を躱そうともせずに力を込めた。


その瞬間、洞窟を出た直後に試しで放った様な巨大な爆炎がフロストバイトリザードを覆い、フロストバイトリザードは黒く焦げた無残な姿で跳力を失ったかの様に真っ直ぐと俺の方向に飛んで来る。


俺は体に纏った炎を解いて、半身をずらす様にしてフロストバイトリザードの死体を避ける。


もしもの事も想定して、オーバーインプレスエンチャントで待機していたんだが、その必要は無かったみたいだ。


もし、フロストバイトリザードが一撃で倒せていなければ、足の部分の炎を大きくしてフロストバイトリザードの攻撃を躱す予定だった。


正直、自分が強化されたとは言っても敵も強くなっている筈だし、自分の強化後の耐久力に関しては未だ分からない。


他の四人と一匹の能力は俺と同じく、然程変わっていないが、身体能力が格段に向上している様だ。


殆どワンパンでフロストバイトリザードを仕留めている。


山西はワンパンでは無かったものの、十分一人でスキル無しでもこの階層の雑魚狩りが出来る位の身体能力に向上していた。


俺の場合半ばオーバーキルみたいな所はあったが、用心はしておいて損は無い。


それに今の動きでもそこまでマナを使っていないのだから全ての能力がかなり上昇していると思われる。


他の仲間達に関しては山西でさえあの強さになっているのだからもう察しである。


いまいち、俺達が強くなったせいでフロストバイトリザードの強さが伝わらないが、以前の俺達であれば、フロストバイトリザードの側面に回り込む事がまず難しいのだ。


そんなレベルである。


側面に回り込めずに、凍結液を食らってしまうと言うエンドは避けたい所だし、フロストバイトリザードの甲殻も以前の俺達だと破れない事は無いものの結構全力を出さないと厳しかったんじゃ無いかな?


俺強ええ!!程では無いが、間違い無くこの強化は後の攻略に大きな影響を与えそうだと俺は思いながらフロストバイトリザードの死体をマジックバッグに収納した。








フロストバイトリザードは主人公達のモルモット(被験体)です。

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