211話 超速と超加速
「連鎖属性付与! 氷!」
俺は両手を広げてアキレスとペルセウス含む周囲を冷気で覆い、アキレスとペルセウスの足元には氷が張り、身体には霜が降る。
俺は白い息を吐きながらサインエンチャントを発動させて、白煙の中に自らの分身の姿を置いた。
(ギンッ!)
「!?ペルセウス!?」
「おい、アキレス……選択を間違えるな」
ギンッと言う甲高い金属音が響き、俺と添島は白煙の外から姿を現す。
アキレスは白煙の中に突っ込んで行き、ペルセウスの剣に阻まれた。
ペルセウスはアキレスを剣を搗ち合わせた勢いでそのまま添島の方へと飛ばして、俺の方に標的を定めようとするが、アキレスの足とペルセウスの腕が凍り、接合される。
山西ナイスだ!
流石に腕が塞がった状態ではペルセウスも俺の攻撃をいなす事は不可能だろう。
「内部圧縮属性付与 氷火!」
「……魔力之翼」
は?
ペルセウスが小言で魔法を詠唱した瞬間ペルセウスの背中には輝く翼が生え、氷を割りながらかなりの速度で上昇して、俺の攻撃から離脱した。
しかし、上空で何かが破裂した音がしてペルセウスが地面に四つん這いの状態で着地した。
そして、空中に身動きの取れない状態で拘束されたアキレスは添島の振り回す大剣を空中で一回転して、氷を砕き、蹴りで大剣の上を渡って離脱した所で俺の攻撃を食らって吹き飛んだ。
ペルセウスには俺の攻撃は当てられなかったが、アキレスには確実に攻撃が入った筈だ……。
ペルセウスは立ち上がって鎧に着いた傷を見て手で払っている。
「いやぁ、危ねぇな……もう少しでまともに食らう所だったぜ」
おい、ちょっと待て。
なんでお前――。
「ぐはっ!?」
「ペルセウス。だから速さこそ最高の盾にもなるし矛にもなるって言ったろ?」
不意に、正面から声が聞こえ、俺はアキレスの蹴りを食らって宙に浮いた。
ペルセウスは少し間を持たせて添島の方を向き加速する。
横から飛んで来たナイフを小盾で難無く吹き飛ばしてペルセウスの勢いは一切衰えない。
ペルセウスの急加速、アキレスの超速度……俺達はその二人に翻弄されているのか?
アキレスは何度か攻撃を当てた様に見えたが、事実上はアキレスにダメージは入っていなかった。
そして、亜蓮のシャドウナイトとぶつかった時はアキレスは二人いた様に見えたーー。
「おいおい、お前。そんなに考え事をしている余裕があるって言うのか?」
アキレスは空中に浮いた俺を追撃し、右手の小型の槍を構えた。
翼か……。
俺は両手を刀にかけて背中に向かってマナを圧縮させる。
そして、
「なんだと!?」
俺は背中から炎を噴出させて、空中に浮いた体勢から一気に距離を詰めてアキレスの間合いに入り、某アニメの立◯起動装置の様に回転しながら刀を引き抜きすれ違った瞬間にアキレスの胴体に斬撃を叩き込んだ。
「がっ!?」
「アキレス!」
「おい、お前の相手は俺だ」
アキレスは身体から血を吹き上がらせて、膝を地面に着く。
ペルセウスがアキレスを心配する声が上がるが添島がペルセウスが支援に入る事を許さない。
そして、ペルセウスも動揺したのか隙が生まれ、そのタイミングを添島は見逃さなかった。
基本ペルセウスの戦い方は受け止める戦いでは無い。
軽く受けて受け流しながら戦う戦闘スタイルなのだ。
それで添島の重い攻撃を受ける事は出来ない。
ペルセウスは咄嗟にバックラーでガードさせて後ろに吹き飛ぶがその後ろから巨大な水の槍がペルセウスに向かって飛んでくる。
ペルセウスはそのまま翼を再び形成して空中に逃げるが背中に亜蓮のナイフを受けて地面に叩きつけられた。
そして、俺も制御が効かずに地面に叩きつけられる。
出来た……。
腕以外の部位からもインプレスエンチャントを使える事が分かったのは良いが、腕よりも感覚的に難しい上に腕と違って体のバランスも取りにくい。
俺は自分の技で地面にかなりの速度で叩きつけられた影響かかなり痛手を負ってしまった。
もしかしたら、着地した際に肩の骨とか折れてるかも知れない。
アキレスも同様身体には日本の大きな傷が入っており、大量の血を流しながら立ち上がる。
「流石に今の攻撃は効いたぜ……分身を作っていたらもっと深手を負っていたのは間違い無かったな」
アキレスは笑いながら自身の傷を抑えて俺に対して話しかける。
「しっかりと構えてろ……よ?なぁ、ペルセウス」
「そうだな」
そう言ったアキレスの身体が、二重にぶれる。
いや、違う……二重どころでは無い……二重、三重、四重と次々とアキレスの姿は分裂して行く。
そして、ペルセウスはその大量に分裂したアキレスに紛れて分からなくなった。
「「ペルセウス!お前のエネルギーを使わせて貰う!」」
「「最後にしようぜ?この技を使った以上はもう俺達も長くはねえからよ」」
大量に分身したアキレスはニヤリと好戦的な笑みを浮かべて息を荒らげ言った。




