250話 連魚戦
馬鹿め!
そんな小細工が今の俺達に通用すると思うなよ?
俺は即座にバイパスを繋ぎ、身体を横にズラしながらブルーローズタイラントがいた場所をレゾナンスエンチャントで爆破させて周りの温度を急上昇させる。
だが、当然ブルーローズタイラントの大きさであれば俺が身体を多少スライドした所で回避できる筈は無い。
それも当然計算済みだ。
上半身を俺は炎に包んで右手と左手で交互に爆炎を放ち空中で回転してブルーローズタイラントの攻撃を回避する。
ブルーローズタイラントには、インプレスエンチャントの攻撃は複数発ヒットした筈だが、ブルーローズタイラントの分厚い鱗に阻まれてダメージが通らない。
ブルーローズタイラントは俺のいた場所でバクリと口を閉じたが直ぐに真横から向かって来ている対象に気が付いて身体から冷気ガスを噴出させて尻尾の結晶を肥大化させてその対象がいた場所を薙ぎ払う。
添島との間合いは、脚に二歩分まで近づいていたが、添島もブルーローズタイラントの動きを察知したのか大剣を即座に横に構えて飛び上がって後ろの船の柵の方へと飛んでブルーローズタイラントの攻撃をいなした。
ブルーローズタイラントが尻尾で薙ぎ払った場所から突風が吹き荒れ、そこの地面を再び氷漬けにする。
しかし、添島は既に空中で姿勢を整えて柵に垂直方向に着陸済みだ。
そして、全身に練った気をバネの様に弾ませて先程以上の速度で加速する。
俺もブルーローズタイラントの真上で、下半身にも炎を纏い、腰の捻りを加えて猛スピードで回転しながら刀を引き抜いた。
視覚情報を必要としないブルーローズタイラントは、匂いで俺達の場所を確実に察知する。
だが、それは俺達にはあまり意味がない。
何故ならばーー
同時に攻撃して来た俺達を二人諸共結晶状の鱗を膨らませて貫こうとしているブルーローズタイラントに向かって銀色の槍がブルーローズタイラントの口の中に入り混み破裂音を響かせる。
山西と重光の強力技である。
重光のエクスプロージョンと、山西の限界超越の組み合わせ技で、性質を変化させた金属を山西が槍状にして飛ばし、その上から重光がエクスプロージョンの爆裂弾を放り込むと言う物だ。
ブルーローズタイラントは自身の体内でさえ、硬質な皮膚で覆われており、自身の鱗を操る事によって体内の性質も変化させる事ができる。
その為、体内に対する攻撃にも耐性がある。
硬質な物質を粉々に砕いて消化出来る身体を持っているのだ。
身体の中から金属片が飛び散り、ブルーローズタイラントの体内の壁に張り付く。
山西の限界超越のお陰で金属は金属とも言えない程軟化しており、粘着性が高い。
それを取り込んだブルーローズタイラントは金属片を破壊する事は敵わずに、少し驚いた様子を見せる。
エクスプロージョンの爆発も少しはダメージがあった様子でブルーローズタイラントは若干怯む。
普通のモンスターであれば、口の中であの爆発を食らった時点で暴れて痛みにのたうち回る筈なんだが、ブルーローズタイラントにはそれも通用しない。
どこぞの暴食竜を思い出すなぁ。
しかし、俺達の狙いはそれだけでは無い。
ブルーローズタイラントが口を開いて結晶を肥大化させるタイミングがズレたのだ。
ブルーローズタイラントの体内に結晶を肥大化させる時は体外の結晶状の鱗を同時に膨らます事は難しい。
つまり、外側の防御力は格段に下がる。
そして、俺と添島は既にブルーローズタイラントと隣接する程近づいていた。
つまり、エンドだ。
ブルーローズタイラントはそれに気が付くが既に遅い。
亜蓮の追い討ちの影武者付与のナイフがブルーローズタイラントの口の中に何本か入り込み、ブルーローズタイラントは更に反応するタイミングが遅れる。
そして、俺の刀が火を噴いてブルーローズタイラントの背中から腹にかけてを切り裂き、鮮血が舞う。
そして、ブルーローズタイラントの鳩尾には添島の大剣が食い込んでブルーローズタイラントの数百キロは有ろうかと言う巨体は紙切れの様に宙に浮く。
このままブルーローズタイラントが吹き飛んでしまえば、素材を回収できなくなってしまう。
俺の刀の刃は少し欠けていた。
幾らブルーローズタイラントが防御態勢では無かったとしても、ブルーローズタイラントの鱗は元から馬鹿げた強度を誇っている。
そんな鱗を強引に斬りつければ、刀が欠けても不思議では無い。
空中に浮いたブルーローズタイラントに重光の追い討ちのマルチフレイジングランスが突き刺さりブルーローズタイラントは口を開けたまま船の甲板に大きな音を立てて落ちる。
重光も良く、見ずに当てられるものだ。
船を常に操縦しているからか、確実に魔力操作技術が向上しているな。
ブルーローズタイラントを俺達はマジックバッグに回収して一息ついた。
まだ魚の匂いが付いているからまだまだ襲われるんだろうなぁ。
更に後ろから迫ってくる海上から飛び出した背びれを見ながら俺は予備の刀と今の刀を入れ替えて溜息を吐いた。
やれやれ、どこまで、この戦闘が続くのやら……。




