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学校内の迷宮(ダンジョン)  作者: 蕈 涅銘
10章 墓地エリア
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200話 大きな妄想

「まぁ、内容としては単純だ。あの技を使う。だが、今じゃない」


添島は引き続き話しながら辺りのスケルトン達を吹き飛ばす。


あの技とは恐らくオーラドームの事だろうな。

確かにあの技ならば流石のワイトキングでも生身で受け止められる攻撃とは思わない。


だが、ワイトキングに魔法を使われては避けられる可能性も高くオーラドームの弱点であるスキル発動後の硬直が厄介だ。


今このエリアにいる敵はワイトキングだけでは無い。


大量のスケルトンを主体としたアンデッドモンスター達が地上では待ち構えている。


その状態で硬直を起こすのは地雷だ。


しかし、今のワイトキング相手だと誰もワイトキングの隙を生み出す事は出来ない。


亜蓮のシャドウウォーリアも大規模な範囲攻撃で纏めて除去され、更には俺達にまでスリップダメージが入る事態だ。


そして、そろそろアクアのオリヴィエで延長は出来ているものの山西の補助魔法の強化時間が切れそうだ。


山西のマナの残量的にも、もう一度掛け直す事は不可能に近い。


いや、オーバーマルチで掛けて無い分ギリギリ使えるのか?


山西が今回使ったのは確かブレイクだ。


だが、分子超越を多様している以上はマナの消費が激しい。


今の所山西がマナ不足を起こしている様子は無いが、もう一度あのバフをかけるとしたらほぼ確実にあの能力を発動するだろう。


そうなると、集団戦だと不利になる。


ワイトキング相手に試合を長引かせるのは、愚策でしか無い。


「痛て……影武者シャドウウォーリアでヘイトを稼げないって言うのかよ……」


吹き飛ばされた亜蓮は表面の爛れた頰の皮膚を撫でながらムッとした様子で起き上がり再び紫色のエネルギーを纏う。


「ヤハリ下級アンデッド達では、歯ガ立たヌカ?雷光ライトニング――ム?」


ワイトキングは遥か上空から後方のアクアランスを詠唱している重光達に向かって太い雷を放とうとして指の向きを変える。


「ぐわぁぁぁあ!」

「無駄ナ事ヲ……恐怖スケアー


亜蓮が飛ばしたシャドウウォーリアをライトニングで一瞬にして消し飛ばして亜蓮にライトニングを直撃させたワイトキングはアクアランスを放とうとする重光達の方へと黒い靄を飛ばし、重光と山西は詠唱を強制的に中断される。


(アクア。重光と山西の状態異常の解除を頼む)

(分かった)


俺は、添島から耳打ちをされアンデッドを蹴散らしながらワイトキングへの距離を詰める。


「何度でもやってやるさ。やり方を変えてな!影武者シャドウウォーリア!」


亜蓮は息を荒らげながら空中をマジックインジェクションで飛び回りワイトキングを執拗に狙い撃つ。


馬鹿やろう!ワイトキングの攻撃は即死攻撃こそ無いものの連続で食らって良いものでは無いぞ!?


亜蓮の奴何を考えているんだ!


