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地蔵村の赤のやまい  作者: いわせみつか
2/2

後編 変わらない思い

(作者の不手際のせいでご迷惑を続けています。もうしわけありません)

 ぎりぎりでがんばっております。

 佐川が竹塀まで行くと、侍や雇い人たちが集まっていて何やら騒がしい。

 どうしたと、佐川が聞くと、あの五人の百姓たちが向こうの納屋に入ったきりずっと出てこない、気になって堪らないと言う。

 彼らも、侍の直感が働いているようだ。

 「ならば、行ってみよう」

 佐川はそう言って太刀を抜いた。えい、と言って竹塀を切った。

 「貴様らも切れ」

 部下の侍たちも太刀を抜き何も言わず竹を切り続けた。

 塀に大きな穴ができた。

 佐川を先頭にして侍と雇い人たちは穴をくぐって村の中に入った。

 皆で納屋の前に立った。佐川は太刀を鞘に収めた。部下たちもそれにならった。

 「どうした。何をしているのか。答えよ」と、佐川は納屋のなかに居るものに呼びかけた。

 答えるものはいなかった。

 佐川は無言で納屋の戸を開けた。

 納屋のなかを見て、佐川は、

 「ああ。あああああああ」と叫んだ。

 五人の百姓は、納屋のなかの梁にわら縄をくくりつけ自分たちはその縄で首を吊っていた。

 佐川は納屋の土間に膝をついた。

 佐川のなかで何かが終った。

 佐川はずっと心の奥底で百姓たちを助けたいと思っていた。

 その思いが佐川の理性を支えていた。

 だがみんな死んでしまった。

 佐川はあらためて正座した。ぶら下がっている百姓五人にむかい深々と頭を下げた。

 佐川は皆に言った。

 「私は死ぬ。死して百姓たちに謝する。どうかこのあらましをお上に報告してくれ。尾呂軍平の悪行を世間に知らせてくれ。そういえば朝からなにも食べてないや。ああおなかがすいたなあ」

 佐川は太刀を抜き、それでみずからの腹を突きそして太刀を引き抜きそれでみずからの右首を切り、血まみれになって死んだ。

 佐川東。享年三十四歳。

 嘉永六年(1853年)七月八日午前中のことだった。


 その日の午後、浦賀に黒船来航。

 日本の歴史始まって以来の大騒ぎで、誰も一地方の人事など関心を持たなかった。

 みんな忘れた。

 

 「これが地蔵村の六地蔵の由来でございます。戦後になって地蔵村の悲劇を書き記した書物が地元の郷土史家によって発見されたのです。当時の雇い人たちがまとめた物と思われます。せめてもの供養にと、平成になってから一体づづ造られました。資金難で・・・これが精いっぱいです」

 「いやいやこれでよいでしょう。佐川東の人生は成功しましたね。何かを残したのですから」



 なんだか学生時代の夏休みの宿題気分です。

 不出来の責任はすべて私にあります。

 お付き合いくださってありがとうございました。


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