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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
12章 海エリア
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249話 青薔薇の暴君

俺達の海賊船が大きく揺れ、それと同時に海氷の氷がより分厚く形成され、船の動きが鈍くなる。


ん?このモンスターは……奴か。


俺はてっきり、フィジーター系列のモンスターが出て来るかと思っていたが、更に厄介なのが出て来たな……。


ブルーローズタイラントだ。


一応奴も鯨の部類ではあるんだが、こいつの場合鯨と比べて動きが速いから魔導砲は使えない。


ブルーローズタイラントは地球で言うシャチの様なモンスターだ。


純白の腹部とは対照に真っ黒な背びれを持ち、気性は荒く獰猛だ。


目に入った敵に対しては、竜種でさえ怯む事無く首元に食らいつく。


純白の腹部にはグラシャギスと同じ様に水晶の様な鱗がギザギザに生えており、氷の下の僅かな光しか入らない空間でもその光を取り込んで薄っすらと光を放つ。


だが、目は退化しており強力な嗅覚を持つ。


その嗅覚は数十キロ離れた獲物の匂いも嗅ぎ分けられる程とも言われ、良くクラーケンなどの化け物級のモンスターに喧嘩を売って返り討ちにされているらしい。


体長は五から六メートルと、タイラントと言う大層な名前の割に小型ではあるが、それでも真近で見ると相当大きい。


疎らに生えているギザギザの透き通った水晶の様な鱗は水を切り、ぶつかっただけで獲物を切り裂く。


そして、そのブルーローズタイラントの最大の特徴はその名前の由来とも言われている姿にもある。


あの身体からは冷気を自由に出す事が出来、腹部の結晶の様な鱗は巨大化する。


巨大化した時の鱗はまるで海中に咲く青い薔薇だ。

それと同時に周りに散る獲物の鮮血と相まって美しささえも感じさせる。


そして、身体の半分程を占める巨大な顎で容赦なく獲物を食べるのだ。


その攻撃にはあの硬質な羽を持ったグラシャギスでさえ、敵わない。


一匹のグラシャギスが餌を取りに行ったのか、俺達の船の下に潜り込もうとした瞬間だった。


ブルーローズタイラントは大きな口を開け、猛スピードでグラシャギスに突進して身体の鱗を大きく逆立てグラシャギスを一口で飲み込んだ。


普通の生物であれば、グラシャギスの突撃を丸呑みすれば、ただでは済まない。


身体の内部からグラシャギスの硬質な羽が身体を貫いてしまうだろう。


だが、ブルーローズタイラントはグラシャギスを体内に取り込んだ瞬間に巨大化させた鱗を一気に収束させる。


その直後ブルーローズタイラントの口からは鮮血が水に溶かした絵の具の様に海中に広がる。


そして、ブルーローズタイラントの脅威な点はまだある。


それは、その強靭な肉体を使ったジャンプとスピード……そして、陸上でも自身の凍結能力を利用してしばらくの間行動出来る事だった。


ブルーローズタイラントの泳ぐ最高速度は時速百二十キロを超え、本気を出したブルーローズタイラントから俺達は逃げ切る事は不可能に近い。


そして、グラシャギスを一口で葬ったブルーローズタイラントは獲物の匂いを嗅ぎ分け、また近くのグラシャギスに飛びかかる。


グラシャギス達は既にパニック状態に陥り、散り散りになって逃走する。


だが、高く飛翔する事が出来ないグラシャギスはブルーローズタイラントにとっては良い獲物だ。


出来ればブルーローズタイラントがグラシャギスに集中している間に逃走したい。


ブルーローズタイラントは俺達の居場所は既に分かっている筈だ。


そして、俺達に染み付いた魚類の匂いにも反応している。


シードラゴンの返り血などは一応水で流して掃除をしたつもりだが、僅かな匂いでもブルーローズタイラントの強力な嗅覚の前では意味を成さない。


シャチも仲間で行動するが、ブルーローズタイラントの雄は単体で行動する事が多い。


同じ群れに雄が複数いると、雄同士は争いを始めるのだ。


それで勝った雄しか群れを率いる事は許されないのだ。


つまり、このブルーローズタイラントは敗戦個体と言う事になる。


だが、それでも海竜に近い強さを持っていると言う恐ろしいモンスターである。


単体の個体での狩りは本来であれば困難を極める。


敵を仕留める事が出来ずに逃してしまう事も少なくはないだろう。


だが、それを容易に可能にしてしまうのが、ブルーローズタイラントの強さである。


次々とブルーローズタイラントはグラシャギス達を呑み込んで行き、満足したかと思えば俺達が乗っている海賊船の方へと向いた。


やっぱり、来たか!


と言うかなんでグラシャギス達も俺達の進む方向に逃走してんだよ!


そのせいでブルーローズタイラントまで俺達を追いかけて来たじゃねえか!


やっぱり、船の中で俺達が生活している以上は匂いがどうしても染み付いてしまう。


そうなると、小魚達やそれを狙う生き物達が集まって来る。


それは仕方がないだろうな。


実際に船の底には苔や貝殻などが既に大量に付いており、そこが小魚の住処となっている。


マジックバッグは生きている生物をしまう事は出来ないのだが、船ごとしまえば、何故か苔ごと中に収納される。


もしかしたら一定以上の大きさを持っていたり、意思や知能の度合いも関係があるのかもしれない。


と言うより、マジックバッグが苔も含めて船と言うオブジェクトとして記憶しているのかもしれないな。


そう考えている間に、ブルーローズタイラントと海賊船との距離はほぼゼロ距離まで近づいている。


そして、ブルーローズタイラントは太い尻尾を海面に叩きつけて高く跳ね上がり、俺達の船の甲板に着地し、甲板全体に薄い氷を張った。


俺は周囲をエンチャントの熱で溶かして重光を除く俺達全員が立てるくらいの地面を解凍して戦闘態勢を取った。


それに対して向かい合うブルーローズタイラントは腹の鱗を肥大化させて、辺りに冷気を撒き散らして周りの空気をキラキラと輝かせて温度差で霧を発生させて尻尾で勢い良く地面を蹴った。









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