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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
11章 闘技場エリア
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213話 ヘラクレス

「げっ……お前ら何しに来た……?」


五十階層にとある人物に連れられて来た俺達は闘技場の真ん中で驚いた顔をしている筋骨悠々とした人物を見つける。


五十階層には受付嬢が存在せずに戦士だけが存在していた。


確か相手はヘラクレスの筈だ……。


しかし、ヘラクレスと思われる本人は俺達を連れて来た人物を見て一歩退き、冷や汗を流す。


「いや、今回戦うのは俺達じゃねえーーこいつらだ」


ヘラクレスの表情を読み取ったとある人物は親指で俺達の方を指差した。


「そうか……お前達相手だと俺も何秒持つか分からねえからそれは助かるぜ」

「俺はそこで観戦させて頂こう。武運を祈る……因みにだが、ジジイも何気無く今回は来てるみたいだぜ?」


え?


俺はとある人物の言葉を聞いて驚く。


「良く気が付いたのう?」

「いい加減俺を子供扱いするのは止めろ」


今更この人物達を隠す必要も無いので、言うが闇智とジジイである。


茨燕も勿論いる。


ジジイは俺達の後ろからニカっと笑みを浮かべて闇智と会話をする。


この二人前より仲良くなったか?


何かそんな気がする。


それか、俺達への最初の印象付けの為に二人とも演技をしていた可能性も考えられる。


闘技場の真ん中に立っているヘラクレスの頰は引き攣り緊張が窺える。


つまり、ヘラクレスにとってあの二人……いや、二人じゃないな……闇智の仲間達を含むあの面子は相当な強者なのだろう。


ヘラクレスのいるこの階層は他のエリアで言う、ボスエリア的位置付けだ。


つまり、ヘラクレスはボス格のモンスターでかなり強力なモンスターの筈だ。


それこそ、今まで戦って来たワイトキングなどよりも強い。


そのモンスターが恐れている、ヘラクレスの性格的には恐れると言うよりは身体が昂るって方だろうけどな。


正直俺はあの二人の強さをイマイチ知らない。


実際にジジイが俺達と戦った時はかなり手加減をしていた。


しかも、あの時の俺達の実力は元々いた地球でのステータスに毛が生えた程度……その時の俺達にジジイの強さを見切れる筈も無かった。


だが、あそこまで威力を加減出来ると言う事は相当なコントロール能力を秘めているのは確かだ。


闇智達が観客席に座り、ジジイが早速キャッチャー程の大きさがあるコップで豪快に麦酒の様な物を一気飲みする。


「さてと、どれぐらい時間が必要だ?お前達の準備が整うまで俺は待とう」


ヘラクレスは腰に付いている大きな弓を背中の革綱にかけて腕を組んだ。


ヘラクレスは身長二メートルほどの大男だ。


筋骨悠々とした身体は、より一層威圧感を強める。

残念ながら先程のやり取りのせいで、威圧感が半減した様な気がするが気のせいだろう。


頭には上半分だけを覆う形で兜を被っており、目の部分が紅く輝いている。


兜には金色の紋章が刻まれており、そこから身体にかけてラインが入っており、淡く発光している。


顎からは長い髭が伸びており、上半身は裸だ。


何故生身の肉体が発光しているのかは分からない。


腰部分は局部とその周囲を覆う様な形で金属の防具が付けられており、木をそのまま掘り出した様な棍棒が括り付けられている。


俺達の準備は既に完了した事を伝えるとヘラクレスは行くぞとだけ言って裸足の足で大地を踏み込んだ。


その瞬間ヘラクレスの兜の金色の紋章が右側は赤色、左側は緑色に輝き、身体に刻まれたラインもその色に輝きを放った。


そして、一瞬大地が揺れて添島の方へと緊迫する。


「――ぐっ!?重い!」

「中々良い戦士がいるな!」


ヘラクレスは腰に括り付けていた棍棒を引き抜いて力のままに添島を殴りつける。


添島は大剣でガードするが、あまりの衝撃に顔を歪める。


添島が単純に力で押されている!?


ゴリアテの時も力で押されてはいたものの、添島は攻めの姿勢に転じてはいた、しかし、今の一手で添島は体勢を崩した。


五重強化クィンティプルアップ撃防速マルチ!」


山西のバフを受けた俺達前衛は、添島を殴り付けたヘラクレスの方へと向かう。


そして、バフを受けた添島も何とか足を地面に付けて踏ん張る。


少しでも気を抜けば添島は吹き飛ばされそうで、ヘラクレスの攻撃をいなす事も出来ない。


明らかにゴリアテとは攻撃の威力が比較にならない。


「いい腕だ……いい腕なんだがな……!」


ヘラクレスはぶつぶつと呟きながら添島に押し当てていた棍棒を握る手に力を込めて血管を浮き上がらせる。


そして、身体の右側の紅いラインが激しく発光した。


影騎士シャドウナイト!」


亜蓮の手からナイフが飛び影騎士が添島の方向とは反対側にヘラクレスの方へと直進する。


俺はヘラクレスの後ろへと周り両手に力を込めた。


だが


「行くぞ?炎之武技フレイム・マーシャルアーツ!!!」

「「――!?」」


ヘラクレスがそう叫んだ瞬間右手に持った棍棒が燃え盛り巨大な炎を舞わせる。


そして、炎に添島は貫かれて後方に煙を上げながら吹き飛ぶ。


そして、そのままの勢いでヘラクレスは巨大な炎を噴出させながら回転し、影騎士を一撃で地面に叩きつけて消滅させた。


地面からは大きな火柱が上がっており、その威力を物語る。


そして、ヘラクレスはそのまま全身を炎に包み、棍棒を炎で覆い大きさ五メートルはある巨大な炎の斧を創り出した。


内部圧縮属性付与インプレスエンチャント!!!氷火アイスバーン!!!」


俺の攻撃とヘラクレスの巨大な斧がぶつかり合い俺は炎に包まれ吹き飛ばされる。


馬鹿な……!?俺のアイスバーンが完全に押し負けてる!?


俺は全身に水属性を纏わせ体に着火した火を鎮火させる。


そして、アクアが空中から放った水球をヘラクレスはその斧をぐるりと回して片手で水球をかち割ってにやりと笑い、影騎士を一撃で潰されて驚いている亜蓮の方に向かって亜蓮の首根っこを左手で掴みにかかるが間一髪のところで亜蓮は回避する。


しかし、ヘラクレスは攻撃の手を緩めない。


自分の周囲を覆う様に炎を展開して俺達の退路を断ち、炎の斧を振るった。


そのヘラクレスの姿は圧巻――そのものだった。








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