表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/120

28.夢

 闇に満たされた世界に俺は浮いていた。

 暗くて遠い、閉じた世界だ。


 わかっている。

 ここは女神の世界。

 かつては神が住み、今はもういない世界だ。


 世界の中心には女の子がいた。

 膝を抱え、自分の殻に閉じこもるようにして泣いている。


 慰めようとしたが、この世界では近づけないし、離れることもできない。

 声を出しても届かない。

 それでも俺は言ってあげた。


 大丈夫だ。安心しろ。世界は俺が守る。


 女の子が顔を上げた。

 涙に濡れた瞳がまっすぐに俺をみる。

 その表情からは、なにを考えているかわからない。


 わからないが、それでもきっと、俺が進もうとしている道と遠くないところにいるはずだ。

 俺は力強くうなずいた。


 世界を平和にしたその先にこの子の笑顔があるのなら、それはきっとこの子を救うことになる。

 ちがったら、まあそのときはそのときだな。

 世界を平和にした後でゆっくり考えればいいさ。


 女の子はぼうっと俺を見ている。

 前の時のようになにかを叫ぶことはなかった。

 かたくなに自分の体を抱きしめていた腕から力がほどけた。


 膝と体のあいだにはさまれていたものが見える。

 それは一冊の本だった。


 女の子は本を広げると、なにかを朗読しはじめた。

 さすがに今度は唇の動きだけでは、内容はわからない。


 長々となにかを読み上げ続ける。

 声は響かない。

 だけどなにかが満たされていくのを感じた。


 同時に世界を光が包む。

 白く、白く、世界が光に満たされていく。


 どこかでなにかの音が聞こえた。

 歯車のかみ合う音。

 あるいは回り出すような音だ。


 女の子の目が再び俺をみた。

 もう涙は浮かんでいなかった。

 口元をゆるめ、ほんのわずかにほほえんで見せた──


二回にわけました。次は13時に更新します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新シリーズはじめました。
優しさしか取り柄がない僕だけど、幻の超レアモンスターを助けたら懐かれちゃったみたい
助けた美少女モンスターとのまったり日常二人旅(の予定)。こちらもよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