5 本格始動……かもしれない
青年はドアベルをカンカンと鳴らすが、なかなか中の人は出てこない。
「すいませーん、露月佑仁ですけどー」
次の瞬間、
「はいはーい!すぐ行きますっ!」
という一言と共に、1人の少女が現れた。
「いらっしゃい、ゆーじん君!ってんん?」
扉を開けた瞬間、少女は固まった。
更紗たちも固まった。
少女は足元に届くほどの黒いローブを被っていて、それは少女の目元までをしっかりと隠していたこともあり怪しさ満点だった。
「あれ?玻璃と瑠璃?わあ、大きくなったねぇ。で、もう1人は…?」
と、少女は高くはない声で言った。
名前や顔、背丈も似ているし、ひょっとしたら先程の少女ーー玻璃と瑠璃は双子なのかもしれない。
「あぁ、その人は俺が連れてきた。なんか、朝顔の宮がどこにあるのかわからないみたいだったから」
ゆーじんくんと呼ばれていた青年が言う。
更紗はばれたてたか、と少し恥ずかしくなった。視線が痛い。
「その子は私が呼んだんだよ。初めまして、赤間更紗さん。ようこそ朝顔の宮へ。勿論佑仁君、玻璃ちゃん、瑠璃ちゃんも。ここで立ち話もなんだから中に入って」
奥から誰かが出てきた。腰まである長い黒髪と赤みがかった黒い瞳が印象的な女性だ。初対面のはずだが、更紗は顔を見たとたん、はっと硬直してしまった。
彼女は間違いなくあのとき場所だけ伝えて更紗を置いていった憎っくき?ひとではないか!瞳は赤くないが、他はほぼ同じである。見間違えるはずもない。
更紗は彼女に声をかけようとしたが、さっさと奥に引っ込んでしまった。
「みなさーん、まずは応接間にいきますよー」
と、黒ローブの少女は歩きだした。
応接間は、細かい装飾の施された大きな飴色のテーブルと革張りのソファーを中心に、暖炉や、本棚がある。
みんな緊張しているのだろうか、無言だ。
「じゃあ、各自自己紹介して~。始めは朔莎から」
と、黒髪の女性が言うと、黒ローブの少女が立ち上がった。
「えっと、初めまして、そしてお久しぶりです、月華朔莎です。翠高1年です。……えっと、趣味は、読書と弓道と、あとはチェンバロかな?中1の頃からここに下宿してるんで、何かあったら言ってね」
ほら次、と朔莎は隣の少女をつついた。しかし少女は嫌がっている。そこを朔莎は強引に立たせた。
「……月華玻璃です。瑠璃の双子の妹です。趣味は、読書?かな?よろしくお願いします」
はよいけ、とばかりに玻璃が隣の少女の肩を叩いた。
「えーと、月華瑠璃です。さっき玻璃が言ったとおり、玻璃の双子の姉です。あっ、翠中1年になります。趣味は、アニメと、絵を描くこと、かな?」
続いて、ゆーじんくんと呼ばれていた青年が自主的に立ち上がった。
「どうも、露月佑仁です翠都高1年になります。出身は朝香中、趣味は……一番はやっぱアニメだな」
次は更紗の番だ。
「あ、赤間更紗です。異世界から留学しに来ました。趣味は、読書と、やっぱりピアノと、寝ること……?えっと、よろしくお願いします」
更紗はちらりとまわりをみた。意外と皆平然としている。まあ、異世界とはそんなものなのだろう。納得はなんとなく出来ないが。
次に黒髪の女性が口を開いた。
「スレアス・リ・モートンです。いろいろあってこの名前になりました。どうぞスレアスと呼んでね。一応発明家で研究者。ここの下宿代は月1000円だから、忘れないように」
更紗は下宿代の安さに目を見開いた。なるほど、道理で親が入学させたがるわけだ。
「さあ、朔莎。何かやらなきゃいけないことがあったんでしょ?早く取って来なさい」
そう続けたスレアスに朔莎は溜息をついて応接間を出ていった。