確かに亜蓮は身のこなしも素早く、空中も移動できる為地上のスケルトンアンデッド達を無視して行動出来る。


だが、ワイトキングの攻撃は何処にいても当たる。

例え、それが亜蓮でも。


「攻撃する時に俺達は考え過ぎなんだろ?それならば無心で全力でお前を狙い撃つだけだ」

「カッカッカッ!ソウカ。確カニソウダ。ワシはソウ言ッタ。ダガソレデ得ると物ハ何ダ?良ク考エヨ雷光ライトニング


「亜蓮!?」

「足を止めるな!」


亜蓮が再びワイトキングの雷に撃たれて吹き飛び地面に叩きつけられ、俺は思わず足を止める。


すまん、添島。俺はやっぱりお前の作戦には従えない。


「ぐわぁぁぁあ!俺が……得る……物は……――」


亜蓮の周りにはアンデッドが集り出し亜蓮は全身から煙を上げて立ち上がる事が出来ない。


しかし、亜蓮は口の端をニッと上げた。


「妄想だ」


亜蓮はそう言って倒れた状態でナイフを三本だけ握る。


「亜蓮!連鎖属性付与チェインエンチャント ファイア!」


俺は近くのアンデッド達を一斉に吹き飛ばして亜蓮の元へと向かう。


だが、距離が遠い。


間に合わない。


「俺の盛大な妄想がこれで終わるのは少し頂けないからよ。もうちょっと妄想を膨らまさせてくれよ!影武者シャドウウォーリア


亜蓮は最後に大声で叫んで、マナを大量に込めた……いや、残りのマナ全てだろうな。

三本のナイフを正面のアンデッド達を貫通する様にワイトキング目掛けて投げた。


すると、三本のナイフは形を変えて紫色の大きな靄が肥大化して行く。


その靄は目の前のアンデッド達を纏めて吸い込んで行く。


「カッカッカッ!面白イゾ。コレならば、お主ラの未来ガ楽シミカ。成長ヲ確ト見届ケタ。ワシヲ打チ破ッテ見セヨ!不死者回帰アンデッドリグレッション


それを見たワイトキングは嬉しそうに笑い召喚したアンデッド達全ての魂を吸収する。


スケルトン達からは黒い霧がワイトキングに向かって一直線に吸い込まれスケルトン達は魂を失ったかの様に倒れていく。


そして、ワイトキングのエネルギーが一気に膨らんだ。


「安元!」

「分かってる!アクア!」


俺はスケルトン達が一気に倒れて広くなった荒野を走り添島と合流し、重光達の治療を既に終えたアクアの所へと向かう。


四列詠唱フォアライン・マジック


ワイトキングは四列詠唱と呟き、一瞬にして魔法を完成させる。


ワイトキングの周囲には大量の火球がぐるぐると周っておりワイトキングの身体の中心には黒いエネルギーが収束していく。


そして、ワイトキングの身体には稲妻が迸り、口からは白い息を吐いている。


亜蓮の放った渾身のシャドウウォーリアは空中で大盾と剣を持った騎士の姿に変化してワイトキングに向かって空中を一直線に進む。


そして、ワイトキングは手を振り下ろして大量の火球と雷光を一斉にシャドウウォーリアに向かって放った。


バリバリと言う音が響き、とてつもない熱量が地上にいる俺達をも襲う。


しかし、亜蓮の放ったシャドウウォーリアは盾をしっかりと構えてその魔法を受け止めていた。


二体は当たった瞬間に消滅してしまったが、最後の一体は今にも消えそうな状態で空中でワイトキングの魔法を耐え抜いてワイトキングの方向へと空中を駆け出した。


俺と添島はシャドウウォーリアがワイトキングの魔法と拮抗している間にアクアに乗ってワイトキングの上空に移動していた。


そして、バイパスをアクアと添島三人の間で繋ぐ。


「添島思いっ切り行ってこい!」

「おうよ!!気円蓋オーラドーム!!!」


ワイトキングの方で黒いエネルギーが爆発して視界が真っ暗になりマナがゴッソリと持っていかれる。


アクアと俺は意識朦朧としたまま何か熱いが柔らかい物に着地した。


(ドンッ)


その上空では、金色の光と炎を纏った添島と身体を燃やすワイトキングが破裂音を響かせてお互いに煙を上げながら落下していく姿が見えた。


添島の足元には薄青色の透明な物体が生成されて、受け止められるのが見えた。


「やったのか……?」


俺はマナ切れ寸前の頭を奮い立てて気絶したアクアを撫でながら立ち上がる。


「安元君、身体は?」

「大丈夫だ。それよりも、奴を本当に倒せたのか確認を……!?」


回復魔法をかけようと緑色のエネルギーを腕に纏った重光を見ようとして俺の表情は絶望感に打ちひしがれた。


そんな馬鹿な!?


「良クヤッタ……もうお主ラならば先二進ンデモ……問題無カロウ……」


そこには重光の後ろで、魔法陣が形成されボロボロになった身体で杖を地面についたワイトキングが笑みを浮かべて出現したのだった。














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