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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
11章 闘技場エリア
222/544

219話 手助け

九頭大蛇之矢ヒュドラ・アロー!!!」


ヘラクレスは自身の燃え盛る腕を自分の胸部に強引に埋め込み毒々しい紫色のオーラを螺旋状に発する矢を生成する。


その矢を引き抜いたヘラクレスの胸部は毒々しい紫色に染まり瞬く間にヘラクレスの全身に広がった。


そして、その矢を弓に焚べてきりきりと弓が軋む音を立て、ヘラクレスは弓を引き絞って言った。


「終わりだ」


すると俺の横に座っていた女が藁人形を作る手を止めてスッと音も立てずに立ち上がって言った。


「支援いる?」


俺はその言葉を直ぐには理解出来なかった。


「彼、死ぬよ?」

超魔ちょうまやれ」

「分かったー」


闇智に超魔と呼ばれた女はやる気の無さそうな目を少しだけ開けて指をくいっとヘラクレスの方へと向けて曲げた。


「何を!?お前達!水を差すつもりか!」


「悪いな。そいつ達は死んで貰っては困るんでな。それに俺は一切戦いに介入しないとは言って無いぞ?」


ヘラクレスが怒号を響かせ、弓を引き絞った矢を放ち弦が震え周りの空気を共鳴する様にドンッと言う到底弓が立てたとは思えない音が鳴り響いて毒を纏った矢が空気を切り裂きながら飛翔する。


その速度は音速……いや、それ以上かも知れない。


目にも止まらぬ速度で飛翔するが、超魔が指を曲げた方向にズレて飛翔して添島の後ろの闘技場の壁に突き刺さって闘技場の壁を砕いた。


「がぁっ!?」


それと同時にヘラクレスに添島が渾身の力を振り絞った大剣が肩に食い込んでヘラクレスは悲鳴をあげる。


添島はもう一撃を放とうとするが、オーラドームの影響か、その腕が振るわれる事は無かった。


ヘラクレスも膝をついて大粒の汗をだらだらと垂らしながら闇智の方を睨みつける。


矢が刺さった場所は大きく倒壊しており、紫色に壁が変色している事から毒の強さと、威力の強さが伺える。


もしも食らっていたら、いや、あの速度の攻撃だったならば万全の状態でも回避は不可能だ。


だが、あれは間違い無く即死技だったのは間違いない。


ヘラクレスの身体は全体的に紫色に変色しており、もう動くのも不可能に近い。


しかし、ヘラクレスは身体の炎を消さなかった。


「また、力を付けて自分達の力でリベンジしに来い!待っているぞ!」


ヘラクレスは自身の最期まで叫び続け、炎による自傷ダメージで力尽きた。


それにしても、俺達は壊滅的な状況だ。


この戦いが終わっても何故か素直に喜べない自分がいるのだ。


今回、闇智達の助太刀が無ければ間違い無く俺達は死んでいた可能性が高い。


いや、確実だ。


全員が無事に試合が終了する事は無かっただろう。


これがAランクモンスターの関門……。


これでもAランクモンスターの下の方だと言うのだから驚きだ。


本当に俺達はジジイ達を超える事は出来るのだろうか?

一旦ボスも倒したし、拠点に戻ろうか……とも思ったが良く良く考えればジジイもいるから戻ってもこの状態だとどうしようもない。


そう思ったが、超魔が再び試合が終わったのを見て観客席から飛び降りる。


その飛び降りる動きは卓越しており、着地した時に一切の音を立てず、腰までかかった長いロングローブの裾も一切揺れなかった。


超魔は怪我をしている俺達のメンバーに次々と触れていき傷を治して行く。


体力は回復しないにしろ、傷は外から見て分からない程まで一瞬で回復した。


ジジイが使った全快は体力まで回復してバフまでかかったが、超魔の使った魔法?はそこまでの効果は持たない様だ。


だが、瀕死の状態の傷跡を一瞬にして涼しい顔で完治させて行くのだから超魔も相当な化け物なのだろう。


「今、失礼な事思った?」


超魔は俺の言葉に反応したが、まるでどうでも良いとばかりにゆっくりと歩き出して闇智の場所に戻った。


「お前達。一日時間をやる。休め。話はそれからだ。装備は仮の物を渡そう」


闇智はぶっきら棒にそう言ってその場に座って目を瞑った。


ちょっと待て。俺達は拠点に戻らずにここで休むのか?


闇智達の表情を見る限り、その様だ。

一人だけ、顔が見えない奴がいるが……。


闇智が右手を真っ直ぐに振り下ろして隣の鎧の男を狙って拳を叩き込む。



(ドガァァアン!)


大きな音が鳴り響き、鎧の男がいる場所以外の闘技場の地面が崩壊して大きく沈む。


俺はその様子を見て固まった。


なんだ、あの威力……ヘラクレスなんて比にならない位の威力じゃねえかよ……。


しかし、それより驚いたのが、闇智にとってはその一撃が軽く振るった一撃と言う事。


そして……


「試合は終わったのか?大した物は見れなかったな」

「それはそうだろ。俺は期待などしていない」

「鍛える時にまた起こしてくれ」


その一撃を寝ながらも闇智の腕を掴んで防いだ鎧の男の強さに俺は見てはいけない物を見ている気分になった。


しかも、その男はまた眠りに着いた。


「まぁ、こう言う訳だ。こんな俺達でも勝てない相手はいるもんだぜ?だから明日お前達を俺が鍛えてやる。全力でかかって来いよ」


闇智はそう言いながらジジイの方を見て、目を細めてフードを脱ぐ。


フードを脱ぐと漆黒の縮毛の長い髪の毛が姿を見せ、鋭くて黒い目が俺達を捉える。


顎と口元には短めの髭が生えているが、闇智の顔全体の印象は不気味ではあるが、鋭さを含んでおり、どこかかっこ良く見えた。


しかし、闇智の言った言葉に対して俺は反応出来なかった。


無理だ。


ボコボコにされる。


取り敢えず気絶した仲間が復活するまではこの事は考えない様に俺は頭を捻った。






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