22話 恐怖の感情を押し留めて
洞窟エリア突入です!
俺達は十五階層のボスを倒した次の日俺達は十六階層に行く準備を整えていた。だが、皆の表情は相変わらず暗いままだ。
「おはようございます」
朝の挨拶をジジイにする。するとジジイは俺達を一通り見渡してから申し訳無さそうな顔で言った。
「すまんのう、、、お主らも次の階層に早く進みたい所じゃろうがまだ装備が完成していないのじゃ、、、潮風とかでかなり傷んでおってのう、、、」
だが、俺には何故か別の意味があるように思えた。俺達は昨日ボスと戦い見事撃破した。だが、その戦いは酷いものだった。常に劣勢で更にはパニックに陥り俺達も死にかける大怪我までした、、、未だに思い出すだけで手が震える。もしあのまま死んでいたかと考えると、、、だがこの様な事を考えていてはこの先の迷宮探索は出来なくなるだろう。これは教訓だ。怖い、、、だが、仕方がないんだ。もしかするとジジイは俺達に昨日の事としっかりと向き合わせて認めさせようとしているのかもしれない。恐らく今のままでは俺達は取り返しのつかない事になる気がする。そんな事を考えながら自室に戻り俺は日記を書く事にした。昨日感じた事、、、それから学ぶ事、課題点などを纏めて書いていく。これがいつか役に立つ事を信じて。俺達が居なくなった後、添島をジジイは引き止めた。
「分かってるぜ。昨日の事だろう?」
「そうじゃ、、、昨日お主が気絶しておった間に起こった事を話そう」
そうやってジジイは添島に固有スキル気貯蔵の事や添島が気絶している間の事を話した。
「そうか、それは迷惑をかけたな」
添島は素直に謝った。しかし、添島が居なかったら撤退の道以外無かっただろうにだ。
「ほう、それにしてもお主は他の者とは目つきが違うがお主は死ぬのが怖く無いのかの?」
ジジイは謝る添島の目を見て何かに気づいた様な感じで添島に尋ねた。
「まぁな、、、怖いさ、、、だが、ここの世界に来た時点で覚悟はしていたさ、、、そして、何回も一人で悩んだ、、、だが気づいた、考えるだけ無駄だってな、、、人は死ぬ時は死ぬんだ。どうせ死ぬなら全力でやってから死にたいだろ?くよくよしてて恐怖に慄き無残に死ぬのは俺は御免だな」
添島ははっきりとそう言い切った。
「ハッハッハッ!流石じゃのう、、、他の人よりも先に現実を受け入れ、克服していたか、、、お主は心が強いとは思っていたが、これほどまでとはな、、、それなら今日の時間はお主にとってはいらぬな?武具は出来ている、、、武具を取るのじゃ、、、お主の固有スキル、、、もっと有効に使いたいじゃろう?ワシに全力でかかって来い!」
ジジイは高々に笑い、添島を向かい撃つ。しばらくの時間が経過し、ジジイは言った。
「まぁこれくらいコントロール出来れば昨日の様に暴発はせんじゃろう、、、お主の仲間は今現実に気づいた、、、受け入れる準備を手伝ってやれれば良いかの、、、」
添島は頷き自室へと戻る。そして、個人個人が自分と戦いながら次の日を迎え、ジジイから装備を受け取り、次の階層へと足を踏み出したのであった。そして俺達は昨日よりは少しマシになった顔を鉢合わせ転移碑に触れて叫んだ。
「「転移!」」
俺達が転移した瞬間視界が真っ暗闇に包まれた。再び俺達の中に恐怖の感情が宿る、、、見えるのは淡く輝く転移碑だけだ。だがその恐怖の感情を噛み殺しながら指示を出す。
「重光、、、動光だ、、、」
「動光!」
重光が魔法を詠唱した瞬間淡い光が重光の元から現れ俺達の周りを漂う。これで視界は確保できた、、、だが、重光はまだ並立詠唱が上手く出来ないのだ、、、この状態だとまともに魔法を撃つだけで動光が不安定になってしまう、、、そうなれば戦闘は困難だろう。今回は重光の魔法攻撃や魔法防御には頼れなさそうだ。そして、光が確保できた俺達は周りを確認する。そこは何処かの洞窟だろうか、、、?いや、これは迷宮内の洞窟だ。天井も含めて全体を岩が覆っている。そして、少し臭い。これは何かの生物が腐った臭いだろうか?とてもではないが気持ちの良い環境では無い。そう思いながら足を踏み出した時時だった、、、空中から何か音が聞こえた。気の所為かとは思ったが聞こえるのだ。だが今の俺達には空中を攻撃する手段が少ない。重光の魔法は使えない為、亜蓮の投擲位だろうか?だが遠くは暗く、よく見えないし、投擲の威力もたかが知れている。俺はそう思い前を見る、、、すると地中の方から何かが迫ってくる音がした。
「おい、何かがいるぞ、、、」
浜辺階層と同じ展開なのだが、視界が暗いここでは一層恐怖を引き立てる。そして、、、
(ズガガガガ!)
目の前の地面が盛り上がりながら俺の方に迫って来た。
「危ない!っ」
俺は危険を感じ、横に跳んで避ける、、、だが
「何っ!」
地面の岩は盛り上がりながら俺を追い俺の足を捉えて俺を拘束した。
(ギィィィイ!)
そして、地面から何かの音が迫ってくる、、、だが俺は足の岩をもう一方の足で蹴って壊し、地中から迫って来た何かを避けた。
(カチン!)
「くそっ、、、何だ!」
そこには巨大な顎を持ったムカデがいた。まだ頭しか出ていないがそのサイズは頭だけでもサッカーボール位はあるだろう。危なかった。あの顎に、、、!?、、、俺はムカデの顎をみてシャコの鋏に挟まれた時の事を思い出し、身体が震え出すがその恐怖を押し留める、、、その時だった、、、!
「おい!あれを見ろ!」
添島が指を指した、、、その先には暗闇の中、、、空中も含めて沢山の蠢く影があったのであった。
〜〜〜単語やスキルなど〜〜〜
動光…淡い光を空中に浮かべ操作する。光源になる。攻撃的効果はほぼ無い。
巨大ムカデ…土魔法を使い、敵を拘束し地面から大きな顎で敵を噛み砕こうとする。敵を温度で感知している為暗くても見える。頭だけでもサッカーボール程のサイズである。