199話 高みの見物
ワイトキングが遂に本気を出した。
だが、俺には何故かワイトキングが俺達を本気で殺そうとしているようには見えなかった。
ワイトキングは俺達の力を引き出すのが目的と言っていた。
そうなると、この迷宮のボスモンスター全般的に関する概念が変わる。
だが、それは俺の迷宮に対する謎をより一層深めるだけだ。
つまり、ボスモンスターにも人格がしっかりと備わっていて、迷宮の侵入者を排除すると言う意に反すると言う事となる。
そして、この迷宮は侵入というよりは俺達は召喚を受けた様に感じた。
謎だ。
「雷光」
空中に浮かんだワイトキングは己の実力を試すかの様に杖を光らせて先程までとは比べ物にならない程太い雷光を地面に向かって放って満足気だ。
雷光はバリバリと音を立てながら、地面を黒く焦がす。
先陣を切ったスケルトンキャバリィソルジャーが、剣と盾を構えてこちらへと突撃して来る。
ボス部屋に入る前に行ったディープフレイムを発動する隙はワイトキングには無い。
「共鳴属性付与」
俺は最後のカオストロ製のマナポーションを片手に飲み干して道を繋ぐように爆発を起こして敵の戦力を分散させる。
「散開!っ!?」
最初の様に固まってしまっては、終わりだ。
最初はスケルトンに囲まれて身動きを封じられてしまってワイトキングに翻弄された。
それならば、事前に逃げ道を作っておくのは当然だろう。
スケルトンキャバリィソルジャーが、地雷を踏んで周りのアンデッド達を巻き込みながら爆発を起こす。
俺は頰に痛みを感じたが、止まらずサークル状に散開する。
そこで、背中側を熱い炎が通り抜ける。
リッチか!?
そして、上空からは圧倒的な熱量を感じて上を見て歯を食いしばる。
ワイトキングは自身の周りに大量の火球を浮かべて笑みを浮かべていた。
あの短時間であんなに大量に火球を生み出したと言うのか?俄かには信じ難い。
そして、ワイトキングが腕を振り下ろした途端上空から火球が嵐の様にタイミングをずらしてアンデッドごと俺達を襲う。
ワイトキングにとっては生み出したアンデッドはただの足止めの駒にしか過ぎないと言うのか?
そして、ワイトキングが上空にいる限り俺達の攻撃を当てる手段は乏しい。
「藍水槍!」
重光がアクアランスの詠唱を完了させてワイトキングに向かって放つが、ワイトキングは自身の周りに浮かべた火球を何個かぶつける事によって重光の攻撃は相殺された。
明らかな手数不足だ。
ワイトキングの放った火球は空中で軌道を変えて俺達の咆哮を正確に狙って飛んで来る。
それと同時にスケルトンアーチャーが引き絞った弓を放ちそれに覆い被さる様に上空からは大量の矢が俺達を襲う。
「影武者」
「分子超越」
「カッカッカッ!ワシの魔法は止メラレンヨ雷光」
亜蓮が、ワイトキングの攻撃を引き寄せる為にヘイトを集めて山西が黒い天井を形成する。
だが、その瞬間ワイトキング火球を亜蓮のナイフの方向に撃ち込む直前にライトニングを放ち火球同士をライトニングで連結させた。
そして、大きな爆発音が響いてあたり一面が黒煙で覆われ何も見えなくなる。
今の大爆発は直撃はしていないものの、近くにいた亜蓮などは軽い火傷程度は負っている可能性が高いな。
「っ!」
黒煙の中から降って来た弓矢をステップを踏んで回避した直後ワイトキングには及ばないものの鋭い剣先が俺の目の前を薙ぐ。
スケルトンの見た目をしているが、鎧は紋様の入った金属鎧を着ており、スケルトンウォーリアなどとはまた雰囲気が違う。
スケルトンロード……!
スケルトンロードはスケルトンの指揮官で、スケルトンの中でも卓越した剣技を持ち、スケルトン達を指揮する事が可能だ。
スケルトンロードがいると言う事はつまり、混戦を意味する。
「気爆破」
「ッ?」
だが、スケルトンロードは自身が砕かれた事に気が付かずに辺りのスケルトンと共に吹き飛ばされる。
添島!?何故お前ここに?
「何故散開しろと言われたのに合流したのか?みたいな顔をしているな?当然だ。助けに来た。あの高みの見物をしているワイトキングを地面に叩き落とす方法を考えた」
添島は黒煙で何も見えない上空を眺めてニッと好戦的な笑みを浮かべ、左から飛んで来た小さな火球を大剣の柄で殴り飛ばした。




