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27.反撃

 しかしアメリアの<未来視>で未来が見えたとはいえ、荒野ってなんだ?

 どうして俺たちはそんなところにいるんだろうか。


「それは、ここが燃やし尽くされて荒れ果てたってことじゃなくてか?」


「いいえ、そういう感じではありませんでした。鮮明に見えたわけではありませんでしたが、見渡す限り一面が、枯れてひび割れた大地のようになっていましたので」


 確かにここは枯れたっていう感じじゃないな。

 ドロドロに燃えさかっている地獄だ。


「オレも世界中を回ったが、一面の枯れた荒野っていえば、思い当たるのは二カ所だけだな」


 ダインが口を開く。

 そういや世界中の竜を刈るために、あちこち旅をしてるって設定だったな。



「ひとつはシェーラが吹っ飛ばした山の跡。もうひとつが、ここと魔界とを隔てる『境界線』だ」


「境界線」とは、今ダインがいったように人間界と魔界が接している部分である。

 その二つの世界のあいだには「大結界」と呼ばれる強力な結界が張られ、行き来できないようになっている。


「そうですね。わたくしも一度だけ『境界線』に行ったことがありますが、あのときの雰囲気に近かったように思います」


 アメリアもそういうなら、きっとそうなんだろう。

 しかし、なんで俺たちはそんなところにいたんだろうか。

「境界線」に用があるとは思えない。「大結界」に遮られているため、そこから魔界に向かうこともできないからな。


「……いや、待てよ。ひょっとしたら、そういうことなのか……?」


「なにかわかったのですか?」


「わかった、というか……」


 あらゆる攻撃が効かない影狼族だが、たったひとつだけ、倒せるかもしれない手がある。

 そのためには「境界線」に行く必要があった。


 でも確証がない。

 向こうに行ってしまえば、おそらくルビーの結界は消えるだろう。

 その状態で攻撃を受ければ今度こそ全滅だ。


 もしかしたら、という程度の考えで冒せるリスクではない。


 そのとき、急に空が強い輝きに包まれた。

 見上げると、信じられないほどに巨大なゲートが開き、真っ赤な世界をのぞかせている。

 吹き荒れる太陽風が、俺たちを中心とした辺り一面を、見渡す限りの溶岩の海に変えてしまった。


「くそっ、どうあっても逃がさないつもりか」


 いざとなれば俺の「ディケイドロアー」で大地を吹き飛ばしてもいいが、ここまで広範囲を攻撃されるといずれは追いつめられるだろう。

 結界のおかげでしばらくは大丈夫だろうが……。

 俺がそう思ったとき、か細い声がすぐそばから聞こえてきた。


「ゆ、ユーマ、くん……」


 アヤメが苦しそうにあえぎはじめる。

 顔は真っ青になっていた。

 どうしたと思うまもなく、ガクリとダインがひざを突いた。


「ちっ、オレとしたことが、この程度で……」


 ダインがひざを突いただと?

 俺は驚愕する。

 アンデッドドラゴンの一撃を受けても微動だにしなかったあのダインが?


 見ればシェーラやレインフォール隊長もうずくまっていた。

 やがて俺も息苦しくなり、全身に力が入らなくなる。

 結界の外では今も太陽風が燃え上がり、真空の渦が荒れ狂っていた。


 そうか、ヤシャドラの狙いは、これだったのか……。

 巨大なゲートは逃げ場をなくす為じゃない。

 辺り一帯の空気を吸い出して、俺たちから酸素を奪うためだったんだ。


「ユーマ様、なにか思いついたんですよね……?」


 アメリアが弱々しく俺の手を取る。

 じんわりと温かな光が俺の手を包む。

 つながれた手を通じて俺の中に力が流れ込んでくるのがわかった。


「アメリア、これは……」


 魔力譲渡。

 いつだったかシェーラが俺にやったのと同じ、自分の魔力を他人に渡す技だ。

 おかげで俺はどうにか立ち上がるだけの力を取り戻したが、かわりにアメリアはぐったりと地面に倒れ伏した。


 王女様と目が合うと、気丈にほほえんだ。


「お願いします。わたくしたちの未来を、あなたに託します……」


 そこまでいわれて諦めたら男が廃るってもんだ。

 それにもう、他に手はない。

 だったら一か八かやるしかないだろう!


 かすかに戻った力で立ち上がり、仲間たちを見回した。


「悪いがみんな、俺に命を預けてくれないか」


 俺がやろうとしているのは、確証のないギャンブルだ。

 ヤシャドラを倒せる可能性はあるが、失敗したら全滅する。

 さすがにそんなことを俺一人の一存で行うわけにはいかない。


 だというのに、シェーラも、アヤメも、他のみんなも、誰一人反対はしなかった。


「いまさらなにいってるのよ。ユーマのやることに反対なんかしないわよ」


「このまま死ぬよりは何倍もマシだろ。好きにやれ」


「私、何度もユーマ君に助けてもらったから、今度も助けてくれるって信じてるよ」


 三人だけでなく、レインフォール隊長とアメリアも同じだった。


「ユーマ殿は皆から信頼されているのですな。ならこの私も、皆の信頼に賭けましょう」


「お願いしますユーマ様……」


「みんな……」


 思わず感動してしまう。

 だからこそ、失敗はできない。


「いくぞ! スキル発動『ゲート』!」


 足下に巨大なゲートを開く。

 真っ逆様に落ちた俺たちは、一面の荒野へと転がり落ちた。

切りのいいとこで区切ったら短くなってしまったので、続きは明日更新します。

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新シリーズはじめました。
優しさしか取り柄がない僕だけど、幻の超レアモンスターを助けたら懐かれちゃったみたい
助けた美少女モンスターとのまったり日常二人旅(の予定)。こちらもよろしくお願いします。
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