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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
12章 海エリア
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246話 魔神と魔術師

やはり、またあの夢を見たか……。


もう、悲惨な光景が流れている事位は分かっている……俺はその覚悟を決めて歯を食いしばる。


夢は前回の続きの様で、一般の兵士は愚か、格別の力を持っている兵士達も既に大半が地に伏して別格のマシン兵に押さえつけられていた。


戦火の中心に立っている魔術師はニヤリと笑っており、余裕の表情だ。


マシン兵が一匹、二匹やられた所で焦る様子は無い。


まるで、一、二匹などどうという事は無い。


マシン兵は山程いるのだからとでも言っている様だ。


しかし、その魔術師もマシン兵達の戦いに飽きたのか、更に空高く飛翔する。


その高さ地上から三百メートルって所だろうか?


俺にはその光景がズームされて視界に映し出された。


あれはフライの魔法か?


そして、再び指をマシン兵と戯れている兵士達の方向に向けた。


また、殺す気か!?


俺は前回、一瞬で大地ごと強靭な戦士を葬ったのを見ている為に再び身体が震える様な感覚に襲われる。


あの強靭な力を目にしていれば、分かっては居ても恐怖が蘇る。


しかも、この映像の世界に俺は干渉出来ない以上俺は戦士を助ける事が出来ない。


いや、この世界に居ても俺は瞬殺される。


その時魔術師が首を上げてフードが捲れ、顔が再び露わになる。


そうだ。


前回あの夢が終わった後にこの魔術師の顔に見覚えがあった気がしたんだ……今回でしっかり確認――





馬鹿な!?


俺はその魔術師の顔をしっかりと確認して驚きを隠し切れなかった。


エルキンド!?


その魔術師の顔はエルキンドそっくりだったのだ。


エルキンドはアンデッドになって元々の顔を失ってはいるものの地球出身の俺達にとってはアンデッドの顔はキツいだろうと配慮して木々で偽物の顔を形成している。


だから、実際の顔では無いのだが、余りにも似過ぎているのだ。


木々で作った顔とは言っても、エルキンドは元々の顔に出来るだけ似せて作ったと言っていた。


つまり、この魔術師はそのエルキンドの素顔とほぼ同じ顔をしていると言う事もある。


だが、そっくりさんとは言えないレベルで似ているのだ。


まるで、親子の様に。


確かに、エルキンドもかなりの腕を持つ魔術師だ。


だけど、生前にロークィンドであんな大規模な戦争を起こした事は無い筈だ。


エルキンドは仮にも貴族であり、あんな大規模な戦争に参加して虐殺を行えば、貴族爵位剥奪もありえる。


エルキンドの家系は確か、武闘派貴族で戦争にも出る事はあった。


そして、エルキンドはAランクの冒険者でもある。


だけど、今俺の夢に写っている魔術師は恐らくAランクどころの強さでは無い。


パラレルワールドや並行世界?それも想定したが、どうもおかしい。


もしくは、これが俺の記憶の中で捏造された只の悪夢であると言う事。


正直、俺は最後の可能性を信じたいがその可能性は低そうだ。


まだ可能性があるとしたら、ほぼ同時刻で起こっているロークィンドでの出来事をここで見ていると言う可能性だ。


この迷宮は元々ロークィンドの一部だったが、次元の戦争と呼ばれる大戦争によって生じた次元の亀裂で隔離されたと聞いている。


あの魔術師が、エルキンドの子孫の可能性を考えてみる。


エルキンドの情報やロークィンドの重要な情報は、ボードゲームをやる時にエルキンドが長々と喋ってくれているので割と俺の中で補填が効いている。


エルキンドはこの迷宮に用があって来ていた。


エルキンド曰く、子供は居らず妻は自分の領土がある国に置いて護衛任務を引き受けたと言う。


そして、そのエルキンドが持っている領土の国からこの迷宮までは馬車や船を乗り継いでも普通ならば一年以上かかると言う話だ。


子供は居ないと言う情報から考えて、子孫説が消えるかと俺も思った。


だが、俺は普通ならばと言う言葉に違和感を感じた。


エルキンドは、馬車や船と言った。


この頃一般的では無かったとしても貴族で、高ランクの冒険者であるエルキンドならばもう少し早く行く手段もあったかもしれない。


それこそ、転移魔法やこの魔術師が使っている魔導船と言う選択肢だ。


そして、エルキンドが、領土を出る前に色々やっていたとしたならばエルキンドの子供がエルキンドが知らないうちに出来ていてもおかしくは無い。


ただ、エルキンドが一切子供が出来たと言う事を知らないのも不思議すぎる。


幾ら旅の途中とは言っても文通位は交わせる筈だ。


妊娠したかどうかを調べる検査薬は無いかもしれない。


だが、妊娠も半年程あれば妊婦の腹は膨らんで気がつく筈だ。


エルキンドが、相当急ぎの用事で文通を交わす時間が無かったのか……それとも、それを行えない状況にあったかだ。


しかし、一番の謎は次元の戦争と言う重要な時に高ランクの冒険者であるエルキンドが戦争の強制招致を強引に断ってまで受けた護衛依頼とは何だったのだろうか?


普通に考えてみれば、次元の戦争と言う大規模な戦争が起きている時にそんなに長い旅路を普通には渡れない筈だ。


エルキンドも何か俺達に色々隠しているな……。


彼も良い人そうだが、俺の中で警戒しておこう。


話を戻すが、彼に子孫がいると仮定し、時間軸も今と揃えると……あれから千年以上の年月が流れている。





馬鹿な話だ。


それだけ先の子孫が、あれだけエルキンドの顔の遺伝子を濃く持つ訳が無い!


隔世遺伝にしても遠すぎる。


増してや、エルキンドの種族は人間だ。


それなのに、俺は何故前回夢を見た時に老人と思ったんだ……?


見た目は若い。


しかも人間。


顔はエルキンドと瓜二つ。


何故だ?


俺は魔術師の声を聞いた瞬間に、思ったんだ。


この人の感情は、たった数十年で培われた程度の安い感情では無い。


何百年も生きて培った感情だと……。




俺は自分の思考から抜け出して視界を再び戻すと戦場の状況は少し進展していた。


魔術師は、兵士に向けた指を下ろしており、魔術師の後ろで両手を合わしてドス黒いオーラを集中させている魔人……いや、魔神と言った方が楽しいだろうか?


その方向にチラリと目を向けてニヤリと笑った。


その魔神が現れた事によってその戦場はより騒然とする。


魔術師が連れてきた格上のマシン兵と熾烈な戦いを繰り広げている強靭な戦士達ですら、その姿を目にして驚きの表情を浮かべる。


その魔術師と魔神はどこか、知り合いの様な雰囲気を醸し出しており魔神からは先程の猛者達よりも強靭な力を夢の世界でもひしひしと俺は感じた。













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